サルビアホール 第51回クァルテット・シリーズ
サルビアのクァルテット・シリーズは昨日から第16シーズンが始まりました。このシーズンは年内の3回で終了する予定。そのトップバッターは、今回が2度目となる澤クァルテット。前回は2012年の1月でしたから、3年10か月振りの再登場となります。
拙ブログの前回を読み返してみると、その時の帰りは雨が雪に変わる厳しい寒さでした。しかし今回は小春日和というか、朝晩はそれなりに冷えるものの、日中は上着要らずの暖かさでしたね。
今年で結成25年となる澤クァルテット、前回はモーツァルト→シューベルト→ベートーヴェンという王道プログラムでしたが、今回はメインにドビュッシーを持ってきたところが聴き所でしょうか。
モーツァルト/弦楽四重奏曲第14番ト長調K387
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第11番へ短調 作品95「セリオーソ」
~休憩~
ドビュッシー/弦楽四重奏曲ト短調作品10
澤クァルテット、結成から現在までメンバーは不動、ファースト澤、セカンド大関、ヴィオラ市坪、チェロ林が前回と同じように、チェロがやや開き気味に座ります。
昨夜気が付いたのは、客席にはどうやらメンバーのお弟子さんたちと思しき若い人たちが多かったこと。いつもの回より入りも良かったようでした。
実際に最前列の中央に席を取った二人はいつもの常連さんではなく、“一番前の席では先生と目が合ってしまって具合が悪いので、宜しければ席を替っていただけませんか?”と乞われたほど。快く承諾し、ホールがオープンして以来初めて最前列中央で四重奏を楽しみました。
前半のウィーン古典派はもちろん、後半のドビュッシーでも実に安定したアンサンブルを披露してくれた「澤カル」、流石の実力です。生徒たちを前にして、ということではないでしょうが、良い意味で教科書的な模範演奏と言うべきか。
モーツァルトは繰り返しを省略し、中庸なテンポを守って典雅に・・・。ベートーヴェンは、これぞベートーヴェンという迫力ある表現で・・・。そしてドビュッシーも、彼らがCDに録音しているように自家薬篭中の作品なのでしょう、何処を取ってもドビュッシーそのものという音色で楽しませてくれました。
特に第3楽章、全員が弱音器を付けて奏する両端部と、通常の奏法による中間部との対比が素晴らしく、この夜の白眉だったと思います。
ところでドビュッシー、意外にも今回がSQSでは初登場で、次回に予定されているカルミナQのラヴェルとの聴き比べも一興でしょう。
前回はハッピー・バースデー変奏曲という楽しい作品をアンコールした彼等、今回は何が出るかと楽しみにしていましたが、その前に澤氏が同クァルテットの歴史を簡単に紹介してくれました。
それによると4人が人前で初めて演奏したのは、かつて團伊玖磨氏が開いていた東京駅の「駅コン」だったそうな。それが1990年の11月で、彼らが本格的にデビューしたのが91年春のコンサートツアー。その後の10年間はレパートリーを増やすべく、年回40回もの演奏会をこなしていたそうです。
メンバーは結成時から不動でしたが、最近は各自が多忙となり、演奏会は激減。“今や「不働」のメンバーです”と客席を笑わせていました。
改めて経歴を調べると、4人は夫々プロ・オケのコンマスや主席として活動していた時期(*)があり、現在でも紀尾井シンフォニエッタのメンバーたち。オーケストラの経験も、室内楽の実績も豊富な面々ですから、その極めて良質な音楽に納得させられるのは当然でしょう。
今回のプログラムは、正に澤クァルテットとしてデビューした公演と全く同じ選曲だったそうで、弾かれたアンコールもその時と同じ、モーツァルトのK421ニ短調からメヌエット楽章が演奏されました。
(*)澤は東京シティ・フィル、大関は群響、市坪は新星日響、林は大阪フィルの夫々首席奏者でした。
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