アーカンソー・ダービーはクリエイター

4月第3週のアメリカ競馬は、ケンタッキー・ダービーへの最終便とでも言うべきアーカンソー・ダービーが行われましたが、その前に3日連続のG戦開催となるキーンランド競馬場から行きましょう。

そのキーンランド競馬場、土曜日のG戦は3鞍で、最初がベン・アリ・ステークス Ben Ali S (GⅢ、4歳上、9ハロン)。fast の馬場に2頭が取り消して8頭立て。G戦は未勝利ながらキーンランドでは2戦無敗、前走ニュー・オーリーンズ・ハンデ(GⅡ)でも3着しているイーグル Eagle がGⅠ馬ノーブル・バード Noble Bird を抑えて2対1の1番人気。
2番人気(3対1)のノーブル・バードが逃げましたが、前半は後方2番手を追走していたイーグルが内ラチ沿いにスルスルと順位を上げ、向正面で2番手に上がると、直線では外に出してノーブル・バードを外から交わし、逃げ馬に1馬身4分の1差を付けて見事人気に応えました。4馬身4分の3差で4番手を進んだ6番人気(15対1)のブレイキング・ラッキー Breaking Lucky が3着。
ネイル・ハワード厩舎、ブライアン・ジョセフ・ヘルナンデス騎乗のイーグルは、これでキーンランドでは3戦3勝(他の2戦は何れもアローワンス戦)。G戦は初勝利ですが、前々走フェア・グラウンズのマインシャフト・ハンデ(GⅢ)では2着していました。通算成績が13戦6勝2着3回3着2回となる4歳牡馬。

続くレキシントン・ステークス Lexington S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)はケンタッキー・ダービーのポイント対象ではありますが、勝馬に加算されるのは10ポイント。ここからダービーという可能性はかなり低いと言わざるを得ません。むしろプリークネスやベルモントを目指す馬の争いでしょうか。10頭立て、ダービーの本命になる筈のナイクィスト Nyquist に4戦連続で2着している1勝馬のスワイプ Swipe が今度こそと言うことで2対1の1番人気。
レースは7番人気(40対1)の伏兵ワン・モア・ラウンド One More Round が逃げ、これを2番手でマークしていた2番人気(本命と同じ2対1)のコレクテッド Collected がすんなり捉えると後は独走、そのままワン・モア・ラウンドに4馬身差を付ける完勝でした。半馬身差の3着には後方3番手から追い込んだ5番人気(8対1)のシンクロニー Synchrony が食い込み、スワイプは6番手を進むも休み明けのためかエンジンが掛からず6着のまま敗退に終わっています。
ボブ・バファート厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のコレクテッドは、これが今期ステークス3勝目。1月にシェイム・ステークス(GⅢ)を制し、本命で臨んだオークローンのサウスウエスト・ステークス(GⅢ)で4着敗退。3月にはサンランド・パークの一般ステークス(フェスティヴァル・オブ・レーシング・ステークス)で再び勝ちパターンを取り戻し、これがG戦2勝目。10ポイントを加算して通算で21ポイントになりましたが、ダービー候補上位20頭には未だ及ばず、陣営はプリークネス・ステークス挑戦を明言しています。

キーンランドの最後は古馬牝馬のGⅠ戦、ジェニー・ワイリー・ステークス Jenny Wiley S (芝GⅠ、4歳上牝、8.5ハロン)。firm の馬場に10頭の登録がありましたが、全日のメイカー・46・マイルに回って見事に牡馬を蹴散らしてGⅠタイトルを獲得したミス・テンプル・シティー Miss Temple City が取り消して9頭立て。こうなれば既にGⅠ戦を3勝しているテーピン Tepin が2対5の圧倒的1番人気に支持されていました。
レースは先ず8番人気(37対1)のイリュミナント Illuminant が逃げ、次いで最低人気(61対1)のシーズ・ノット・ヒア She’s Not Here が入れ替わる流れ。これを3番手で見ていたテーピンが問題にせず捉えると、後方3番手から追い込む3番人気(9対1)のウィーキーラ Wekeela に5馬身の大差を付ける圧勝で4つ目のGⅠタイトルを獲得しました。1馬身半差でイリュミナントが粘っての3着。最後はジョッキーが抑える余裕のテーピンでしたが、勝時計の1分40秒53はコース・レコードという圧倒的な内容です。
マーク・カッセ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のテーピンは去年のファースト・レディー・ステークス(芝GⅠ)、BCマイルとGⅠに連勝。今年に入ってからもサウス・エンデヴァー・ステークス(芝GⅢ)、ヒルスボロー・ステークス(芝GⅡ)と勝ち続け、G戦ばかり5連勝となりました。もちろん目標はBC2連覇にあるでしょう。

次にアーカンソー・ダービーの舞台となるオークローン・パーク競馬場へ。ダービーの前に同じコース・距離で行われるオークローン・ハンデキャップ Oaklawn H (GⅡ、4歳上、9ハロン)から。fast の馬場に8頭が出走し、去年のBCクラシックでアメリカン・フェイロー American Pharoah の2着した実力馬エフィネックス Effinex が8対5の1番人気。
前走サンタ・アニタ・ハンデで本命馬を破った2番人気(2対1)のメラトニン Melatonin が逃げましたが、2番手でがっちりマークしていたエフィネックス、今回は第3コーナーでライヴァルを外から捉えると、直線では渋太く内から差し返すメラトニンに1馬身差を付けて雪辱を果たしました。2馬身4分の3差で最低人気(40対1)のポイント・パイパー Point Piper が3着。
ジェームス・ジャーキンス厩舎、マイク・スミス騎乗の5歳牡馬エフィネックスは、去年のBCで2着したあと11月のクラーク・ハンデ(GⅠ)に優勝。3か月半の休養明けで臨んだ前走サンタ・アニタ・ハンデ(GⅠ)がメラトニンの2着でした。一叩きされたここではGⅠ馬の貫録、5勝目のステークス勝利でもあります。

そして注目のアーカンソー・ダービー Arkansas Derby (GⅠ、3歳、9ハロン)。12頭が出走し、前走のトライアルとなるレベル・ステークス(GⅡ)を制したタピット Tapit 産駒の芦毛馬キューピッド Cupid が4対5の断然1番人気、レベルからアーカンソー・ダービーと連勝しケンタッキーへ、という路線は去年アメリカン・フェイローも歩んだ道です。
レースは6番人気(14対1)のゲティスバーグ Gettysburg が逃げ、キューピッドは2番手から抜け出す構え。しかし何故か大本命の動きは鈍く、替って前半は先頭から15馬身以上も離された最後方で待機していた4番人気(11対1)のクリエイター Creator が一気に前を捉えると、同じく後方から追い込む2番人気(5対1)のサドンブレイキングニュース Suddenbreakingnews に1馬身4分の1差を付ける逆転劇でした。3番人気(6対1)のフィットモア Whitmore が1馬身半差で3着に入り、キューピッドは10着大惨敗。勝ったのは同じ芦毛のタピット産駒でもクリエイターの方でした。
これがアーカンソー・ダービー3勝目となるスティーヴン・アスムッセン厩舎、同初制覇のリカルド・サンタナが騎乗したクリエイターは、前走レベルでも同じく最後方から追い込んで3着だった馬。ダービーにもチャンスが出てきました。一方思わぬ敗戦を喫したキューピッドですが、ポイントは13番目に位置しており、当初の予定通りダービーを目指すとのことでした。

昨日の最後は、ロス・アラミトス競馬場のロサンジェルス・ステークス Los Angeles S (GⅢ、3歳上、5.5ハロン)。去年は5月25日のサンタ・アニタの6ハロンで施行されたもので、ロス・アラミトスの春開催そのものが初めて。ハリウッド競馬場の閉鎖に伴うスケジュール変更は未だ続いています。1頭が取り消して5頭立て。サンタ・アニタ・スプリント・カップなどGⅠ戦に2勝しているワイルド・デュード Wild Dude がイーヴンの1番人気。
先ず先手を取ったのは最低人気(35対1)のサー・キップ Sir Kip でしたが、3番手を進んだ3番人気(5対2)のサン・オノフレ San Onofre がこれを捉えると、4番手から追い上げるワイルド・デュードを1馬身抑えて優勝。半馬身差で最後方から追い込んだ4番人気(6対1)のレイズド・ア・シークレット Raised a Secret が3着でした。
カレン・ヘッドリー厩舎、エドウィン・マルドナード騎乗のサン・オノフレは、今年1月にサンタ・アニタでミッドナイト・リュート・ステークス(GⅢ)に勝ったのがG戦初勝利。そのあと一般ステークス(ドナルド・ヴァルプレド・カリフォルニア・カップ・スプリント)とサン・カルロス・ステークス(GⅡ)で続けて4着でしたが、ここでG戦2勝目を記録しました。去年のこのレースは別のジョッキーで2着しています。記録と言えば騎乗したマルドナードで、このレースは4連覇。しかもハリウッド、サンタ・アニタと3つの異なる競馬場での4連覇という珍記録を達成したことになります。しかし上には上がいるもので、ハリウッド時代にはドン・ピアース騎手が何と5連覇したという記録があり、来年のロサンジェルスは別の興味が沸いてきました。

 

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