亡き父に捧ぐ

前日クラシック・トライアルのオン・パレードに沸いたアメリカ、日曜日もその余波の様に3つの競馬場で4鞍のG戦が行われました。

最初にアケダクト競馬場のトップ・フライト・インヴィテーショナル・ハンデキャップ Top Flight Invitational H (GⅢ、4歳上牝、9ハロン)から行きましょう。4月3日に予定されていたものが1週間順延されての開催です。
この日の馬場は fast に回復し、1頭が取り消して4頭立て。3日は7頭立ての予定でしたが、順延により3頭が取り止め、新たに1頭が名乗りを上げましたが、その馬も最終的には取り消してオリジナルの4頭が揃いました。ここまで7戦して3着以下が無いカランバ Carrumba が3対5の断然1番人気。
2番人気(2対1)のメイ・リン Mei Ling が逃げ、これを終始1馬身半差で追い掛けたカランバが直線で外から並び掛けると、あとは2頭のマッチレース。楽をしていた分メイ・リンが渋太く粘りましたが、最後はカランバが半馬身差で捻じ伏せての勝利。3着は15馬身4分の3差も離されて最後方を進んだ3番人気(3対1)のアメリカ America と順当な結果でした。
クロード・マゴーヒー厩舎、ホセ・オルティス騎乗のカランバはこれがステークス初勝利ながら、前走昨年11月のカムリー・ステークス(GⅢ)でフォレヴァー・アンブライドルド Forever Unbridled の頭差2着していた明け4歳。オーナーはフィリップス・ステーブルですが、その総裁だったオグデン・ミルズ・フィップス氏がこの4月6日に75歳で亡くなったばかり。フィップス家と言えば高名な銀行家でもあり、競走馬の生産でも代々名馬を輩出してきた名門。2010年のケンタッキー・ダービーを制したオーブ Orb が記憶に新しい所でしょう。喪が明けて最初の競馬、遺産を受け継いだ現オーナーにとって、カランバは偉大な父へのオマージュとなりました。

続いてはオークローン・パーク競馬場のカウント・フリート・スプリント・ハンデキャップ Count Fleet Sprint H (GⅢ、4歳上、6ハロン)。fast の馬場に9頭が出走、オークローン・パークでは6戦5勝と滅法強いサトル・インディアン Subtle Indian が2対1の1番人気。
典型的な逃げ馬のサトル・インディアンが何時ものようにスタートからハナに立つと、直線でも後続を突き放す快速振りを発揮、5番手から追い込む去年の勝馬で5番人気(9対1)のアルスヴィッド Alsvid に3馬身4分の3差を付ける又しても鮮やかな逃げ切り勝ちです。2馬身4分の1差で2番手を追走した2番人気(5対2)のシンコー・チャーリー Cinco Charlie が3着。
開業して2年目のロベルティーノ・ディオドロ厩舎、ラモン・ヴァスケス騎乗のサトル・インディアンは、これで9戦7勝となる4歳せん馬。去年のガゼボ・ステークス(6ハロン)も、前走ホット・スプリングス・ステークス(6ハロン)も何れもオークローンの一般ステークスで、これがステークス3勝目でG戦は初勝利となります。

日曜日の最後は、この日が開催フィナーレとなるサンタ・アニタ競馬場の2鞍。先ず短距離のラス・シネガス・ステークス Las Cienegas S (芝GⅢ、4歳上牝、6.5ハロン)は芝コースが悪化してダートに変更となり、グレード剥奪が検討されている一戦。一応レポートだけは進めておくと、4頭が回避して7頭立てとなり、同じような変更レースで初勝利を挙げた経験のあるドリーモロジスト Dreamologist が3対5の1番人気。
スタートからハナ争いに加わったドリーモロジスト、3番人気(5対1)のヴェルヴェット・メスキート Velvet Mesquite を競り落とすと、最後方から追い込む5番人気(15対1)のオフ・ザ・ロード Off the Road に1馬身4分の3差を付けて人気に応えました。ハナ差で同じく後方から追い込んだ2番人気(9対2)のファンティコラ Fanticola が3着。
リチャード・マンデラ厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のドリーモロジストは、これで8戦4勝となる4歳馬。去年9月にデル・マーの芝9ハロンで初勝利を挙げ、1月にはサンタ・アニタの下り坂芝短距離のアローワンス戦で2勝目。2月のアローワンス戦では、上記の様に芝コースの予定がダートに変更されての勝利。これがステークスもG戦も初勝利となりました。

サンタ・アニタの締めは、芝のマラソン・レース、サン・ファン・カピストラーノ・ステークス San Juan Capistrano S (芝GⅢ、4歳上、14ハロン)。去年からGⅢに格下げとなり、去年は6月末にサンタ・アニタ春開催の締めくくりとして3歳上で施行されていました。このレースはダートに変更されること無く、3頭が取り消しての7頭立て。10連敗中ながらも前走サン・ルイ・レイ・ステークス(芝GⅡ)で2着と復活の兆しが見られるクイック・カサブランカ Quick Casablanca が9対5の1番人気。
コースをほぼ2周する長距離とあってペースは超スロー。最初の1周目は6番人気(15対1)のカーディアック Cardiac が先頭でスタンド前を通過し、2周目のスタンド前は4番人気(6対1)のケンジズストーム Kenjisstorm がハナに立ってゆっくりとした流れを作ります。この間終始最後方で回っていたクイック・カサブランカが第3コーナー手前で思い切りよくスパートすると、一気に後続を突き放し、同じく後方2番手から追い縋る3番人気(3対1)のジェネロシダード Generosidade に2馬身4分の3差を付けて久々の勝利です。更に3馬身4分の3差で3着も後方3番手の5番人気(14対1)ライフス・ジャーニー Life’s Journey 。
今年83歳、これが3度目のサン・ファン・カピストラーノ制覇となるロナルド・マッカナリー師が管理し、タイラー・ベイズが騎乗したクイック・カサブランカは、2014年のラスト・タイクーン・ステークス(芝GⅢ)以来の勝利で、その年のカピストラーノは2着でした。いずれにしても1・2着は共に南米馬で、アメリカ長距離界のスター不足を象徴するようなグランド・フィナーレでした。

 

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