第2のアメリカン・フェイロー、か?

3月第3週のアメリカ競馬、3つの競馬場でG戦5鞍が行われ、注目のクラシック候補が出現しました。例によって東から西にレポートして行きましょう。

最初はガルフストリーム・パーク競馬場のインサイド・インフォメーション・ステークス Inside Information S (GⅡ、4歳上牝、7ハロン)。馬場は fast 、10頭が参戦し、前走一般ステークス(マイアミ・ショアーズ・ステークス、6.5ハロン)を5馬身差で圧勝したストーンタスティック Stonetastic が6対5の1番人気。これまで7ハロンに何度か挑戦して勝てませんでしたが、前走の内容から見てここはいけそう、という人気でしょう。
そのストーンタスティック、同じ逃げ馬のフラッターバイ Flatterby が出遅れたこともあってスタートから単騎の逃げ。後続に3馬身差を付けたまま直線に向くと、後方3番手から追い込む6番人気(11対1)のタイガー・ライド Tiger Ride に3馬身4分の3差を付ける堂々の逃げ切り勝ちでした。半馬身差で最後方からブービー人気(40対1)のエンゲイジングリー Engaginglee が追い込んで3着。
ケリー・ブリーン厩舎、パコ・ロペス騎乗のストーンタスティックは、一昨年サラトガのプライオレス・ステークス(GⅢ)に勝って以来のG戦2勝目となります。

先月からG戦がスタートしているオークローン・パーク競馬場、昨日は3鞍のG戦が組まれ、先ず古馬牝馬によるアゼーリ・ステークス Azeri S (GⅡ、4歳上牝、8.5ハロン)。fast の馬場に8頭が出走し、一昨年のBCディスタッフを制したチャンピオンのアンタパブル Untapable がシーズン・デビューを迎えるとあって2対5の1番人気。彼女は去年もこのレースでシーズン・デビューし、2着でした。
最低人気(25対1)のハイ・ダラー・ウーマン Gigh Dollar Woman が逃げ、アンタパブルは外目を通って3番手待機。久し振りの実戦と言うこともあって大本命はやや行きたがる素振りを見せ、第3コーナーでは早くも外から先頭に並び掛ける勢い。直線では外から迫る3番人気(9対1)ストリームライン Streamline を何とか凌ぎましたが、スタートから最後方に抑え、第4コーナーも最後方で回った2番人気(5対1)のコール・パット Call Pat が内を衝いて急襲、ゴール前では首差アンタパブルを捉えての差し切り勝ちを演じました。半馬身差でストリームラインが3着。
ブラッド・コックス厩舎、ジョセフ・ロッコ騎乗のコール・パットは、これで前走バヤコア・ステークス(GⅢ)に続いてG戦2連勝となり、GⅡ戦は初勝利。去年は5着だったオークローンのアップル・ブロッサム(GⅠ)で、GⅠ制覇を目指します。一方2年連続でアゼーリ2着だったアンタパブル、負けたのは残念でしたがローテーションとしては順調で、去年も同じステップで制したアップル・ブロッサム2連覇が目標でしょう。両馬の再対決が楽しみ。

続くレーザーバック・ハンデキャップ Razorback H (GⅢ、4歳上、8.5ハロン)はアゼーリの牡馬版に当たり、来るオークローン・ハンデ(GⅡ)のトライアルともなる一戦。10頭が参戦し、去年の三冠レースに駒を進めたアップスタート Upstart が今期デビューということで5対2の1番人気。
レースは7番人気(7対1)のショットガン・カウボーイ Shotgun Kowboy が逃げ、アップスタートは向正面では7番手の位置。そこから徐々に順位を上げた本命馬、直線では前3頭の外から並び掛けると、4番手から伸びた8番人気(9対1)のドメインズ・ラップ Domain’s Rap に1馬身差を付けて見事人気に応えました。半馬身差でブービー人気(10対1)でアルゼンチン産馬のイドロ・ポルテノ Idolo Porteno が3着。
リチャード・ヴィオレッタ厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のアップスタートは、去年春にホーリー・ブル・ステークス(GⅡ)に勝ってクラシック路線に乗り、ファウンテン・オブ・ユース(GⅡ)は先頭でゴールしながら進路妨害で2着降着。続くフロリダ・ダービー(GⅠ)も2着でケンタッキー・ダービーに挑戦したものの18着に敗れていました。その後もトップ・クラスの馬たちと闘ってきましたが、今回がホーリー・ブル以来の勝鞍でもあります。

オークローンの最後は、ケンタッキー・ダービーのポイント対象(50-20-10-5)でもあるレベル・ステークス Rebel S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。ダービー前7週とあって14頭の多頭数。トライアルのサウスウエスト・ステークス(GⅢ)に勝ったサドンブレイキングニュース Suddenbreakingnews が5対2の1番人気に支持されていましたが、前走サンタ・アニタで5馬身差で初勝利を挙げたばかりの新星キューピッド Cupid も同じオッズで続きます。
スタートでハナを叩いたのは99対1の伏兵スパイクス・シャール Spikes Shirl でしたが、直ぐに芦毛のキューピッドが先頭に立って直線。中程でサウスウエスト2着、3番人気(4対1)のフィットモアに詰め寄られましたが、そこから更にギアを上げて突き放し、フィットモアに1馬身4分の1差を付けて優勝。1馬身4分の3差でクリエイター Creator が3着に入り、人気のサドンブレイキングニュースは5着に終わりました。
マーチン・ガルシアがカリフォルニアから遠征して騎乗したキューピッドは、レベル・ステークスに7年間で6勝となる名伯楽ボブ・バファート師の管理馬。バファート師といえば何と言っても去年のアメリカン・フェイロー American Pharoah で、同馬がこのあとアーカンソー・ステークスを制してから三冠馬になったのはご存知の通り。オーナーはあのクールモア・チームで、陣営は第二のアメリカン・フェイロー出現に期待せざるを得ないでしょう。12月のデビュー戦は4着、1月には2着と初勝利は遅れましたが、コーナーを二度回る距離延長で前走で初勝利。今回のステークス・デビューでダービー50ポイントを獲得し、新たなクラシック候補に名前を連ねてきました。

最後はサンタ・アニタ競馬場から古馬牝馬のGⅠ戦、サンタ・マルガリータ・ステークス Santa Margarita S (GⅠ、4歳上牝、9ハロン)。fast の馬場ながら2頭が取り消して5頭立て、G戦に3勝しているタリス Taris が4対5の1番人気に推されていました。
3番人気(3対1)のペンウィズ Penwith が逃げ、タリスは2番手追走。直線、予定通りタリスが抜け出してゴールを目指しましたが、前半最後方に待機していた2番人気(5対2)のタラス・タンゴ Tara’s Tango が外から追い上げ、本命馬に1馬身差を付けての差し切り勝ち。3番手を進んだ4番人気(8対1)のリヴィング・ザ・ライフ Living The Life が1馬身4分の1差で3着に入りました。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎のタラス・タンゴは、主戦騎手のマーチン・ガルシアがオークローンに出張中(上記キューピッドでレベル制覇)のため、初めてラファエル・ベハラノが騎乗していました。GⅠ戦は初勝利ですが、前走サンタ・マリア・ステークス(GⅡ)に続いてG戦は2連勝。今回は初めてブリンカーを装着していましたが、これはガルシア騎手のアドヴァイスによるものだそうです。通算成績を10戦4勝2着3回3着1回とした4歳馬で、2008年にキングズ・ビショップ・ステークスに勝ってGⅠ馬となったヴィジオネール Visionaire の半妹という血統。

 

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