アメリカン・フェイロー、容赦無し

アメリカ競馬も8月2日の事後報告です。日曜日はサラトガとモンマス・パークで合計5鞍のG戦が行われましたが、何と言っても注目はアメリカン・フェイローが三冠達成以来の競馬となるハスケル・インヴィテーショナル。しかし結果は既に御存知と思いますので、レースが行われた順にレポートして行きましょう。

先に取り上げるのはサラトガ競馬場のシュヴィー・ハンデキャップ Shuvee H (GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。6頭が出走してきましたが、最初から2頭のマッチレースの趣。去年のケンタッキー・オークスとBCディスタッフを制した3歳チャンピオンのアンタパブル Untapable と、サラトガではCCAオークスとアラバマ・ステークスとGⅠに2勝しているストップチャージングマリア Stopchargingmaria が共に6対5で並びましたが、僅かの差で前者が1番人気。GⅢ戦にはもったいない程の見ものですが、事実1980年代はGⅠだったレースでもあります。
レースも最初から2頭の一騎打ち。共に先行タイプの人気2頭がスタートから先手を取り、アンタパブルが逃げ、ストップチャージングマリアがこれをピタリとマークし、他は少し置かれる展開。第4コーナーで並んだ2頭、外を通ったストップチャージングマリアが直線のマッチレースを1馬身制して優勝。2馬身半差で3番手を追走していた5番人気(14対1)のティズ・ウインディー Tiz Windy が3着に入りました。
トッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のストップチャージングマリアは、2歳のデビュー勝ちとスピナウェイ・ステークス(GⅠ)2着、それに上記GⅠ戦2勝を加え、これでサラトガでは5戦4勝となります。

続いて4鞍のG戦が組れていたモンマス・パーク競馬場から手短に。レース順に行くと、最初は マッチメーカー・ステークス Matchmaker S (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。firm の馬場に8頭が出走し、前走モンマス・デビューとなったイートンタウン・ステークス(芝GⅢ)を快勝したアイム・オールレディー・セクシー I’m Already Sexy がイーヴンの1番人気。
レースは3頭が入れ代わり立ち代わり先頭に立つスローな流れでしたが、前半7番手で待機した4番人気(9対1)のカジュアル・スマイル Casual Smile が直線では内目を衝いて馬群を割るようにして抜け出すと、外から追い上げるアイム・オールレディー・セクシーに1馬身4分の1差を付けて優勝。4分の3馬身差で2番人気(5対2)のテスタ・ロッシ Testa Rossi がこれも追い込んでの3着でした。
チャド・ブラウン厩舎、エイベル・カステラノ騎乗のカジュアル・スマイルは英国産、イギリスで5戦した後にアメリカに転じた4歳馬で、これがステークス初挑戦での初勝利でした。5月の未勝利戦、7月のアローワンス戦に続く3連勝でもあります。カジュアル・スマイルの母カジュアル・ルック Casual Look は、2003年の英オークス馬、競走馬として以上に繁殖牝馬として価値の高そうな1頭です。

続いては モンマス・カップ・ステークス Monmouth Cup S (GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。fast の馬場に2頭が取り消して6頭立て。前走モンマスでサルヴァトーレ・マイル(GⅢ)に勝っているブレイドスター Bradestar が4対5の1番人気。
ライヴァルが取り消したこともあり、スタートから飛ばしたブレイドスターの一人旅。2番手を追走した去年の勝馬で3番人気(7対2)のヴァリッド Valid に2馬身4分の3差を付ける逃げ切り勝ちです。更に4馬身4分の3差がついて4番人気(10対1)のフリースタイラー Freestyler が3着。
エディー・ケナリー厩舎、コーリー・ラヌリー騎乗のブレイドスターは、去年のマインシャフト・ハンデ、アック・アック・ハンデ、そして前走とGⅢに3勝していましたが、これがGⅡ戦は初勝利となる5歳馬です。

この日三つ目のG戦はオーシャンポート・ステークス Oceanport S (芝GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。1頭取り消しがあり7頭立て。前走トライアルとなるモンマスの一般ステークス(エルクウッド・ステークス)を様々な不利を克服して快勝したカラファ Kharafa が6対5の1番人気。
レースは2番人気(2対1)のハート・トゥー・ハート Heart to Heart が先手を取ると、前半4番手から追い込む5番人気(12対1)のホッターサル Hothersal に1馬身半差を付けて優勝。2馬身4分の1差で2番手を追走したケージ・ファイター Cage Fighter が3着に入り、カラファは末脚不発で7着最下位に敗れています。
ブライアン・リンチ厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のハート・トゥー・ハートは、去年のカナダ最強3歳馬。3歳時はアメリカでもジェファーソン・カップ、コモンウェルス・ターフ・ステークスと芝のGⅢに2勝していました。シーズン初戦の前走ベルモントのポーカー・ステークス(芝GⅢ)では7着と惨敗していましたが、叩かれ2戦目でのG戦3勝目。

そして最後に注目のハスケル・インヴィテーショナル Haskell Invitational (GⅠ、3歳、9ハロン)。ブリーダーズ・カップには3歳限定戦はありませんが、このレースの勝馬にはBCクラシックへの優先出走権が与えられます。三冠馬に挑戦したのは6頭(1頭は取り消し)でしたが、もちろんアメリカン・フェイロー American Pharoah が1対9と言う元返しに近い断トツ1番人気。陣営へのプレッシャーは相当なものだったでしょう。
スタート前から歓声が起きる中、先手を取ったのは3番人気(9対1)のコンペティティヴ・エッジ Competitive Edge 、アメリカン・フェイローは2番手を楽走します。第3コーナーで早くも大本命が逃げ馬を捉えると、観衆からは更なる大歓声。ヴィクター・エスピノザ騎手が持ったまま直線に向くと、後はほとんどキャンターで後方から追い上げる4番人気(18対1)のキーン・アイスKeen Ice に2馬身4分の1差で堂々の貫録勝ち。着差は2馬身チョッとでしたが、追えば7馬身は付いていたのではないかと思えるほどの楽勝でした。更に3馬身差で4番手を進んだ2番人気(6対1)のアップスタート Upstart が3着。
チャンピオンを管理するボブ・バファート師は、ハスケルは何と8勝目で、最近6年間で5勝。アメリカン・フェイローもGⅠ5連勝、G戦そのものは8連勝で、内7勝がGⅠという真のチャンピオンに相応しい成績となります。今回の圧勝劇は滅多に見られるものではなく、実況アナウンサーも絶叫する始末でした。次が楽しみな名馬ではあります。

 

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