愈々GⅠ戦線がスタートしたアメリカ競馬

2月第1週のアメリカ競馬は、待ちに待ったGⅠ戦線がスタート。3か月後にはケンタッキー・ダービーが行われるとあって、クラシックを目指す優駿たちも始動、中々に見応えあるG戦が続きました。

先ずガルフストリーム・パーク競馬場から行きましょう。この日はステークスが6鞍組まれており、G戦はGⅠ2鞍を含めて4鞍。G戦最初の第5レースとして行われたフレッド・W・フーパー・ハンデキャップ Fred W. Hooper H (GⅢ、4歳上、8ハロン)は、fast の馬場に8頭立て。カナダ産馬で去年のフロリダ・ダービー(GⅠ)3着、前走ガルフストリームのアローワンス戦を4馬身差で圧勝したアミズ・フラッター Ami’s Flatter が6対5の1番人気。
レースは2番人気(3対1)のワイルドキャット・レッド Wildcat Red が強いペースで逃げましたが、他馬もこれを差無く追走。前半は後方2番手を進んでいた3番人気(7対2)のトミー・マチョ Tommy Macho が第3コーナーを過ぎる辺りからスパートし、第4コーナーでは4番手追走から先に先頭に立った4番人気(7対1)のスタンフォード Stanford を外から捉えると、直線では寮馬スタンフォードに3馬身4分の3差を付ける快勝。6馬身差が付いて5番手を進んだ5番人気(8対1)のグランド・ショアズ Grande Shores が3着に食い込みました。人気のアミズ・フラッターはインコースの3番手を進むも4着敗退。
ワン・ツー・フィニッシュとなったトッド・プレッチャー厩舎、ルイス・サエズ騎乗のトミー・マチョは、これで9戦4勝となる4歳馬。去年11月にアケダクトでディスカヴァリー・ステークス(GⅢ)でG戦初勝利を挙げ、12月にはアケダクトの一般ステークス(クイーンズ・カウンティ―・ステークス)で2着。これが今期初戦で、当初はドン・ハンデ参戦も検討していましたが、先ずはステップを踏んで1マイル戦からのスタートを選択したのが好結果に繋がったようです。

続いては第6レースのスワニー・リヴァー・ステークス Swanee River S (芝GⅢ、4歳上牝、9ハロン)。firm の馬場に8頭立て。未だG戦勝ちは無いものの、前走12月のガルフストリーム・パーク・ウエストでトロピカル・パーク・オークス(一般ステークス)を制したタミー・ザ・トルピード Tammy the Torpedo が9対5の1番人気。
全馬ゆったりしたスタートから、敢えて行く馬がいないと見て人気のタミー・ザ・トルピードがクラブハウス・ターン手前で意を決したようにハナに立ち、スローペースでの逃げ。結局この積極策が功を奏し、後方3番手から追い込んだ4番人気(5対1)のラインハ・ダ・バテリア Rainha Da Bateria に1馬身半差を付けての鮮やかな逃げ切り勝ちで人気に応えました。頭差の3着には、後方2番手から伸びた5番人気(9対1)ハビビ Habibi の順。なお4着は3番人気(4対1)のライト・イン・パリス Light In Paris と、最低人気(21対1)でアルゼンチンのGⅠ馬スウィーティ―・ガール Sweetie Girl とが同着となっています。
チャド・ブラウン厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のタミー・ザ・トルピードは、これでステークスに連勝し、G戦は初勝利となる4歳馬。前走は6番手から追い込んでの勝利でしたから、異なったスタイルでの連勝となります。G戦は2歳時に1番人気でミス・グリロ・ステークス(芝GⅢ)が3着、BCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフでは7着に終わり、去年11月にはミセス・リヴィーア・ステークス(芝GⅡ)でも6着に終わっており、4度目の挑戦での初勝利でした。

そして愈々今年最初のGⅠ戦となるガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデキャップ Gulfstream Park Turf H (芝GⅠ、4歳上、9ハロン)。8頭が出走し、GⅠ馬で7歳の古豪ザ・ピッツァ・マン The Pizza Man がシーズン初戦を迎えるとあってイーヴンの1番人気。三つ目のGⅠタイトルを目指します。
2番人気(3対1)のシャイニング・クーパー Shining Cooper が逃げ、ザ・ピッツァ・マンは6番手に待機。ペースが遅かったこともあって先行馬が渋太く粘る展開となり、4番手を進んだ4番人気(5対1)のルークス・アリー Lukes Alley が第4コーナーで先行2頭を外から捉えると、粘るシャイニング・クーパーを首差抑えて嬉しいGⅠ戦初制覇。4分の3馬身差で2番手を追走していた6番人気(14対1)のオール・インクルーデッド All Included が3着に入り、ザ・ピッツァ・マンの末脚は不発で5着に終わりました。
ジョシー・キャロル厩舎、パコ・ロペス騎乗のルークス・アリーは、2014年のカナダ最強古馬に選出された6歳牡馬。カナダではGⅡとGⅢの勝鞍はあるものの、アメリカでのステークスは初勝利。ここ3戦は何れも2着で、カナダのGⅡとGⅢに続き、前走ガルフストリームのフォート・ラウダーデール(芝GⅡ)での半馬身差2着、遂に念願のGⅠ制覇を果たしたことになります。

フロリダの最後は、ドバイへのステップとしても知られるドン・ハンデキャップ Donn H (GⅠ、4歳上、9ハロン)。BCクラシックに繋がる長いGⅠロードの第一弾でもあります。8頭が出走し、アメリカン・フェイロー American Pharoah 引退後の古馬界を牽引することが期待されるトラヴァース勝馬のキーン・アイス Keen Ice が2対1の1番人気に支持されています。
ハナを切ったのは大外8番枠発走の6番人気(7対1)ファイナンシャル・モデリング Financial Modeling 、キーン・アイスは最後方から追い込みに賭ける構え。しかし逃げ馬を2・3番手で追走した馬の勢いが良く、内の3番手で抜け出す機会を窺っていた3番人気(9対2)のムシャウィッシュ Mshawish が第4コーナーで外に出し、先行2頭を外から捉えると、2番手でマークしていた4番人気(6対1)のヴァリッド Valid に2馬身差を付ける完勝。半馬身差で4番手を進んだ6番人気(7対1)のメクシコマ Mexikoma が3着に入り、キーン・アイスは漸く6着まで。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗、アル・シャカブ所有のムシャウィッシュは、今年既に1月9日にハルズ・ホープ・ステークス(GⅢ)に勝っており、早くも2勝目。去年5歳時には同日の芝のGⅠ戦ガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデに勝っており、GⅠは2勝目。去年のBCマイル4着からダート・コースに転身し、シガー・マイル(GⅠ)4着を経て前走で初のメインコースG戦勝ち。両コースでのGⅠ制覇と、種牡馬としての価値を高める貴重な勝利となりました。このあとはドバイに飛び、目標のワールド・カップで頂点を目指します。

一方、サンタ・アニタ競馬場でもG戦は4鞍。GⅠ戦こそありませんが、何れも今期のGⅠ戦線に繋がる重要なレース達です。最初のロバート・B・ルイス・ステークス Rober B. Lewis S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)は、ケンタッキー・ダービーのポイント対象で、fast の馬場に1頭が取り消して6頭立て。去年12月にロス・アラミトス・フューチュリティー(GⅠ)を制しているモー・スピリット Mor Spirit が3対5の2倍を切る1番人気。
2番人気(5対2)アイ・ウィル・スコア I Will Score の逃げを3番手の外でマークしたモー・スピリット、直線では逃げ馬、2番手から脚を伸ばした3番人気(7対1)のアンクル・リーノ Uncle Lino と3頭の叩き合いになりましたが、最外から並び掛けたモー・スピリットが勝り、アンクル・リーノに1馬身半差を付けて堂々期待に応えました。半馬身差で逃げたアイ・ウィル・スコアが3着。
ボブ・バファート厩舎、ゲーリー・スティーヴンス騎乗のモー・スピリットは、ロス・アラミトスの前にケンタッキー・ジョッキー・クラブ・ステークス(GⅡ)で2着しており、これでダービー・ポイントは24となり、現時点では2歳チャンピオンのナイクィスト Nyquist(30)に次ぐ第2位。バファート師はこのレース6勝目で、去年勝ったドルトムント Dortmund と同じローテーションでサンタ・アニタ・ダービー(GⅠ)を目指すことになるでしょう。

続いては牝馬のクラシック・トライアルとなるラス・ヴァージェネス・ステークス Las Virgenes S (GⅡ、3歳牝、8ハロン)。去年までのGⅠからGⅡに降格されましたが、1頭が取り消して6頭立て。去年の2歳牝馬チャンピオン、ソングバード Songbird が登場して1対9の圧倒的1番人気、ここでは負けは考えられないというオッズですが、課題は距離(1マイル)とBC以来の休み明けでしょうか。
何時もの様にスタートから先手を奪ったソングバード、そのまま一人旅の展開となり、直線でも持ったままの楽走で、後方2番手から上がってきた3番人気(23対1!)のランド・オーヴァー・シー Land Over Sea に6馬身半差を付ける圧勝。更に3馬身4分の3差で4番手を進んだ4番人気(24対1)のシーズ・ア・ウォリアー She’s a Warrior が3着に入っています。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のソングバードは、これで無傷の5戦5勝。既にGⅠ戦は3勝しており、ここで事実上GⅠに等しいラス・ヴァージェネスを加え、今年の牝馬クラシックの中心馬であることは明らかでしょう。順当ならサンタ・アニタ・オークスからケンタッキー・ダービーというローテーションでしょうが、サンタ・アニタ・ダービーからケンタッキー・ダービーという牡馬路線に挑めないか、というファン心理も働いてきそうなソングバードの強さでした。

次は古馬戦線に移り、最初はメイン・コースのサン・アントニオ・ステークス San Antonio S (GⅡ、4歳上、9ハロン)。8頭が出走し、ドバイ・ワールド・カップを視野に入れているGⅠ馬ホッパチュニティー Hoppertunity が9対5の1番人気。
レースは4番人気(6対1)のキャット・バーグラー Cat Burglar が逃げ、ホッパチュニティーは後方2番手で待機。第3コーナーの手前でスパートした本命馬、第4コーナーでは大きく外に膨れながらも、直線では更に外から伸びた5番手追走の2番人気(7対2)インペラティヴ Imperative と並ぶようにゴール。際どい写真判定となりましたが、ホッパチュニティーがインペラティヴをハナ差抑えて順当な結果で収まっています。半馬身差で2番手から流れ込んだ3番人気(4対1)のドンワース Donworth と、これも人気通り。
ロバート・ルイスに続きダブルとなったボブ・バファート厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のホッパチュニティーは、去年のこのレースではシェアード・ビリーフ Shared Belief 、カリフォルニア・クローム California Chrome の2強に続く3着だった5歳馬。一昨年のクラーク・ハンデでGⅠを初制覇し、去年はサン・パスカル・ステークス(GⅡ)に優勝しましたが、それ以来の勝星となりました。この間9戦、着外は一度もありませんでしたが、これで胸を張ってドバイに遠征することになるでしょう。

土曜日の最後は、芝コースの古馬戦サン・マルコス・ステークス San Marcos S (芝GⅡ、4歳上、10ハロン)。good の馬場に2頭が取り消して9頭立て。何故かここまでほとんど実績の無い英国産馬ヘイ・デュード Hay Dude が僅かの差で5対2の1番人気。
そのヘイ・デュードが先頭に立って逃げ切りを図りましたが、前半5番手を進んだ2番人気(本命と同じ5対2)のフラムボヤント Flamboyant が第4コーナーでは馬3頭分の外から追い上げ、3番手でマークしていた8番人気(16対1)で出走馬中唯一の牝馬ガガ・アー Gaga A に4分の3馬身差を付けて優勝。同じく4分の3馬身差で7番手から伸びた最低人気(45対1)のクイック・カサブランカ Quick Casablanca が3着に入り、ヘイ・デュードは6着に沈んでいます。
パトリック・ギャラガー厩舎、ブライス・ブラン騎乗のフラムボヤントは、1月2日のサン・ガブリエル・ステークス(芝GⅡ)に続く2連勝。お正月にレポートしたように、フランスからアメリカに転戦し、初戦こそ勝ったもののその後は10連敗。前走は46対1の大穴で制しましたが、今回は微差2番人気での勝利。何でもブラン騎手がフランス語で語りかけたのが変身の切っ掛けだったようで、日本の血を持つフランス語が判る馬、というレッテルが貼られそうですね。

 

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