読売日響・第499回名曲シリーズ

金曜日頃から喉が痛いな、と思っていたら遂に来ました。風邪ですね。日曜日の昨日、朝から咳が止まりません。今日のコンサートは家内に代わってもらおう、と考えましたが、マーラーは気が進まない様子。熱があるわけではなく、頭痛もなし。あるのは咳だけなので、咳のし所さえ間違えなければ良かろう、ということで聴きに行くことに・・・。龍角散の大袋、皮を剥かずに飴本体にたどり着く奴を握りしめてね。
第499回名曲シリーズ サントリーホール
 マーラー/交響曲第2番ハ短調「復活」
  指揮/マンフレッド・ホーネック
  ソプラノ/薗田真木子
  アルト/マルティナ・グマインダー
  合唱/国立音楽大学合唱団(合唱指揮/田中信昭、永井宏)
  コンサートマスター/藤原浜雄
  フォアシュピーラー/鈴木理恵子
ホーネックのマーラーは数年前の第3がとても良かったので、これにも期待がかかりました。今回が8度目の来日だそうですね。
ホーネックの指揮振りはかつてのクライバー(カルロスの方)を髣髴させるもので、音を掬い上げるような素振り、全身をオーケストラにぶつけるような表現力は、いかにもオーケストラから牽き出される音楽にピッタリ。説得力に富んだ指揮です。
前回も感じましたが、ホーネックはピアニッシモを大切にします。「復活」にはこけおどし的なフォルテが頻発しますが、ここでは繊細な弱音を磨き上げることによって大音響との対比がより明確になり、作品に更なる立体感を与えるのでした。
一番の好例は第5楽章、コントラファゴット、トロンボーン、チューバによる pp の合奏が「怒りの日」(第1楽章の引用)を奏し、復活の主題に移行していく部分でしょう。ここは全く以って効果的でしたね。金管による最弱音は技術的に極めて難しいものですが、読響の高い技術力で難なく通過、柔らかく美しいサウンドを響かせます。
大昔、読響に客演したチェリビダッケが、“君たちにはフォルティッシモは出せない。本当のフォルテを出せるのはウィーンフィルとベルリンフィルだけだ。だからフォルテはどうでもよい。その代り、ピアニッシモを丁寧に造ろう” と語ったエピソードを思い出しましたが、そのピアニッシモはここでも生きていました。読響はこの頃から徐々に変わって行ったのですが、今や本当のフォルティッシモを出せる、世界でも数少ないオーケストラに成長しましたね。
この日の復活も、決して荒くならない大音響がサントリーホールに響き渡り、客席からも大歓声が沸き起こります。
ただし私の席がステージに近かった所為でしょうか、さすがの大曲、所々アンサンブルがガサガサする嫌いがあったのも事実。月曜日の芸劇での再演までには修正されるのではないでしょうか。
ホーネックは特別なことはしていませんでしたが、第3楽章にチョッと面白い工夫がありました。この楽章のクラリネットに mit Humor (茶目っ気たっぷりに)と指定されるところが3箇所あります(練習番号30の5小節前、31の7小節あと、46の12小節あと)。ここでクラリネット奏者はアウフタクトの3拍目のテンポを少し落とし、お茶目な感じを強調していました。もちろんホーネックの指示でしょうが、こういうのは初めての体験。
合唱は最初からP席を陣取り、二人のソリストは第2楽章と第3楽章の間にP席最前列に入場。
ナマ演奏の緊張感の中、演奏中は咳も出ず、無難にクリアーしました。最前列の双眼鏡男の不快を除けば、マーラーの大作を久し振りに楽しみました。それでもマーラーを好きか、と問われれば、素直に首を縦に振るわけにはいきません。これは若人の音楽、というのが私の見解です。

 

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