アケダクトとチャーチル・ダウンズが終戦

木曜日から始まったG戦ウィーク、3日目の土曜日(11月28日)がそのクライマックスで、4つの競馬場で二つのGⅠ戦を含む合計10鞍のG戦が行われました。一日で二桁のG戦が行われるのは、今年最後です。
ニューヨーク州のアケダクト競馬場とケンタッキー州のチャーチル・ダウンズ競馬場はこの日がフィナーレとなり、両州ともこれが今年のG戦終いでもありました。

順次レポートして行くことにして、先ずアケダクト競馬場で最初に行われたのは、2歳牝馬の9ハロン戦、ドモワゼル・ステークス Demoiselle S (GⅡ、2歳牝、9ハロン)。fast の馬場に7頭が出走し、ステークスはこれがデビューながら、前走初勝利の内容が良かったルイス・ベイ Lewis Bay がイーヴンの1番人気。一般ステークスの勝馬やG戦経験のある馬を抑えて支持を集めていました。
ダッシュ良く飛び出したのは4番人気(6対1)でローレルの一般ステークスを勝っているロスト・レイヴン Lost Raven 、2番枠発走のルイス・ベイは内の4番手を追走します。その本命馬、第4コーナーで外に出すと、前3頭を大外から一気に抜き去り、2番手を進んだ3番人気(7対2)のスリルド Thrilled に1馬身4分の3差を付ける完勝でした。1馬身差で最低人気(42対1)のディスコ・ローズが5番手から伸びて3着。
チャド・ブラウン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のルイス・ベイは、ベルモントの泥んこ馬場6ハロンでデビューし2着、続いて同じベルモントで2着以下に6馬身差を付ける圧勝で初勝利を挙げ、3戦目でG戦勝馬となりました。ドモワゼル・ステークスは来年のケンタッキー・オークスへのポイント対象レースで、ルイス・ベイは10ポイントを獲得。2着から4着(2番人気のフローラ・ドラ Flora Dora)までが夫々4・2・1ポイントを手にしています。

続いてはドモワゼルの牡馬版に相当するレムゼン・ステークス Remsen S (GⅡ、2歳、9ハロン)。こちらは9頭立てでしたが、11月4日にベルモント競馬場で行われたナシュア・ステークス(GⅡ)の1~3着馬が揃って出走し、勝馬モヘイメン Mohaymen が他馬より6ポンド重い負担重量を背負いながらも5対2の1番人気。
レースは5番人気(22対1)のドネガル・ムーン Donegal Moon が逃げ、モヘイメンは4番手追走。2番手で逃げ馬をマークしていた3番人気(9対2)のフレキシビリティー Flexibility が前を外から捉えて先頭に立ちましたが、モヘイメンは逃げ馬とフレキシビリティーの間を割るように抜け出すと、そのままフレキシビリティーに1馬身半差を付ける圧勝。ナシュア・ステークスと同じワン・ツー・フィニッシュになりました。更に1馬身半差で5番手を進んだ2番人気(2対1)のギフト・ボックス Gift Box が3着に入り、ナシュア3着のセイル・アホイ Sail Ahoy (5対1、4番人気)は4着と全く順当な結果。
キアラン・マクローリン厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のモヘイメンは、これで無傷の3戦3勝。ケンタッキー・ダービーへの10ポイントも獲得しました。同馬の母についてはナシュア・レポートで紹介しましたが、半姉のニュー・イヤーズ・デイ New Year’s Day もBCジュヴェナイル・フィリーズ(GⅠ)の勝馬であることも付け加えておきましょう。良血という背景を持ち、来年のクラシックを狙える1頭であることは間違いありません。

アケダクトの3つ目はカムリー・ステークス Comely S (GⅢ、3歳牝、9ハロン)。10頭が出走し、未勝利戦からアローワンス戦まで3連勝中のカランバ Carrumba が2対1の1番人気。
6番人気(15対1)の伏兵テンパー・ミント・パティー Temper Mint Patty が逃げ、カランバは2番手追走。逃げ馬が第4コーナーでバテ、カランバ先頭で直線に入りましたが、4番手に付けていたジョイント3番人気(9対2)のフォレヴァー・アンブライドルド Forever Unbridled が外から迫り、直線は2頭の長いマッチレース。終始頭差のリードを保ったフォレヴァー・アンブライドルが最後までハナを譲らず、結局頭差でカランバを抑えていました。3着は7馬身半の大差が付いて、3番手追走の2番人気(5対2)ワンダー・ギャル Wonder Gal と順当。
ダラス・スチュアート厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のフォレヴァー・アンブライドルドは、2歳時にフェア・グラウンズで勝って以来ほぼ1年振りの勝利で2勝目。もちろんG戦は初勝利ですが、5戦連続でG戦に挑戦し続けた末の勝利でした。レーチェル・アレクサンドラ・ステークス(GⅢ)とフェア・グラウンズ・オークス(GⅡ)が何れも3着、ケンタッキー・オークス(GⅠ)11着の後5か月の休養を挟み、前走レイヴン・ラン(GⅡ)は5着でした。良く似た名前のアンブライドルド・フォーレヴァー Unbridled Forever の一つ下の全妹に当たり、姉は今年バレリーナ・ステークスでGⅠ戦を制し、ケンタッキー・オークス3着、CCAオークス2着の実力馬。妹も来年の大舞台での活躍が期待できそう。

そして今年のアケダクト、ニューヨーク競馬の最後を締めくくるのがGⅠ戦のシガー・マイル・ハンデキャップ Cigar Mile H (GⅠ、3歳上、8ハロン)。1頭が取り消して6頭立てとなり、去年の勝馬でニューヨークではフォアゴ・ハンデ(GⅠ)とベルモント・スプリント・チャンピオンシップ(GⅢ)にも勝っているプライヴェイト・ゾーン Private Zone が6対5の1番人気。
そのプライヴェイト・ゾーンがスタートから先手を取って逃げましたが、4番手を進んでいた5番人気(8対1)のムシャウィシュ Mshawish が直線で抜け出し先頭に立ちます。しかしレースはそこから劇的な展開となり、後続3頭が一気に進出、中でも前半後方2番手から大外を通った2番人気(2対1)のトーナリスト Tonalist の末脚が勝り、3番手から伸びた3番人気(7対2)のレッド・ヴァイン Red Vine を首差抑えて優勝。同じく首差で2番手追走の4番人気(7対1)マトゥルー Matrooh が3着に入り、ムシャウィシュは4着、プライヴェイト・ゾーンも連覇成らず5着に沈みました。
ワン・ツー・フィニッシュとなったクリストフ・クレメント厩舎、前のレースに続きダブル達成となったジョン・ヴェラスケス騎乗のトーナリストは、去年のベルモント・ステークス勝馬。今年はウェストチェスター・ハンデ(GⅢ)で初戦を飾った後、メトロポリタン・ハンデ(GⅠ)とサバーバン・ハンデ(GⅡ)は共に2着。ホイットニー(GⅠ)は3着に終わりましたが、続くジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ(GⅠ)で2連覇達成。前走BCクラシック(GⅠ)ではアメリカン・フェイロー American Pharoah の5着と期待を裏切りましたが、ここで再びGⅠを制し、4つ目のGⅠタイトル獲得となります。

一方、ケンタッキー州のチャーチル・ダウンズ競馬場もこの日が今年のフィナーレで、G戦は2歳戦が2鞍。馬場は雨で泥んこの sloppy 。先ず牝馬のゴールデン・ロッド・ステークス Golden Rod S (GⅡ、2歳牝、8.5ハロン)は9頭が出走し、ここまで2戦2勝、前走の一般ステークス(ラグス・トゥー・リッチズ・ステークス)を勝ったステージプレイ Stageplay が8対5の1番人気。
泥馬場は先行馬有利と言うこともあり、第1コーナーに4頭が殺到する熾烈なハナ争い。向正面でこれを制した2番人気(2対1)のカリーナ・ミア Carina Mia が先頭に立ち、ステージプレイは2番手。この2頭が後続を7馬身も離して第3コーナーに入りましたが、直線も2頭の行った行った。最後まで順位は変わらず、結局カリーナ・ミアがステージプレイに4馬身4分の1差を付ける逃げ切り勝ちでした。1馬身半差で5番人気(14対1)のドリーム・ダンス Dream Dance が6番手から3着に追い込み、ポカホンタス・ステークス(GⅡ)勝馬で3番人気(5対2)のドスラキ・クィーン Dothraki Queen が4着。このレースもケンタッキー・オークス対象で、4着までが夫々10-4-2-1ポイントを獲得しています。
ウイリアム・モット厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のカリーナ・ミアは、10月10日のデビュー戦でステージプレイに3馬身差の2着。続く10月29日の未勝利戦で2着以下に9馬身以上の大差を付けて圧勝し、これで3戦2勝。姉にアルゼンチン・オークス馬で、アメリカでもサンタ・マルガリータ・インヴィテーショナル(GⅠ)を制したミス・マッチ Miss Match がいる良血馬です。

そして牡馬によるケンタッキー・ジョッキー・クラブ・ステークス Kentucky Jockey Club S (GⅡ、2歳、8.5ハロン)。もちろんケンタッキー・ダービーへのポイント対象で、勝馬には10ポイントが加算されます。1頭が取り消して13頭立て。2戦1勝2着1回、前走で2着以下を4馬身以上で切って捨てたモー・スピリット Mor Spirit が2対1の1番人気。
9番人気(32対1)の伏兵ダービー・エクスプレス Derby Express が逃げ、モー・スピリットは2番手と絶好の位置。逃げ馬を交わしてモー・スピリットが先頭で直線に入りましたが、前半8番手で待機した2番人気(7対2)のエアフォース Airforce が外から末脚を爆発させると、モー・スピリットに1馬身4分の3を付ける逆転劇です。頭差で後方から7番人気(16対1)のモー・トム Mo Tom が3着に食い込みました。
マーク・カッセ厩舎、ゴールデン・ロッドと2歳G戦ダブル達成となったジュリアン・ルパルーが騎乗したエアフォースは、前走BCジュヴェナイル・ターフ(GⅠ)の2着で、その前にはキーンランドの芝コースでバーボン・ステークス(芝GⅢ)に勝っていた馬。今回はダート・コースが初体験と言うことで2番人気に甘んじていましたが、血統的にはダートを克服してもおかしくない存在。芝もダートも問題ない馬として、来年のクラシックに向かいます。

ここでイリノイ州シカゴのホーソン競馬場から、第79回ホーソン・ゴールド・カップ・ハンデキャップ Hawthorne Gold Cup H (GⅡ、3歳上、10ハロン)を見て行きましょう。fast の馬場に8頭立て。去年のベルモント・ステークス2着のコミッショナー Commissioner が4対5の1番人気に支持されていました。
先ず2番人気(3対1)のマジェスティック・ハーバー Majestic Harbor が逃げ、コミッショナーは3番手から虎視眈々。直線で後続との差を広げに掛かったマジェスティック・ハーバーでしたが、徐々に順位を上げたコミッショナーが一気に差を縮めると、後方から追い上げるジョイント3番人気(6対1)のネックン・ネック Neck’n Neck に2馬身半差を付けて見事期待に応えました。更に2馬身4分の3差でマジェスティック・ハーバーが粘って3着。
トッド・プレッチャー厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のコミッショナーは、ベルモント・ステークスのあと半年の休養。今年1月にアローワンス戦3着から始動し、ドン・ハンデ(GⅠ)は6着に終わったものの、スキップ・アウェイ・ステークス(GⅢ)とピムリコ・スペシャル(GⅢ)に連勝。前走ファイエット・ステークス(GⅡ)4着からの参戦で、G戦3勝目を記録しました。同馬はエー・ピー・インディー A.P.Indy の最後の産駒と言うこともあり、今シーズンを最後に種牡馬として引退することが決まっています。結果的に引退レースを快勝で締め括り、今後はボールド・ルーラー Bold Ruler の血を引くサイアーとしての道を歩むことになるでしょう。

土曜日の最後はカリフォルニアのデル・マー競馬場から3鞍のG戦。最初のジミー・デュランテ・ステークス Jimmy Durante S (芝GⅢ、2歳牝、8ハロン)は firm の馬場に1頭が取り消して12頭立てとなり、ステークス・デビューながら無敗のリーリ Riri が2対1の1番人気。
5番人気(7対1)のコープ・ド・バレー Corps de Ballet が逃げましたが、後方3番手で直線に向いた9番人気(35対1)のファミリー・ミーティング Family Meeting が大外から伸び、これも6番手から追い込んだ4番人気(6対1)のモーカット Mokat に半馬身差を付ける波乱でした。更に1馬身4分の3差で6番人気(12対1)のサットンズ・スマイル Sutton’s Smile が3着に入り、リーリは10着大敗など、人気馬総崩れの結果です。
トーマス・プロクター厩舎、ドライデン・ヴァン・ダイク騎乗のファミリー・ミーティングは、デラウエア・パークのダート・コースでデビューして4着。2走目にローレルの芝コースで勝ち、これで3戦2勝でG戦もステークスも初勝利となりました。旧ミエスク・ステークスから改名されて2年目、何れもスカイ・メサ Sky Mesa 産駒が勝ったジミー・デュランテでもあります(去年の勝馬はオル・ファッション・ギャル Ol’ Fashion Gal)。

デル・マーの二つ目は、3歳最後のGⅠダービーとなるハリウッド・ダービー Hollywood Derby (芝GⅠ、3歳、9ハロン)。1頭が取り消したものの、最後のGⅠとあって14頭立ての多頭数。トゥワイライト・ダービー(芝GⅡ)とデル・マー・ダービー(芝GⅡ)を制しているオム Om が4対5の断然1番人気。
12番人気(60対1)の伏兵アクセプタンス Acceptance が逃げ、先行馬のオムは2番手追走。3コーナーから先頭に立ったオムが直線でも後続を引き離すかに見えましたが、7番手を進んだ5番人気(12対1)のマーチ March と、8番手追走の6番人気(14対1)カイロプラクター Chiroproctor が並んで追い込み、最後はカイロプラクターがマーチを頭差抑える大波乱。オムは半馬身差で3着に終わりました。
この日G戦ダブルとなるトーマス・プロクター厩舎、コーリー・ナカタニ騎乗のカイロプラクターは、前走アローワンス戦2着からステークス初挑戦で、いきなりのGⅠ勝馬となったせん馬。尤も勝たれて見れば、半兄コイル Coil はハスケル・インヴィテーショナルとサンタ・アニタ・スプリント・チャンピオンシップとGⅠに2勝した馬。GⅠ兄弟誕生となったハリウッド・ダービー、改めて競馬は血統が物を言う世界だと実感した次第です。

最後はネイティヴ・ダイヴァー・ハンデキャップ Native Diver H (GⅢ、3歳上、9ハロン)。2頭が取り消して5頭立てとなり、ロス・アラミトス・フューチュリティーとサンタ・アニタ・ダービーのGⅠ2勝馬ドルトムント Dortmund が3対5の1番人気。
最低人気(25対1)のマジェスティック・シティー Majestic City が逃げ、ドルトムントは2番手から。第3コーナーでスパートした大本命、鞍上はムチを使うことなく直線でリードを広げると、最後方から伸びる3番人気(3対1)のインペラティヴ Imperative に4馬身半差を付ける大楽勝で、漸くこの日最後に本命サイドでの決着となりました。1馬身半差の3着には、後方2番手から追い上げた2番人気(5対2)のアイアン・フィスト Iron Fist で順当。
ボブ・バファート厩舎、ゲーリー・スティーヴンス騎乗のドルトムントは、ケンタッキー・ダービーとプリークネス・ステークスのあと5か月の休養を取り、前走サンタ・アニタの一般ステークス(ビッグ・ベア・ステークス)に続くステークス2連勝。デル・マー競馬場は今回が初出走でしたが、カリフォルニアでは7戦7勝と無敵を誇る馬で、G戦は5勝目となります。

 

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