9月26日のアメリカ競馬(3)カリフォルニア編
土曜日のアメリカ競馬、漸く最後の舞台であるカリフォルニア州のサンタ・アニタ競馬場に辿り着きました。サンタ・アニタは秋開催の初日ですが、今年のBCの舞台はケンタッキー州のキーンランド競馬場で、ここ数年とは異なりサンタ・アニタからは遠征してBCに向かうことになります。
この日のG戦は5鞍ですが、全てGⅠ戦、全てが勝馬にBCへの優先出走権が与えられるとあって、文字通りのトライアル・デイ。レース順に見ていきましょう。
最初は第5レースの フロントランナー・ステークス FrontRunner S (GⅠ、2歳、8.5ハロン)。去年はあのアメリカン・フェイロー American Pharoah が制したレースと言えば、その重要度が判るでしょう。今年は fast の馬場に8頭が出走し、前走デル・マー・フューチュリティー(GⅠ)を制した無敗のナイクィスト Nyquist が1対2の圧倒的1番人気。
最低人気(75対1)ゴー・ロング Go Long の逃げを2番手で追走したナイクィスト、第4コーナー手前で早くも先頭に立つと、直線では5番手追走から内を衝いて忍び寄る4番人気(8対1)スワイプ Swipe を4分の3馬身抜かせず人気に応えました。5馬身4分の3差が開いて後方3番手から伸びた3番人気(7対1)のハリウッド・ドン Hollywood Don が3着。最後の直線でスワイプの進路が狭くなったことに付いての審議となりましたが、入線通りで確定しています。
ダグ・オネイル厩舎、マリオ・グティエレス騎乗のナイクィストは、これで無傷の4連勝。G戦もベスト・パル・ステークス(GⅡ)、フューチュリティーと3連勝で、GⅠは2連勝。アメリカン・フェイローがデビュー戦で負けたのに対し、こちらは無敗のままBCジュヴェナイルの本命に支持されるでしょう。2年連続のチャンピオン誕生となるか・・・。
続いて第7レースはゼニヤッタ・ステークス Zenyatta S (GⅠ、3歳上牝、8.5ハロン)。1頭が取り消して8頭立て。ここは最強牝馬ビホールダー Beholder が断然の人気で、1対9という信じ難いオッズ。単勝一桁は彼女1頭で、2番人気は11対1と言う珍しい馬券になりました。
大外9番枠スタートも何のその、最初は逃げる3番人気(20対1!)のマイ・スイート・アディクション My Sweet Addiction の5番手で向正面に入りましたが、スピードが桁違い、鞍上は馬なりのまま第3コーナーでは先頭に立つと、直線もキャンターのままマイ・スイート・アディクションに3馬身4分の1差を付ける圧勝でした。更に5馬身半差で7番人気(35対1)のセイヴィングズ・アカウント Savings Account が3着。
リチャード・マンデラ厩舎、ゲーリー・スティーヴンス騎乗のビホールダーについては付け加えることも無いでしょう。6連勝でGⅠは9勝目。このレースは3連覇で、レースの名前にもなっているゼニヤッタ自身と並ぶ記録です。もちろんゼニヤッタが走っていた当時はレディー・シークレット・ステークスと呼ばれていたレースで、何れビホールダー・ステークスが産まれるのは間違いないでしょう。BCに関しては牡馬を相手にクラシックに出走する噂が飛び交っていますが、最終的にどのレースになるかは最後まで判りません。クラシックでアメリカン・フェイローとの対決となれば、正に夢のレースになるでしょう。
三つ目は第8レースの シャンデリア・ステークス Chandelier S (GⅠ、2歳牝、8.5ハロン)。こちらは1頭が取り消して8頭立てとなりましたが、断然の本命馬がいるのは前の2レースと同じ。前走デル・マー・デビュタント(GⅠ)を5馬身4分の1差で圧勝しているソングバード Songbird が1対5の1本被りの本命です。
やはりモノが違うソングバード、好スタートから先頭に立つと、向正面では後続に4馬身のリードを付け、直線も楽に飛ばして4番手から進出した3番人気(9対1)のランド・オーヴァー・シー Land Over Sea に4馬身半差を付ける圧巻の逃げ切り勝ちでした。9馬身4分の3もの大差が付いた3着は、最後方から伸びた4番人気(24対1)のライト・ゼア Right There 。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のソングバードは、これでデビューから無傷の3戦3勝。GⅠ戦に2連勝で、BCジュヴェナイル・フィリーズ優勝はほぼ間違いないほど。スミス騎手は馬が途中で寝てしまわないように時折気合を入れた、と冗談を飛ばすほど。この日3頭目のチャンピオン・ホース出現です。
と、ここまでは順調に推移したGⅠシリーズでしたが、第9レースのロデオ・ドライヴ・ステークス Rodeo Drive S (芝GⅠ、3歳上牝、10ハロン)で荒れます。firm の馬場に1頭が取り消して10頭立て。1マイル4分の1の距離は初体験ながら、GⅠ戦に2連勝中のハード・ノット・トゥー・ライク Hard Not to Like が8対5の1番人気。
レースは3番人気(5対1)のファンティコラ Fanticola が逃げて直線。前半4番手を進んだ5番人気(8対1)のフォト・コール Photo Call が内を衝くも前が開かず、2番手を進んだ8番人気(24対1)のストーミー・ルーシー Stormy Lucy と逃げたファンティコラの間を割って瞬発力を爆発させると、後方2番手から追い込む4番人気(7対1)のエレクトラム Electrum に2馬身4分の1差を付ける逆転劇です。頭差でストーミー・レーシーが3着、逃げたファンティコラ4着。人気のハード・ノット・トゥ・ライクは、最初の直線に入る際にダートコースを過ることに戸惑ったのと、やはり距離が長いことが堪えたか5番手を進むも8着と敗れています。
グレアム・モーション厩舎、ドライデン・ヴァン・ダイク騎乗のフォト・コールは、前走ヴァイオレット・ステークス(芝GⅢ)がステークス初挑戦でのG戦初勝利。もちろんGⅠ勝ちは初ですが、父ガリレオ galileo 譲りの瞬発力はアメリカでは珍しいほど。出走権を得たBCフィリー・アンド・メア・ターフでも瞬発力を活かせば勝機が見えて来るかも。
愈々最後は第10レースのオウサム・アゲン・ステークス Awesome Again S (GⅠ、3歳上、9ハロン)。もちろんBCクラシックの対象レースで、8頭が出走し、去年のBCクラシックを制したバイエルン Bayern が6対5の1番人気。前走パシフィック・クラシック(GⅠ)9着が気になります。
そのバイエルンが何時ものように逃げ作戦。順調に流れているように見えましたが、これを2番手で追走していた3番人気(5対1)のスムース・ローラー Smooth Roller が第4コーナーで競り掛けると、意外にもバイエルンは闘争心を欠き、5番手から追い込む2番人気(5対2)のホッパチュニティー Hoppertunity にも交わされて3着に敗退してしまいます。勝ったスムース・ローラーと2着ホッパチュニティーの差は5馬身4分の1と決定的で、2着とバイエルンも1馬身半差がありました。
勝ったスムース・ローラーは、これが未だ4戦目と言う4歳せん馬。今年の6月にデビュー戦に勝ち、続く8月1日のアローワンス戦も連勝。8月26日にデル・マーの一般ステークスで4着だったのが前走のステークス・デビューで、ここで去年のチャンピオンを破ったのは急成長かフロックか。管理するヴィクター・ガルシア師は1985年に開業した調教師で、GⅠ戦は初勝利。G戦も1989年以来と言うからサプライズです。騎乗したのはタイラー・ベイズ騎手。バイエルンのマーチン・ガルシアは記者団に、バイエルンは去年と同じ状態かと質問されると、同じだったら楽勝しているはずだ、と言葉少なでした。
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