ダービー以外の土曜競馬

昨日お知らせしたように、本来なら日曜日の内にアップすべきレポートが一日遅れになってしまいました。冷めたピザ状態ですが、レース数も多いので淡々と進めて行きたいと思います。
ダービー・デイはケンタッキー州チャーチル・ダウンズ競馬場の他に、ニューヨークとカリフォルニアでもG戦が行われましたが、最初に競馬の祭典となったチャーチル・ダウンズのG戦6鞍をレース順に取り上げて行きます。

最初は第6レースのチャーチル・ディスタッフ・ターフ・マイル Churchill Distaff Turf Mile (芝GⅡ、4歳上牝、8ハロン)。芝コースは一日中 firm 、2頭が取り消して7頭立て。芝コースの古馬牝馬では圧倒的なチャンピオンと目されているテーピン Tepin が1対5の断然1番人気で、去年に続き2連覇を目指します。
2番人気(7対2)イザベラ・シングス Isabella Sings の逃げを2番手でピタリとマークしたテーピン、第4コーナーでは早くもこれを捉えるとそのまま後続を寄せ付けず、最後方から追い込む3番人気(12対1)のラインハ・ダ・バテリア Rainha Da Bateria に3馬身半差を付ける圧勝で「芝の女王」の実力を如何なく発揮しました。4分の3馬身差で4番手を進んだ5番人気(18対1)のキャッシュ・コントロール Cash Control が3着。
マーク・カッセ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のテーピンは、これでG戦6連勝。去年のこのレースに勝ってから本格化し、BCマイルでは牡馬を蹴散らした5歳馬。陣営ではロイヤル・アスコット遠征を真剣に検討しているようで、6月14日のオープニング・レースであるクィーン・アン・ステークスで再び牡馬に挑むことになるとのことでした。このレース3勝目となったルパルー騎手は、“私がこれまで騎乗した中で最強馬”と太鼓判を押しています。

第7レースはチャーチル・ダウンズ・ステークス Chrchill Downs S (GⅡ、4歳上、7ハロン)。ダート・コースも一日中 fast で、9頭が出走し、3連勝中のスペイスター Speighster が9対2の1番人気。
4番人気(5対1)のリムジン・リベラル Limousine Liberal が逃げ、スペイスターは3番手追走。2番手でマークしていた6番人気(8対1)のホーリー・ボス Holy Boss が先ず抜け出しましたが、6番手に付けていた7番人気(14対1)の伏兵カタリナ・レッド Catalina Red が馬5頭分の外を通って前2頭を交わすと、5番手から伸びた5番人気(6対1)のカルキュレイター Calculator に1馬身差を付ける波乱。4分の3馬身差で、いつものように最後方から追い込んだ2番人気(7対2)のコービーズ・バック Kobe’s Back が3着、スペイスターは8着大敗に終わりました。
ホルヘ・ナヴァロ厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のカタリナ・レッドは、これで10戦5勝となる4歳牡馬。コーナーを二度回る競馬(サム・F・デイヴィス・ステークス、GⅢ)に一度使ったものの成績が芳しくなく、再び7ハロンに距離を落としてのG戦初勝利となりました。去年はフロリダ産馬限定の一般ステークス(ジャクソン・ベンド・ステークス)、今年も同じくフロリダ産馬のための一般ステークス(タンパ・ベイ・スプリント・ステークス)に勝っており、ステークスは3勝目となります。

次は第8レースのフマーナ・ディスタッフ・ステークス Humana Distaff S (GⅠ、4歳上牝、7ハロン)。ダービーを含めてこの日3鞍組まれているGⅠ戦の第一弾です。1頭が取り消して9頭立て。去年のBCフィリー・アンド・メア・スプリントの勝馬ウェイヴェル・アヴェニュー Wavell Avenue が2対1の1番人気。
2番人気(5対2)のストーンスタティック Stonestatic が逃げ、ウェイヴェル・アヴェニューは後方3番手からの追い込み策。3番手を進んだ3番人気(3対1)のタリス Taris が第4コーナーで前に並び掛けると、直線では後続を引き離す独走で、ストーンスタティックに5馬身4分の3差を付ける圧勝劇でした。2馬身差で4番手追走の4番人気(6対1)エンシャンティング・レディー Enchanting Lady が3着に入り、ウェイヴェル・アヴェニューは追い込んだものの4着まで。
サイモン・キャラガン厩舎、今回が初コンビとなるフラヴィアン・プラット騎乗のタリスは、これがステークス5勝目となる5歳馬。今年1月にはラ・カニャーダ・ステークス(GⅡ)に勝っていましたが、GⅠ戦はこれまで3度挑戦したものの、全て3着以内ながら勝星には恵まれませんでした。4度目の挑戦でのGⅠ戦初勝利となります。7ハロンが最適距離。

第9レースのアメリカン・ターフ・ステークス American Turf S (芝GⅡ、3歳、8.5ハロン)は13頭と多頭数。去年のケンタッキー・ジョッキー・クラブ・ステークス(GⅡ)勝馬で、その後芝に転向しBCジュヴェナイル・ターフで2着したエアフォース Airforce が2対1の1番人気。
そのエアフォースがスタートから先手を取って逃げ切りを図りましたが、4番手を進んだ3番人気(5対1)のビーチ・パトロール Beach Patrol が馬3頭分の外から、6番手で待機していた9番人気(18対1)のキャメロット・キッテン Camelot Kitten が思い切って内ラチ沿いから伸びてのマッチレースに。一旦はビーチ・パトロールが抜けたように見えましたが、最後は内から差し返したキャメロット・キッテンが頭差で叩き合いを制していました。2馬身4分の1馬身差で後方3番手から伸びた6番人気(15対1)のサージカル・ストライク Surgical Strike が3着に食い込み、エアフォースは4着に敗れる大波乱です。
チャド・ブラウン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のキャメロット・キッテンは、馬名から判るようにラムゼー夫妻の自家生産馬。これがステークスそのものも初勝利と言う新星ですが、BCスプリントに勝ったボビーズ・キッテン Bobby’s Kitten の全弟と血統的にも筋が通っており、本格化が期待される1頭になりそうです。

続く第10レースのパット・デイ・マイル Pat Day Mile (GⅢ、3歳、8ハロン)。以前はダービー・トライアルとして知られてきましたが、去年からこのレース名に変更されています。ダービー断念(あるいは距離適性から)組14頭が揃い、一月前にサンタ・アニタでデビュー勝ちしたばかりのアメリカン・フリーダム American Freedom が何故か7対5の1番人気。最初から波乱の芽を含んでいたと言わざるを得ません。
レースは3番人気(7対1)のインペリアル・ヒント Imperial Hint が逃げ、アメリカン・フリーダムは5番手追走。2番手でマークしていた6番人気(13対1)のシャープ・アズテカ Sharp Azteca が第4コーナーで外から逃げ馬を捉えると、最後方から追い上げた5番人気(8対1)のフォレヴァーモ Forevamo に2馬身半差を付けるサプライズ。更に2馬身差で後方3番手から追い込んだ7番人気(14対1)のスター・ヒル Star Hill が3着に入り、アメリカン・フリーダムは6着とまたしても大荒れの結果となりました。
第7レースに続いてホルヘ・ナヴァロ厩舎、こちらはエドガー・ザヤスが騎乗したシャープ・アズテカは、ガルフストリーム・パークで未勝利戦とアローワンス戦に勝ってきた馬で、もちろんステークスもG戦も初勝利。通算成績は5戦3勝2着1回で、その器量については未だ未知数と言えそうです。

そしてダービーの一つ前、第11レースとして行われたのが、もう一鞍のGⅠ戦となるターフ・クラシック・ステークス Turf Classic S (芝GⅠ、4歳上、9ハロン)。1頭が出走を取り消して12頭立て、今期初戦ながら去年の最強芝古馬でBCターフ3着の8歳馬ビッグ・ブルー・キッテン Big Blue Kitten が5対2の1番人気。ユナイテッド・ネイション2回制覇などGⅠ4勝のチャンピオンです。
逃げたのは8番人気(16対1)のミッドナイト・ストーム Midnight Storm 、8番手辺りを追走していた4番人気(6対1)のディヴィジデロ Divisidero が外から伸び、3番追走から早目に内を衝いて先頭に立ったワールド・アプルーヴァル World Approval を首差抑えてのGⅠ戦初制覇を達成しました。1馬身差で10番手辺りを追走していた5番人気(7対1)のスランバー Slumber が3着、人気のビッグ・ブルー・キッテンは休み明けが響いたか、後方から伸びたものの5着に終わっています。レース半ばでアルゼンチン産馬カサグイ Kasagui が落馬し、連鎖のあおりでトリプル・スレット Triple Threat も落馬しましたが、人馬とも無事だったのはなによりでした。
ウイリアム・ブラッドリー厩舎、エドガー・プラード騎乗のディヴィジデロは、去年のダービー開催でアメリカン・ターフ・ステークス(GⅡ)に勝っていた4歳牡馬。今期はカナディアン・ターフ(GⅢ)3着、アップルトン・ステークス(GⅢ)2着と徐々に順位を上げ、絶好のタイミングでGⅠホースになりました。

この後のケンタッキー・ダービーは別稿で扱いましたので、続いてニューヨーク州のベルモント・パーク競馬場の3鞍に行きましょう。アケダクトの春夏開催は今週がスタートです。生憎の雨となった第1週、先ずウェストチェスター・ステークス Westchester S (GⅢ、4歳上、8ハロン)は muddy の馬場に6頭立て。BCダート・マイル3着、パシフィック・クラシック3着、シガー・マイルでも2着とGⅠ戦で好走を続けてきたレッド・ヴァイン Red Vine が4対5の1番人気。
レースは2番人気(9対5)のアンカー・ダウン Anchor Down の逃げで始まり、レッド・ヴァインは4番手から。しかし歴戦の疲れが出たのか本命馬の動きは鈍く、結局はアンカー・ダウンが3番手追走の4番人気(11対1)サムラート Samraat に6馬身4分の3の大差を付けて逃げ切ってしまいました。3馬身4分の1差で後方2番手から追い上げた5番人気(15対1)のマイリュート Mylute が3着に入り、レッド・ヴァインは4着に終わる小頭数の波乱レースとなっています。
トッド・プレッチャー厩舎、ホセ・オルティス騎乗のアンカー・ダウンは、これがG戦初勝利となる5歳牡馬。カーター・ハンデ(GⅠ)4着、ガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)3着(進路妨害で4着降着)などの実績があり、6月11日に行われるメトロポリタン・ハンデでGⅠ初制覇を目指します。

ベルモントの二つ目は、芝のフォート・マーシー・ステークス Fort Marcy S (芝GⅢ、4歳上、9ハロン)。雨に見舞われたものの何とか yielding の馬場状態で行われ、3頭に加えてダート変更時のみの登録1頭が取り消して7頭立て。去年9月にサラトガでバーナード・バルーク・ハンデ(芝GⅡ)に勝って以来の競馬となるイロニコス Ironicus が4対5の1番人気。
6番人気(15対1)のスムース・ダディー Smooth Daddy が逃げましたが、4番手を進んだイロニコスが第4コーナーで前の2頭を外から捉え、スムース・ダディーに1馬身半差を付けて人気に応えました。2馬身4分の1差で5番手を進んだ2番人気(7対2)のメッシ Messi が3着。
クロード・マゴーヒー厩舎、ウェストチェスターに続いてホセ・オルティス騎乗のイロニコスは、去年5月にもディクシー・ステークス(芝GⅡ)に勝っており、G戦は3勝目となる5歳馬。これで11戦連続して掲示板を外していません。

ニューヨークの最後はシープスヘッドベイ・ステークス Sheepshead Bay S (芝GⅡ、4歳上牝、11ハロン)。1頭が取り消して5頭立てとなり、フランスから転厩して来てこれがアメリカデビューとなるシー・カリージ Sea Calisi が3対5の1番人気。フランスではGⅡに勝ち、GⅠ戦でも入着実績のある実力馬です。
4番人気(7対1)のロビヤード Robillard が逃げ、5頭が縦一列の展開となり、シー・カリージは最後方から。各馬の差が徐々に詰まり、一団となって直線。ここでシー・カリージの末脚が一気に爆発すると、最後は鞍上が後ろを見る余裕、馬なりのまま後方2番手から伸びた2番人気(5対2)のチリ産馬グァパーザ Guapaza に2馬身半の大楽勝で米初戦を飾りました。更に2馬身4分の1差で逃げたロビヤードが3着。
チャド・ブラウン厩舎、G戦ハットトリック達成となったホセ・オルティス騎乗のシー・カリージ、実は去年のヨークシャー・オークス(GⅠ)とヴェルメイユ賞(GⅠ)で共に3着、マユレ賞(GⅡ)の勝馬で、この程度のGⅡ戦では格が違うという印象でした。シーズンも深まればGⅠ制覇も時間の問題だと思われますし、距離さえ合えばテーピンとの対戦も夢ではないかもしれません。

最後にサンタ・アニタ競馬場のセニョリータ・ステークス Senorita S (芝GⅢ、3歳牝、8ハロン)を取り上げましょう。去年は6月27日に施行されましたが、今年は一月半ほど繰り上がりました。good の馬場に2頭が取り消して7頭立て。前走プロヴィデンシア・ステークス(芝GⅢ)に勝ったデックド・アウト Decked Out が出走していましたが3番人気(5対2)。8対5の1番人気はアローワンス戦に勝ったばかりのビー・マイン Be Mine でした。
4番人気(8対1)のフォース・ウォッチ Fourth Watch が逃げ、ビー・マインが2番手でマーク。第4コーナーでビー・マインが逃げ馬を捉えて先頭で直線に向きましたが、離された3番手を進んでいた2番人気(5対2)のステイズ・イン・ヴェガス Stays in Vegas が外からこれを交わすと、内から本命馬の差し返しを頭差凌いでの優勝。半馬身差で最後方から5番人気(13対1)のシーザ・ミルキー・ウェイ Sheeza Milky Way が3着に食い込み、デックド・アウトはファンの目が正しかったのか4着に終わりました。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、アレックス・ソリス騎乗のステイズ・イン・ヴェガスは、これがG戦初勝利。2歳時にはダートでも芝でも既にステークスに勝っており、通算成績は7戦5勝2着1回で、勝鞍は全てステークスでのもの。芝で2勝、ダートでも3勝と言うオールマイティーなタイプに成長する1頭でしょう。

 

 

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