愛チャンピオンも審議に

セントレジャーが行われた土曜日、アイルランドのレパーズタウン競馬場でもG戦が5鞍行われ、中でもアイリッシュ・チャンピオン・ステークス Irish Champion S (GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン)はセントレジャーを上回る豪華メンバーが揃いましたので、こちらもこのレースからレポートを始めましょう。
G戦としては三つ目に行われましたが、前夜と当日の昼にも雨が降り、馬場は yielding 、所により good to soft とドンカスター以上に重い状態になってしまいます。チャンピオンは当初8頭が登録していましたが、午後一番でエイダン・オブライエン師がグレンイーグルス Gleneagles を取り消し、ヨークに続いてまたもやギニー/ダービー馬の対決は流れてしまいました。

レース前はグレンイーグルスを含めて8頭全てがGⅠ馬という正に世紀の名勝負が期待されましたが、これでやや水を差された印象。それでも決して重馬場は得意ではないダービー馬ゴールデン・ホーン Golden Horn が5対4の1番人気に支持され、プリンス・オブ・ウェールズ・ステークスの覇者フリー・イーグル Free Eagle が2番人気(10対3)で続きます。
前走ヨークのインターナショナルでは先行するアラビアン・クィーン Arabian Queen を軽視して捉え切れなかったこともあり、フランキー・デットーリは思い切っての逃げ作戦。そのまま先頭でゴールを目指しましたが、ゴール手前150メートルで長く伸びたスタンドの影に驚いたゴールデン・ホーン、突然大きく進路を右に変えます。3番手からこの直後で本命馬を追走していたフリー・イーグルがその煽りを真面に受け、スマーレン騎手は立て直す余裕のないままゴール。ゴールデン・ホーンは先頭でゴールインし、1馬身差で内から3番人気(6対1)のファウンド Found が2着で入線。フリー・イーグルは半馬身差で3番手の入線でした。
勝ったと信じたゴールデン・ホーンのデットーリ騎手は例によってフライング・ディスマウントで悦びを表現しましたが、直ぐに呼ばれて裁決室へ。結局このアクシデントは不可抗力と判断され、入線通りで確定しました。しかし仮にフリー・イーグルが2番手でゴールインしていれば話は別で、1・2着入れ替わりがあったかもしれません。ジョン・ゴスデン師は、審議の対象馬が3着だったので救われたと、正直にコメントしています。以下、プレイコック Pleascach が4着、渡米してセクレタリアート・ステークスに勝ったハイランド・リール Highland Reel 5着。去年の勝馬ザ・グレイ・ギャッツビー The Grey Gatsby は4着、9歳の古豪シリュス・デ・ゼーグル Cirrus Des Aigles が最下位7着と言う結果でした。

前走の黒星から再びGⅠ勝利を獲得したゴールデン・ホーン、次は凱旋門賞かチャンピオン・ステークスということになるでしょう。両方走る可能性もあります。凱旋門賞のオッズは10対から再び5対1に上がり、チャンピオンのオッズは3対1に。
日曜日にはロンシャンで3つの重要な凱旋門賞トライアルが行われますが、その結果が出れば状況は更にハッキリしてくるでしょう。

一方取り消したグレンイーグルスは、これでサセックス、ヨーク・インターナショナルと3戦続けて馬場を理由に回避。オブライエン師はファンに申し訳ないとしながらも、あくまでも馬を考えての判断とコメント。今回も調教は万全だっただけに、馬は走らなければフラストレーションが溜まります。この日の全レースが終了した後、グレンイーグルスは競馬場で7ハロンを全力疾走し、師の言を裏付けていました。

以上で大一番を終え、残る4レースをレース順に。
ジュヴェナイル・ステークス Juvenile S (GⅢ、2歳、1マイル)は、去年はジュヴェナイル・ターフ・ステークスというレース名でしたが、今年は4頭が取り消しての9頭立て。前走タイロス・ステークス(GⅢ)2着でボルジャー厩舎のサヌス・ペル・アクアム Sanus Per Aquam が5対4の1番人気。
最低人気(66対1)のエスコンディーダ Escondida が逃げましたが、3番手を進んだ3番人気(5対1)のヨハンネス・フェルメール Johannes Vermmer が抜けて大きく後続を離すと、最後はペースを緩めたため1馬身半差で2番人気(7対2)のトゥルー・ソリテール True Solitaire に1馬身半差でした。6番手を進んだサヌス・ペル・アクアムは半馬身差で3着。

ヨハンネス・フェルメールはエイダン・オブライエン厩舎で、取り消した同厩のショーグン Shogun に騎乗予定だったジョセフ・オブライエンが急遽乗り替わっての騎乗。ティッペラリーのデビュー戦は3着でしたが、続く前走キラーネー競馬場で未勝利を脱出、ステップ・アップしたG戦で成長力を証明しました。

次は、愛チャンピオンの一つ前に行われたエンタープライズ・ステークス Enterprise S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)。去年までは1マイル2ハロンでしたが、今年は更に2ハロン延長しての施行。1頭が取り消して5頭立て、ここ2戦のGⅢ戦で何れも2着しているアンサード Answered が15対8の1番人気。
去年ジュヴェナイル・ステークスに勝った3番人気(9対2)でチーム・オブライエンのジョン・エフ・ケネディー John F Kennedy が逃げましたが、3番手を進んだ2番人気(2対1)のファシネイティング・ロック Fascinating Rock が直線で抜け、後方から追い上げる4番人気(5対1)のパナマ・ハット Panama Hat に6馬身差を付ける圧勝。4馬身4分の3差でジョン・エフ・ケネディーが3着に粘り、アンサードは5着最下位敗退に終わりました。

デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗のファシネイティング・ロックは、2走前にトトソルズ・ゴールド・カップ(GⅠ)でアル・カジーム Al Kazeem の2着していた4歳馬。来年もトトソルズ・ゴールド・カップを目指すことになるでしょう。ウェルド/スマーレンのコンビは、去年のフリー・イーグル(次の愛チャンピオンで3着)に続きこのレース2連覇達成。

そして愛チャンピオンの次に行われたのも、GⅠ戦のマトロン・ステークス Matron S (GⅠ、3歳上牝、1マイル)。ここも1頭が取り消して9頭立てとなり、やはり重馬場を苦にする1000ギニー馬のレガティッシモ Legatissimo が7対4の1番人気。
4番人気(10対1)ユーロ・チャーリン Euro Charline の逃げを5番手で待機したレガティッシモ、ここではやはり格が違い、一気に前を捉えると、やはり後方から追い込むフランス馬クラドセラ Cladocera に2馬身4分の1差を付けて貫録を示しました。更に2馬身4分の1差で6番人気(16対1)のアイニッペ Ainippe が3着に入り、前走重馬場のドーヴィルでロッシルド賞(GⅠ)を制した2番人気(2対1)のアメージング・マリア Amazing maria は歴戦の疲れが出たか、7着敗退でした。

これが前走ナッソー・ステークスに続き三つ目のGⅠ勝ちとなるレガティッシモ、もちろんクールモアの所有馬で、デヴィッド・ウォッチマン厩舎、今回はウェイン・ローダン騎乗。6週間間隔で使うのが理想的なタイプで、次はBCに遠征してフィリー・アンド・メア・ターフということになりそうです。

最後はブーメラン・ステークス Boomerang S (GⅡ、3歳上、1マイル)。以前はソロナウェイ・ステークスとして知られていたレースで、今年は3頭が取り消して5頭立て。前走ジャック・ル・マロワに遠征して4着だったライトニング・スピアー Lightning Spear が7対4の1番人気。
スタートは一番ながら1ハロン地点で2番手に控えた2番人気(11対4)のカスタム・カット Custom Cut が前を捉え、後方から追い込む4番人気(4対1)で英国からの遠征馬トップ・ノッチ・トント Top Notch Tonto に1馬身4分の3差で優勝。更に1馬身半差で4番手を進んだ人気のライトニング・スピアーが3着でした。

デヴィッド・オメーラ厩舎、ダニー・タドホープ騎乗のカスタム・カットは、前走ソヴリン・ステークス(GⅢ)で3着していた6歳馬。今期初戦のサンダウンではサンダウン・マイル(GⅡ)を制しており、今期二つ目のG戦勝ちとなります。

 

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