日本フィル・第315回横浜定期演奏会

日本フィルの春シーズン最初、3月定期は東京と同じ広上淳一が古巣を指揮します。確か去年の速報では別の指揮者の名前が挙がっていましたが、何らかの事情で広上に替ったようです。
名曲を二つ並べた、敢えて感想を書くまでもないような以下のプログラム。

チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第7番
 指揮/広上淳一
 ヴァイオリン/南紫音
 コンサートマスター/扇谷泰朋
 フォアシュピーラー/千葉清加
 ソロ・チェロ/菊地知也

チケット完売のため当日券の発売はありません、という告知がありましたが、日フィル横浜では人気女性指揮者を除いては珍しいことでしょう。とは言っても空席もいくつか見られましたから、敬遠した定期会員も少なくなかったと思われます。
いつものようにコンサートに先立って小宮正安氏によるオーケストラ・ガイド。その冒頭で1月にホールの床面が磨き上げられ、音響的にも改善されたという情報が伝えられました。床を磨いた位で音が変わるものなのでしょうか・・・。
小宮氏の解説では、チャイコフスキーの初演が何故ウィーンだったか、初演したアドルフ・ブロツキーがどういう経歴だったのか、という興味深い話が聞けました。

前半のチャイコフスキーでソロを弾いた南紫音は久し振りに聴いた気がします。サントリー芸術財団より貸与されたというストラディヴァリウスが良く響き、これもホールを改装した効果なのでしょう。
ややゆったり目のテンポによる堂々たるチャイコフスキー、この名曲をナマで聴くのも久し振りでしたが、初演時ハンスリックの酷評を嘲笑うかのよう。「悪臭を放つ」というのは終楽章のラプソディックなテーマのことか?
オーケストラも各パートが分離良く聴こえ、これまで混濁し勝ちだったみなとみらいホールは少し聴き易くなったようにも感じます。特に第3楽章冒頭のティンパニ4発の引き締まった音が魅力的。日フィルのメンバー表には載っていないティンパニストですが、最近はこの方が担当することが多いようです。アメリカ人ということは聞いていますが、正式な団員にはならないのでしょうか。

アンコールが始まって直ぐ、P席でお客さんが一人倒れた様子。少しザワつく場面もありましたが、長年の演奏会通いでこうした光景を見るのは二度目のことです。舞台上の演奏者が倒れたケースにも二度遭遇しましたが、やはり気になるもの。
そのアンコールは定番のバッハ、パガニーニ、クライスラーなどではなく、誰の作品か判りませんでしたが、演奏会終了後の掲示でバツェヴィチのポーリッシュ・カプリチオであると判明しました。

グラジーナ・バツェヴィチはポーランドの女流作曲家で元々はヴァイオリンの名手だった人。交通事故を切っ掛けに作曲に専念するようになりましたが、得意のヴァイオリン曲を多数残しています。私はサルビアホールでシマノフスキQが彼女の第4弦楽四重奏曲を聴いたことがありますが、その時に作曲家のプロフィールを詳しく紹介しましたので、当ブログ内で検索して見て下さい。
この日アンコールされた「ポーランド風カプリチオ」というタイトルでは少なくとも2曲は作曲しているようで、今回の物はその第1番。NMLでは3種類の何れも優れた演奏と音質で楽しめますから、是非確認して下さい。楽譜もワンコイン程度で入手できますから、我こそは、と思う方はチャレンジしてみては如何?

後半はベートーヴェンの第7。ほぼ四半世紀前に広上/日フィルが取り上げて圧倒的な印象を残した作品ですが、今回はそれを懐かしく思い出します。
CDにも残された1992年の名演はオーケストラを崩壊寸前にまで追い込んだスリリングなチャレンジでしたが、それから四半世紀、広上淳一は最早巨匠と呼ばれる指揮者。あれは青春期の貴重な記録で、そこに一抹の寂しさを覚えたオールド・ファンもおられたでしょう。
今回は普段やらない第1楽章と第4楽章の提示部繰り返しも全て実行し、やらなかったのは第3楽章トリオの2回目だけだったと思います。極めて落ち着いたテンポで進められますが、時折炸裂するかつての広上を思い出させる刺激的な解釈も。

名曲2曲のプロ、最初見た時は腹八分で少し物足りないのではと危惧しましたが、終わって見れば十分に満腹感の味わえる充実したコンサートでしたね。
食後のデザートは、バッハの管弦楽組曲第3番のアリア。俗にG線上のアリアと呼ばれますが、それはウイルへルミがヴァイオリン・ソロのG線だけにアレンジした楽曲に付けられた名称。組曲のアリア、またはエアという呼称が正しいと思います。

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