テーピン、順当にシーズン始動

今週のアメリカは月曜日のプレジデンツ・デイを含めて3連休、3日間続けてG戦が行われますが、GⅠ戦は組まれていません。しかしクラシックを目指す有力な3歳馬の登場も予定されており、愈々蹄春到来という感じもします。

2月13日の土曜日は5つの競馬場で合計8鞍のG戦、何処からスタートするか迷いますが、先ずはガルフストリーム・パーク競馬場のロイヤル・デルタ・ステークス Royal Delta S (GⅡ、4歳上牝、8.5ハロン)から行きましょう。以前はセービン・ステークスと呼ばれていたG戦で、去年は3月21日に行われましたが、今年は元の開催時期に戻っています。馬場は fast 、コール・パット Call Pat が日曜日のG戦に回るために回避しての5頭立て。先週のムシャウィシュ Msawish に倣ってか芝馬サンディーヴァ Sandiva がダートG戦を狙って参戦し、6対5の1番人気。
そのサンディーヴァがスタートでやや出遅れし、向正面で3番手に押し上げます。2番人気(8対5)のベスト・ビヘイヴィアー Best Behavior が逃げましたが、2番手でマークした3番人気(3対1)のペンウィズ Penwith が第4コーナー手前で逃げ馬を捉えると、最後で追い上げるサンディーヴァを3馬身抑えて優勝。4馬身差でベスト・ビヘイヴィアーが3着に粘りました。
キアラン・マクローリン厩舎、ルイス・サエズ騎乗のペンウィズは、ゴドルフィン所有の5歳馬。2歳時にはドモワゼル・ステークス(GⅠ)で3着したこともあり、3歳シーズンの末にはインディアナ・オークス(GⅡ)で3着の実績もありました。去年は僅か2戦、2月のレディーズ・ハンデ6着のあと休養し、今年1月に休み明けでガルフストリームのアローワンス戦に勝って復活したばかり。2連勝で念願のG戦初勝利を果たしました。

次はローレル・パーク競馬場に行きましょう。バーバラ・フリッチー・ステークス Barbara Fritchie S (GⅡ、4歳上牝、7ハロン)は従来3歳上の条件でしたが、今年は現実的に古馬限定戦となりました。fast の馬場に7頭が出走し、去年の勝馬レディー・サベリア Lady Sabelia が3対2の1番人気。
ライヴァルと見做された2番人気(9対5)のホット・シティー・ガール Hot City Girl が逃げ、レディー・サベリアは5番手から。2番手を進んだ3番人気(4対1)のダンシング・ハウス Dancing House が直線でホット・シティー・ガールを競り落とすと、4番手を進んだ伏兵(12対1)クロージズ・フォール・オフ Clothes Fall Off の追撃を1馬身4分の3差退けての逆転劇。1馬身半差で漸く5番手から伸びたレディー・サベリアが3着に入り、ホット・シティー・ガールは6着敗退。
ガルフストリームのG戦と同じキアラン・マクローリン厩舎、ケンドリック・カームーシュ騎乗のダンシング・ハウスは、これまたゴドルフィンの所有する5歳馬。G戦初勝利と言う点も共通しています。2歳時にスピナウェイ・ステークス(GⅠ)で3着したあと芝に転向。芝で6戦したあとは去年からダート・コースに戻り、4月にキーンランドのアローワンスに優勝。そのあと休養し、前走1月9日の一般ステークス(インターボロー・ステークス)では2着し、今回の勝利を合わせて復帰後のダートでは3戦2勝2着1回とほぼパーフェクトな実績となります。

この日3鞍のG戦が組まれているタンパ・ベイ・ダウンズ競馬場で最初に行われたのは、クラシック路線の一つとなるサム・F・デイヴィス・ステークス Sam F. Davis S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。去年は1月末に行われましたが、今年は2週間遅れての開催。ダービーのポイント対象ではありませんが、fast の馬場に1頭が取り消して6頭立て。前走ガルフストリームの未勝利戦の勝ち方が目立ったゲティスバーグ Gettysburg が8対5の1番人気。
レースは3番人気(7対2)のモーニング・ファイア Morning Fire が逃げましたが、4番手を進んだ4番人気(4対1)のデスティン Destin が第3コーナーからスパートし、第4コーナーで先頭に立つと、外から追い込む2番人気(3対1)のラフティング Rafting を2馬身4分の1差抑えて優勝。3馬身半差で逃げたモーニング・ファイアが3着に粘り、人気のゲティスバーグは3番手追走も5着敗退に終わっています。
このレース6勝目となるトッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のデスティンは、前走1月16日のルコント・ステークス(GⅢ)で4着だった馬で、これがステークスも初勝利。ノーフォーク・ステークス(GⅠ)勝馬でプリークネス、サンタ・アニタ・ダービー、BCジュヴェナイルでも夫々3着だったクリエイティヴ・コース Creative Cause の全弟という良血だけに、ポイントとは別にケンタッキー・ダービーを目指すことになるでしょう。

2つ目はエンデヴァー・ステークス Endeavour S (芝GⅢ、4歳上牝、8.5ハロン)。これも去年はサム・デーヴィスと同じ1月末でしたが、2週ずれ込んでの開催。firm の馬場に1頭が取り消して6頭立てですが、何と言っても去年BCマイル(芝GⅠ)で牡馬を蹴散らして優勝したテーピン Tepin のシーズン・デビューとあって、1対5の圧倒的1番人気。
伏兵(28対1)ラヴリー・ロレー Lovely Loyree の逃げを2番手でマークしたテーピン、直線入口で鞍上がゴーサインを出すと圧巻の瞬発力で後続を一気に突き放し、最後は抑える余裕を見せながら3番手追走の3番人気(5対1)レディー・ララ Lady Lara に3馬身半差を付ける横綱相撲。逃げたラヴリー・ロレーが半馬身差で3着に粘っていました。
マーク・カッセ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のテーピンは、これで16戦8勝2着3回3着1回となる5歳馬。去年はBCを含めG戦に4勝(内、GⅠは3勝)した強豪で、春の目標は4月15日に行われるメイカーズ46マイル(芝GⅠ)で再び牡馬を蹴散らすこと。今年の最終目標がBC2連覇であることは勿論でしょう。

タンパ・ベイの最後は、文字通りタンパ・ベイ・ステークス Tampa Bay S (芝GⅢ、4歳上、8.5ハロン)。こちらは、去年は1月24日に行われていました。2頭の取り消しがあっても10頭立てと多頭数、去年3月にアップルトン・ハンデ(芝GⅢ)に勝ったウォー・コレスポンダント War Correspondent が2対1の1番人気。
レースはアルゼンチンのGⅢ馬でブービー人気(57対1)のテイク・ザ・スタンド Take the Stand が逃げ、ウォー・コレスポンデントは前3頭からやや間を置いて内の4番手追走。しかし本命馬は勝負所で内に包まれて抜け出す機会を失う中、前半は7番手に控えていた2番人気(5対2)のリロード Reload が第3~4コーナーの中間点辺りで外から進出、最後は逃げ馬の二の脚に粘られながらも首差でテイク・ザ・スタンドを捉えての優勝。半馬身差で後方から3番人気(7対2)のカリブー・ガーデンズ Karibu Gardens が3着に追い込みましたが、ウォー・コレスポンダントは結局8着惨敗に終わっています。
クロード・マゴーヒー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のリロードは、一昨年のカナディアン・ターフ・ステークス(芝GⅢ)以来のG戦2勝目となる7歳馬。去年はアケダクトの芝一般ステークスで1番人気しながら3着でシーズンを終えていましたが、今年はシーズン・デビューを見事G戦勝でスタートさせました。

続いてゴールデン・ゲート競馬場のエル・カミノ・リアル・ダービー El Camino Real Derby (GⅢ、3歳、9ハロン)。オール・ウェザーのタペタ・コースで行われるダービー・トライアルで、ポイント対象となる2レースの内の一つ。1頭が取り消しましたが13頭立ての大混戦。全馬のオッズは判りませんが、1月16日にこのコースで行われたトライアルのカリフォルニア・ダービー(リステッド戦)に勝ったフランク・カンヴァセーション Frank Conversation が8対5の1番人気。
レースは最内枠スタートを利して伏兵(35対1)のケリー・ウィズ・ア・トゥイスト Kelly With a Twist の逃げ。第4コーナーで3番手を進んでいた14対1のアルゲノン Algenon が一旦先頭に立ちましたが、前半は6番手で待機していたフランク・カンヴァセーションが直ぐに外から並び掛けると、後方から追い込む11対1のタスク Tusk に4分の3馬身差を付けて見事期待に応えました。2馬身4分の1差で2対1のカシオペア Kasseopia が3着。
ダグ・オネイル厩舎、マリオ・グティエレス騎乗のフランク・カンヴァセーションは、2009年のチョコレート・キャンディー Chocolate Candy 以来となるカリフォルニア=エル・カミノ・リアル両ダービーのダブル達成。ダービーポイント10を獲得して現時点の14位に上がってきました。現在のトップを行くナイキスト Nyquist は、フランク・カンヴァセーションと同じオネイル厩舎のクラシック候補で、レースを使い分けながらダービーを目指すことになるでしょう。そのナイキストは、月曜日のサン・ヴィセンテでシーズン初戦を迎える予定です。

最後にカリフォルニアのサンタ・アニタ競馬場では2鞍のG戦、先ず芝のアルカディア・ステークス Arcadia S (芝GⅡ、4歳上、8ハロン)は、firm の馬場に2頭が取り消して5頭立て。去年のクラシックに乗った明け4歳馬が注目されますが、4対5の1番人気に支持されたのは8歳せん馬でシューメーカー・マイル(芝GⅠ)を2連覇している快速馬オビアスリー Obviously 。
そのオビアスリーが、付いてくるなら付いて来い、と言わんばかりの強いペースでレースを引っ張ります。そのまま鮮やかな逃げ切りかと思われましたが、2番手を追走していた4番人気(7対1)のボロ Bolo が直線で執拗に食い下がり、遂に最後の数歩で本命馬を首差差し切っての勝利。2馬身4分の3差で3番手を追走していた2番人気(8対5)のオム Om がそのまま3着で入線しています。
カーラ・ゲインズ厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のボロは、前走ベルモント・ダービー(芝GⅠ)5着以来7か月の休養明けでのG戦初勝利。一昨年デル・マーの芝コースで未勝利を脱し、続くサンタ・アニタの一般ステークス(エディー・ローガン・ステークス)にも連勝。クラシック・シーズンはサン・フェリペ(GⅡ)とサンタ・アニタ・ダービー(GⅠ)で共に3着し、権利を得て出走したケンタッキー・ダービーは12着に終わりました。その後5月のサンタ・アニタで芝のアローワンス戦で3勝目を挙げ、再び挑んだベルモント・ダービーが5着。次は3月12日に予定されているフランク・キルロー・マイル(芝GⅠ)でGⅠ獲りに挑みます。

土曜日の最後はサンタ・マリア・ステークス Santa Maria S (GⅡ、4歳上牝、8.5ハロン)。fast の馬場に8頭立て。GⅠ馬のバードアットザワイア Birdatthewire が出走してきましたが、これを抑えて9対5の1番人気に支持されたのが、G戦でニア・ミスが続いているタラズ・タンゴ Tara’s Tango 。バードアットザワイアは2ポンドの負担重量増が嫌われたのか2対1の2番人気で続きます。
4番人気(9対2)のリヴィング・ザ・ライフ Living The Life と3番人気(7対2)のヤヒルワ Yahilwa がハナを争う中、スタートで出遅れながらも4番手に付けたタラズ・タンゴ、第4コーナーでは先行2頭の外から並び掛けると、最後は捻じ伏せるようにヤヒルワに半馬身、リヴィング・ザ・ライフには更に4分の3馬身差を付けて人気に応えました。一旦は2番手に上がったバードアットザワイアは最後は一杯になって5着敗退。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マーチン・ガルシア騎乗のタラズ・タンゴは、4歳でステークスもG戦も初勝利、通算成績を9戦3勝2着3回3着1回としました。元々は一昨年の7月にデル・マーでデビュー勝ちした馬で、去年6月のサマータイム・オークス(GⅡ)で2着、前走1月のサンタ・モニカ・ステークス(GⅡ)は3着で、血統的にもキングズ・ビショップ・ステークス(GⅠ)勝馬のヴィジョネール Visionaire を半兄に、GⅢ馬スカーレット・ストライク Scarlet Strike を半姉に持つ良血。未だ活躍の場は多いと思われる存在です。

 

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