ナイクィスト、アメリカン・フェイロー超えでダービー戴冠

5月7日、チャーチル・ダウンズ競馬場で第142回ケンタッキー・ダービー Kentucky Derby (GⅠ、3歳、10ハロン)が行われました。馬場は fast 、ポイント上位20頭の中から回避した馬は無く、補欠登録していた2頭が除外。フル・ゲートの20頭立てで行われています。
20頭の内14頭がアメリカのG戦に勝ってきた馬たちで、これにドバイでUAEダービーを勝ったラニ Lani が日本から参戦して新風を吹き込んだ印象。残る5頭も直前のトライアルで2・3着した馬たちばかり、例年以上にレヴェルの高いメンバーが揃ったと言えそうです。
中でもデビューから7連勝、デビュー戦以外は全てG戦に勝ってきたナイクィスト Nyquist の実績が断トツ。この時点で既にGⅠに4勝、最強2歳馬にも選出されており、2対1の1番人気に支持されていました。唯一の不安は10ハロンの距離で、父アンクル・モー Uncle Mo がこの距離をステイ出来なかったことが根拠。しかし陣営はこの死角を否定しています。
続いてはサンタ・アニタ・ダービーを圧勝したエクサジェレイター Exaggerator が5対1で2番人気。これまでナイクィストとは2度対戦し何れも敗れていますが、成長度から本命を負かせるのはこの馬しかない、という評価です。単勝が10倍を切るのはこの2頭だけで、ルイジアナ・ダービー(GⅡ)馬ガン・ランナー Gun Runner が10対1で3番人気。ラニは29対1と伏兵の1頭に過ぎませんでしたが、人気の順位では14番目。アメリカでの実績がゼロであることを考えれば、期待感もかなり高かったと言えそうです。

ナイクィストはスタートも抜群、その気になればハナを切れるほどでしたが、大外20番枠から出た逃げ馬ダンジング・キャンディー Danzing Candy (26対1、12番人気、サン・フェリペ勝馬)が僅かな出遅れを取り戻すべく押して押しての逃げ作戦、ナイクィストは先ず2番手に付けます。向正面で3番手を進んでいたガン・ランナーが早目勝負とばかり2番手に上がり、ナイクィストは冷静に3番手で待機。
直線、逃げ馬がバテてガン・ランナーが先頭に立ちましたが、ナイクィストは外目に持ち出してこれを一気に交わすと、後は横綱相撲。前半10番手以降から末脚勝負に賭けたエクサジェレイターが追い込みましたが、ゴールでは1馬身4分の1差届かず2着。ナイクィストは危なげない勝利と評して良いでしょう。3馬身4分の3差引き離されながらもガン・ランナーは3着、人気上位3頭が順序良く1・2・3着を占めたことが、今年のダービーのレヴェルの高さを証明していると言えそうです。
フロリダ・ダービーでの無敗対決に敗れて4番人気(11対1)に落ちていたモヘイメン Mohaymen も終わって見れば頭差の4着と評価を回復した形。5着には9番人気(24対1)のサドンブレイキングニュース Suddenbreakingnews が入りました。ラニは後方、エクサジェレイターの次辺りを追走していましたが、それでも押し上げての9着。実績、遠距離遠征、アメリカでの初体験、人気などを考慮すれば大健闘と言って良いと思います。

ナイクィストはダグ・オネイル調教師、マリオ・グティエレス騎乗、オーナーはポール・レッダム氏と、2012年にケンタッキー・ダービーを制したアイル・ハヴ・アナザー I’ll Have Another と全く同じコンビ。陣営にとって2度目のダービー制覇となりました。ナイクィストはこれで8戦8勝、G戦7勝、GⅠ戦は早くも5勝目で3歳のチャンピオンに立ったことになります。
去年はアメリカン・フェイロー American Pharoah の三冠で沸いたアメリカ競馬でしたが、アメリカン・フェイローはダービーで6戦5勝、GⅠ戦は4勝目でしたから、ナイクィストはこれを上回っての快挙。2歳チャンピオンがダービーも制したのは2年連続となりました。
また勝時計も2分1秒31で、去年の2分3秒02を2秒近く上回っています。しかし上には上があるもの、私が競馬に首を突っ込み始めたばかりの頃にテレビで見て驚愕した1973年のセクレタリアート Secretariat は、何と1分59秒40でしたから、ナイクィストより更に2秒近く速い勝時計でした。確かこれが今でもダービー・レコードのはずで、未だにアメリカ競馬と言えばセクレタリアートという連想が働いてしまうのは、このためでしょう。

ナイクィストの今後ですが、順当ならプリークネスからベルモントと三冠を目指すことになるでしょう。グティエレス騎手によれば、ナイクィストは正に「あんびりーばぼー」。5馬身差でもハナ差でも勝つことが出来るタイプとのことです。
しかしサラブレッドは機械じゃありませんから、何時かは負かす馬が出てくることでしょう。それが誰で、舞台は何処か、今年のアメリカ競馬はその機会を探す旅になりそうですね。

 

 

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