二冠馬の再始動

1月9日のアメリカ競馬はガルフストリームとサンタ・アニタで合計5鞍のG戦。正月第1週はシーズン初めの手探り感もありましたが、昨日はこれからGⅠを目指す馬たちの本格的なトライアルとなったようです。
1月早々ブラッドホースのビデオ映像が不調でしたが、漸く回復していつも通りのレポートが可能になりました。

先ずガルフストリーム・パーク競馬場からは3鞍のG戦。最初のマーシュアズ・リヴァー・ステークス Marshua’s River S (芝GⅢ、4歳上牝、8.5ハロン)にはダートに変更された時にだけ出走予定の3頭を含めた12頭が登録していましたが、結局雨は降らず firm の芝コースとなったため3頭は取り消しての9頭立て。ガルフストリームでは3戦2勝2着1回とほぼパーフェクトなサンディーヴァ Sandiva がイーヴンの1番人気。
スタートは1番枠発走の人気サンディーヴァ、7番人気(18対1)のクワイエット・キッテン Quiet Kitten 、5番人気(8対1)のディヴァイン・アイーダ Devine Aida の3頭が並ぶようにハナを争いましたが、結局向正面で先頭に立ったのはサンディーヴァ。第4コーナー手前でクワイエット・キッテンが脱落すると、直線ではやや外目を通った本命馬、6番手から伸びる6番人気(16対1)のア・リトル・ビット・サッシー A Little Bit Sassy に1馬身半差を付けて人気に応えました。後方2番手から追い込んだ2番人気(9対2)のトゥッティパエージ Tuttipaesi が1馬身差で3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のサンディーヴァは、シェイク・ジョアーンを総裁に戴くアル・シャハブの所有する5歳馬。3歳まではヨーロッパで走り、2歳時にはフランスでカルヴァドス賞(GⅢ)、3歳時にもイギリスでネル・グィン・ステークス(GⅢ)に勝ってアメリカに転厩。アメリカでも3歳時に一般ステークス(トロピカル・パーク・オークス)に勝ち、去年4歳になってからも2月にスワニー・リヴァー・ステークス(芝GⅢ)に優勝。前走は5か月休養明けで臨んだ11月のマイ・チャーマー・ステークス(芝GⅢ)3着で、これがG戦4勝目。2歳から5歳まで毎年一つづつのG戦を勝った来たことになります。

続いてはメインコースのハルズ・ホープ・ステークス Hal’s Hope S (GⅢ、4歳上、8ハロン)。fast の馬場に1頭が取り消して5頭立て。目下ステークスを3連勝中で、ガルフストリームでは去年2月のフレッド・フーパー・ハンデ(GⅢ)を含めて6勝模しているコース得意のヴァリッド Valid が9対5の僅かの差で1番人気。
そのヴァリッドが先手を取って逃げましたが、前半は3番手から徐々に下げ、一旦は最後方に控えた3番人気(2対1)のムシャウィシュ Mshawish が第3コーナー過ぎから進出、第4コーナーでは先行2頭を外から捉えると、内から差し返すヴァリッドを首差抑えての差し切り勝ち。2番手を追走した最低人気(17対1)のグランド・ショアーズ Grande Shores が3馬身4分の1差で3着に入りました。
勝ったムシャウィシュは、マーシュアズ・リヴァーのサンディーヴァと全く同じ、トッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ、アル・シャカブ所有の6歳馬。去年の秋までは芝コースを使われ、ガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデ(芝GⅠ)を勝っていたGⅠ馬。前走11月28日にアケダクトでシガー・マイル(GⅠ)でダート・コースに初挑戦して4着でしたが、今回は見事に克服してのアメリカG戦3勝目。オーナーがアル・シャカブであることから判るように、目標はドバイでのGⅠ制覇で、去年はドバイ・ターフが3着、一昨年はザビール・マイル(芝コース)に勝ってドバイ・ターフは4着でした。今年は芝とダートの両刀遣いに見通しが立ったことから、2月初めに同日に予定されているドン・ハンデ(GⅠ)かガルフストリーム・ターフ(芝GⅠ、勝てば連覇となる)を使ってドバイに向かい、ターフかワールド・カップを狙うローテーション。芝を使うかダートで勝負するかは、相手関係や馬場状態などを勘案しながら決めて行くことになりそうです。

ガルフストリームの最後はフォート・ローダーデール・ステークス Fort Lauderdale S (芝GⅡ、4歳上、8.5ハロン)、去年のこのレースはムシャウィシュが勝っていました。今年は3頭が取り消して9頭立て。6歳馬ながら一昨年のガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデ(芝GⅠ)を制し、去年も芝のG戦に2勝しているロクティー Lochte が2対1の1番人気。
しかし、レースはスタートから先手を取った2番人気(3対1)のハート・トゥー・ハート Heart to Heart が、他に競り掛ける馬もいないこともあって、そのまま逃げ切り勝ち。前半2番手から一旦3番手に下げた5番人気(8対1)のルークス・アリー Lukes Alley が内から懸命に追うも、半馬身差届かず2着。4番手追走の6番人気(10対1)オール・インクルーディッド All Included が1馬身4分の1差で3着に入り、後方3番手から追い込みに賭けたロクティーはハナ差4着に終わりました。
ブライアン・リンチ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のハート・トゥー・ハートは、これがG戦5勝目となる5歳馬で、これまでは何れも芝のGⅢ戦でしたが、GⅡクラスは初制覇となります。3歳時にはジェファーソン・カップとコモンウェルス・ターフ・ステークスに、去年4歳時にもモンマスでオーシャンポート・ステークス、チャーチルではリヴァー・シティー・ハンデに勝っていました。

一方サンタ・アニタ競馬場ではG戦2鞍。先ずシェイム・ステークス Sham S (GⅢ、3歳、8ハロン)は、fast の馬場に1頭が取り消して8頭立て。その取り消した馬が前走セシル・B・デミール・ステークス(芝GⅢ)の勝馬ドレスト・イン・エルメ Dressed in Hermes で、その時2着だったコレクテッド Collected が繰り上がって3対2の1番人気。
レースは5頭が一団でクラブ・ハウス・ターンに殺到する混戦となり、漸く向正面で最低人気(24対1)のセンパー・フォルティス Semper Fortis が逃げの態勢を創ります。このハナ争いを4番手の外で控えていたコレクテッドが外から交わして先頭に立つと、最後方から追い込む3番人気(5対1)のレッツ・ミート・イン・リオ Let’s Meet in Rio に1馬身4分の1差を付けて見事期待に応えました。更に1馬身半差で5番手を進んだ5番人気(10対1)のラオバン Laoban が3着。2着で入線したレッツ・ミート・イン・リオが第4コーナーで外に膨れ、更に外を通った2頭に連鎖的を弾くシーンがあって審議となりましたが、最終的には入線通りで確定しました。
1・2着は共にボブ・バファート師の管理馬で、勝馬に騎乗していたのはマーチン・ガルシア。コレクテッドは10月12日にサンタ・アニタの下り坂芝コースでデビュー勝ちし、前走11月末のセシル・デミールで2番から先に抜け出した所をドレスト・イン・エルメに交わされての2着。今回はダートでの調教も良いことからメイン・コースに初挑戦し、成績は3戦2勝2着1回となってクラシック獲りに挑みます。

最後はサン・パスカル・ステークス San Pasqual S (GⅡ、4歳上、8.5ハロン)。1頭が取り消して7頭立てでしたが、何と言っても一昨年の2冠馬(ダービーとプリークネス)で年度代表馬に輝いたカリフォルニア・クローム California Chrome が去年3月のドバイ・ワールド・カップ2着以来9か月ぶりの実戦とあって3対5の断然1番人気。昨年の勝馬ホッパチュニティー Hoppertunity が2対1の2番人気で続きます。
スタートから逃げたのは最低人気(35対1)のアルファ・バード Alfa Bird で、スタートの良かったカリフォルニア・クロームは直ぐに2番手で落ち着きます。一方ホッパチュニティーは最後方で待機策。第3コーナーと第4コーナーの中間地点で逃げ馬を捉えたカリフォルニア・クローム、直線もワンペースながら脚を伸ばし、4番手から追い上げる3番人気(7対1)のインペラティヴ Imperative を余裕で1馬身4分の1差抑えて堂々の復活劇を果たしました。ホッパチュニティーも直線で良く伸びましたが、1馬身差の3着までで連覇成らず。
確か今年79歳になるはずのアート・シャーマン厩舎、ずっとコンビを組んできたヴィクター・エスピノザ騎乗のカリフォルニア・クロームは、今回からオーナーが替って勝負服も新しいもの。引退後には種牡馬として供用されることが決まっているテイラー・メイド・ファームもオーナーの一角に加わりました。去年の三冠馬アメリカン・フェイロー American Pharoah の影に隠れた感のあったカリフォルニア・クロームでしたが、どっこい未だ健在。今年のクラシック世代からどんなスターが誕生するは未だ判りませんが、一昨年の二冠馬の動向からも目が離せません。

 

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