2015クラシック馬のプロフィール(補遺)
今回は急遽セントレジャーの勝利が決まったシンプル・ヴァーズ Simple Verse の血統を紹介しましょう。今年13頭目のクラシック馬で、このコーナーを始めてから今年は最も多くの馬を取り上げることになりました。
シンプル・ヴァーズは父デューク・オブ・マーマレード Duke of Marmalade 、母グァンタナマラ Guantanamara 、母の父サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells という血統。
父はキングジョージやヨークのインターナショナルを制し、ダンジグ Danzig から適応距離を伸ばしつつある父系で、これまでドイツのダービー馬やオークス馬を出していますが、英国のクラシックを制したのはシンプル・ヴァーズが初めてです。
母グァンタナマラ(2004年、鹿毛)は未出走馬で、例によってその産駒を一覧表にまとめると、
2008年 マルク・ド・サヴォア Marc de Savoie 芦毛 牡 父オッシ―・ルールズ Aussie Rules ケヴィン・ライアン厩舎で2歳時のみ7ハロンから10ハロンまでに6戦して未勝利。スウェーデンに輸出
2009年 ロード・ジム Lord Jim 鹿毛 牡 父ホーリー・ロマン・エンペラー Holy Roman Emperor プレンダーガスト厩舎で3歳から6歳まで、7ハロンから10ハロンまでに21戦1勝。勝鞍はペルスタウン競馬場の1マイル戦で、障害競走にも1戦
2010年 マクセンティウス Maxentius 鹿毛 せん 父ホーリー・ロマン・エンペラー ピーター・チャップル=ハイアム厩舎で2歳から4歳まで、6ハロンから10ハロンまでに12戦2勝。2歳時フォークストンで6ハロンのデビュー戦とドンカスターの7ハロン戦に2連勝し、ニューマーケットのサパラティヴ・ステークス(GⅡ)に挑戦して2着。その後もフランスのジャン=リュック・ラガルデール賞などG戦に4回続けて出走も勝てず。最後はドーハのハンデ戦で3着
2012年 シンプリー・ヴァーズ
2013年 イーヴン・ソング 牝 父マスタークラフツマン Mastercraftsman 現時点で未出走
以上が兄弟姉妹たちのリストで、シンプル・ヴァーズは母の最初の娘で、長距離戦を走ったのは唯一の馬と言うことになります。
2代母はブラッフィング Bluffing (1992年 鹿毛 父ダルシャーン Darshaan)。ダルシャーン牝馬にサドラーズ・ウェルズという配合を持つグァンタナマラは、ヨーロッパでは最も活躍している組み合わせですね。
そのブラッフィングはジム・ボルジャー師が管理した馬で、18戦1勝。勝鞍はカラーの1マイル戦で、愛オークス7着という成績もあります。ボルジャー師はブラッフィングを長距離向きと判断していたのでしょう。
現在のところ彼女からは特に目立った活躍馬は無く、3代母ディスティンクティヴ・ムーヴ Distinctive Move (1981年 鹿毛 父ニジンスキー Nijinsky)に飛びます。この馬はアメリカで13戦1勝という記録がありますが、詳細は不明。もちろん父ニジンスキーはセントレジャーに勝った三冠馬です。
ここは急いで4代母ボールド・ビキニ Bold Bikini (1969年 鹿毛 父ボールドネシアン Boldnesian)を紹介しましょう。彼女は6勝もした馬ですが、ステークスの勝鞍は3歳時のジャージー・ベル・ハンデのみ。アメリカにグレード制が導入される前のことで、このレースはその後もG戦には格付けされていないと思います。
しかしボールド・ビキニが今日でも名前が残っているのは、その仔や兄弟の活躍によってであります。
先ずその牡駒ストライク・ユア・カラーズ Strike Your Colors (1976年)はブリーダーズ・フューチュリティー(GⅠ)の勝馬で、更にディスティンクティヴ・ムーヴの一つ下の半弟ロウ・ソサエティー Law Society (父はアレッジド Alleged)が85年の愛ダービーを制してクラシック馬となります。
またボールド・ビキニの半兄トップ・ナイト Top Knight (父はヴェルテックス Vertex)は2歳時にシャンペン・ステークス、ホープフル・ステークス、フューチュリティー・ステークスと今日のGⅠ戦に3勝したほか、3歳時にもフラミンゴ・ステークス、フロリダ・ダービーを制してクラシック路線をにぎわした存在。
更に付け加えると、ボールド・ビキニの一つ上の牝馬マドモワゼル・ダブリュ Mademoiselle W. からは2代後にアラバマ・ステークス(GⅠ)とデル・マー・オークス(GⅡ)に勝ったプリズマティカル Prismatical も出ました。
トップ・ナイトとボールド・ビキニの母で、シンプル・ヴァーズの5代母であるラン=タン Ran-Tan (1960年 鹿毛 父サマー・タン Summert Tan)は、7戦2勝。
この馬を更に2代遡ると、愛1000ギニーと愛オークスの二冠を制したマジデー Majideh に行き当たります。マジデーは自身がクラシック馬だっただけに留まらず、4頭の優れた繁殖牝馬と、ベルモント・ステークスなどアメリカの競馬史を彩る名馬ギャラント・マン Gallant Man を出したことで知られています。
マジデーの娘4頭を年代順にザッと紹介すると、
①1945年生まれのマサカ Masaka はオークスと愛オークスを制した女傑で、その子孫からは1984年のダービー、愛ダービー馬のカヤージ Kahyasi 、2006年の愛セントレジャー馬カストニア Kastonia 、ヨークシャー・オークスのキー・チェンジ Kay Change 、2001年のセントレジャー馬ミラン Milan 、BCターフのラシュカリ Lashkari 、スプリンター/マイラーの名馬シルヴァー・シャーク Silver Shark などGⅠ級がズラリと輩出。
②1946年生まれのマレケー Malekeh の牝系からは1979年のセントレジャー馬サン・オブ・ラヴ Son of Love が、
③1950年生まれのマハラット Mahallat からは愛チャンピオン・ステークスのノース・ストーク North Stoke が出るという具合で、
④1951年生まれのメハビ Mehabi がラン=タンの母となって、マジデーから枝葉を広げたファミリーでは3頭目のセントレジャー馬シンプル・ヴァーズにまで繋がることになります。
ファミリー・ナンバーは5-e。1813年生まれのベルヴォアリーナ Belvoirina を基礎とする牝系です。
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