ベラード、ロッキンジを制す

今週から来週の初めに掛けてヨーロッパ競馬は連日の様に何処かでG戦が行われていますが、昨日の5月14日はニューバリー競馬場でG戦2鞍が行われました。
去年までニューバリーの第2土曜日と言えば、シーズン最初の古馬マイルGⅠ戦であるロッキンジ・ステークスだけでしたが、今年からは新たにG戦が仲間入りしています。先ずその新顔から紹介しましょう。

そのレース名はアストン・パーク・ステークス Aston Park S (GⅢ、4歳上、1マイル4ハロン5ヤード)として知られてきたもの。正式にはアル・ラヤーン・ステークス Al Rayyan S と言うそうですが、ここでは古くからのレース名を使いましょう。
去年まではリステッド戦に格付けされていた中長距離戦、good 、所により good to soft の馬場に5頭立てで行われました。去年のキングジョージでハナ差2着、二日前にダンテ・ステークスを勝ってダービーに大きく近付いたウイングズ・オブ・デザイア Wings of Desire の全兄イーグル・トップ Eagle Top の実績が断然で、もちろん4対6の圧倒的1番人気。鞍上デットーリも絶好調です。

2番人気(7対2)のカーナチー Carnachy がライアン・ムーアを迎えて逃げ作戦。絶妙なペースで粘りましたが、2番手を進んだ3番人気(8対1)のアイラッド Ayrad が差を詰め、更に3番手から最低人気(14対1)のアストロネラス Astronereus が2頭の間を割って追い上げ、アイラッドを1馬身4分の1差し切っての番狂わせ。1馬身半差でカーナチーが3着に粘り、イーグル・トップは最後方から追うも4着に終わりました。
勝ったアストロネラスは5歳ながら当競馬日記には初登場の馬。管理するのはアマンダ・ペレット夫人、騎乗していたのはパット・ダブスで、G戦では珍しい顔ぶれです。これまではハンデ戦を中心に使われてきた馬で、去年7月にはヨークでハンデのリステッド戦(ジョン・スミス・シルヴァー・カップ)に優勝。続くイボア・ハンデでは19頭立ての16着に大敗して長期休養に入っていました。脚元に不安を抱えている馬だそうで、今回がG戦初挑戦での初勝利。
父はシー・ザ・スターズ Sea the Stars ということで本来ならもっと走って良い血統、陣営はもう少し固い馬場、もう少し長い距離が適していると見ており、目標は夏のグッドウッドで行われる伝統の長距離戦、グッドウッド・カップとのことでした。

そしてロッキンジ・ステークス Lockinge S (GⅠ、4歳上、1マイル)。これからシーズンを通して続くマイルのGⅠ戦線第一弾です。1頭が取り消しましたが、マイル王を目指して12頭が揃い、やや混戦の中から作シーズンをラ・フォレ賞2着で終えたリマートがマイル戦初挑戦ながら3対1の1番人気。去年の2着馬で、前走サンダウン・マイル(GⅡ)で既にシーズンをスタートしているトールモア Toormore が9対2の2番人気で続きます。

そのサンダウン・マイルと同様、ゴドルフィンのペースメーカーを務める最低人気(200対1)のバーチャン Barchan が飛ばしてペースを作り、5ハロンまでの逃げ。役目を終えたペースメーカーを前回同様2番手で追ったトールモアが捉えて先頭に立ちましたが、今回は中団を進んだ8番人気(12対1)でライアン・ムーアが乗ったユーロ・チャーリン Euro Charline が残り2ハロンで抜け出して先頭。ここに最後方から鋭く追い込んできたのが、ゴドルフィンの4番人気(8対1)ベラード Belardo で、瞬発力でユーロ・チャーリンに1馬身差を付けて鮮やかな差し切り勝ちです。
同じく後方から5番人気(8対1)、去年の愛2000ギニー2着以来というエンドレス・ドラマ Endless Drama が首差3着に追い込んで大健闘。リマートも後方を進み、3ハロン地点から進出したものの1馬身4分の1差及ばず4着に終わりました。

ロジャー・ヴァリアン厩舎、アンドレア・アトゼニ騎乗のベラードは、前走サンダウン・マイルでは1番人気に支持されるも、トールモアに漁夫の利を攫われたような形で4着に終わっていた4歳馬。今期はリステッド戦のドンカスター・マイルで初戦を飾っており、これが3戦目でのGⅠ制覇となりました。
実はベラード、2歳時にデューハースト・ステークスにも勝っており、GⅠ戦は2勝目。去年3歳時はやや失望のシーズンに終わり、愛2000ギニーは4着。それからもマイルのGⅠ路線を歩んできましたが、シーズン終戦のクィーン・エリザベスⅡ世ステークスで2着。GⅠタイトル保持者でもありますから種牡馬として引退と言う選択肢もありましたが、もう一花というのが陣営の期待で、ヴァリアン師はゴドルフィンの忍耐に感謝すること頻りでした。
次走はロイヤル・アスコットのクィーン・アン・ステークス(GⅠ)で、オッズは20対1から5対1に急上昇しています。そのあともサセックス、ジャック・ル・マロワ、ムーラン・ド・ロンシャン、QEⅡと熱いマイルGⅠ路線の王道を歩んでいくことでしょう。

 

 

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