ドイツから来た強いヤツ

今週のアメリカ競馬はダービーとプリークネス・ステークスの合間、それでもニューヨークとカリフォルニアではG戦が合計5鞍行われています。
クラシックの谷間と言うことで主力は古馬戦線ですが、ベルモントのピーター・パンは三冠最後のベルモント・ステークスに繋がるレースで、見逃すわけにはいきません。

先ずベルモント・パーク競馬場からは4鞍のG戦、最初のラフィアン・ハンデキャップ Ruffian H (GⅡ、4歳上牝、8ハロン)。fast の馬場に6頭立て。今期デビューをトップ・フライト・ハンデ(GⅢ)勝利で飾ったカランバ Carrumba がイーヴンの1番人気。
5番人気(12対1)のカラミティー・ケイト Calamity Kate が逃げ、カランバは3番手から。逃げ馬が後退し、2番手を進んだ3番人気(4対1)のスペリング・アゲイン Spelling Again とカランバが進出、更に2頭の外から4番手を進んでいた2番人気(5対2)のカヴォーティング Cavorting が追い上げて3頭が並んで直線。しかしそこからはカヴォーティングの伸び脚が群を抜き、カランバに5馬身差を付ける圧勝でした。2馬身4分の1差でスペリング・アゲインが3着。
キアラン・マクローリン厩舎、今回が初コンビとなるハヴィエル・カステラノ騎乗のカヴォーティングは、去年の6月から9月にかけて一般ステークス(ジャージー・ガール・ステークス)、テスト・ステークス(GⅠ)、プライオレス・ステークス(GⅡ)と3連勝したものの、その後はBCフィリー・アンド・メア・スプリント4着、ラ・ブレア・ステークス(GⅠ)3着、そして前走ディスタッフ・ハンデ(GⅢ)2着と3連敗。それでも大崩はなく、G戦3勝目を楽勝してGⅠ馬の貫録を示しました。

続いて、同じ古馬牝馬でも芝戦のボーゲイ・ステークス Beaugay S (芝GⅢ、4歳上牝、8.5ハロン)。firm の馬場に8頭が出走し、去年10月のファースト・レディー・ステークス(芝GⅠ)で3着したマイ・ミス・ソフィア My Miss Sophia が9対5の1番人気。
そのマイ・ミス・ソフィアが逃げましたが、前半3番手から徐々に順位を下げながら5番手のインコースで我慢していた6番人気(9対1)のストライク・チャーマー Strike Charmer が直線では外に出し、マイ・ミス・ソフィアと2番手を追走していた5番人気(7対1)のタピトリー Tapitry を外から交わし、タピトリーに2馬身4分の1差を付けるサプライズとなりました。半馬身差で不利(チェックされ、落鉄)があって最後方からの競馬となった僅差2番人気(9対5)のレセプタ Recepta が3着に入り、マイ・ミス・ソフィアは3馬身遅れての4着。
マーク・ヘニング厩舎、イラッド・オルティス騎乗のストライク・チャーマーは、4歳時にカーディナル・ハンデ(芝GⅢ)に勝って以来のステークス優勝。6歳の今年1月にガルフストリームのマーシュアズ・リヴァー・ステークス(芝GⅢ)で着外になったあと3か月の休養を取ったのが奏功したようで、前走アケダクトの芝一般ステークス(プレンティ―・オブ・グレース・ステークス)で2着し、ここで見事に弾けました。

アケダクトこの日三つ目のG戦は、ダービーとは別路線からベルモント・ステークスを目指す馬たちの試金石となるピーター・パン・ステークス Peter Pan S (GⅡ、3歳、9ハロン)。8頭が出走し、泥んこ馬場のベイ・ショア・ステークス(GⅢ)を僅か2戦目で制したユニファイド Unified が1対2の断然1番人気。
7番人気(70対1)の伏兵シングルトン Singleton の逃げを好スタートから下げて2番手で追走したユニファイド、第3~4コーナーの半ばで逃げ馬を捉えると、直線では一旦は3馬身のリードを取って楽勝かに見えました。しかし前半は後方2番手を追走していた5番人気(12対1)のガヴァナー・マリブー Governor Malibu が内ラチ沿いから最後は外に出して追い上げ、最後は本命馬に4分の3馬身差まで詰め寄っていました。2馬身半差で6番手から伸びた2番人気(5対1)のワイルド・アバウト・デブ Wild About Deb が3着。
ジェームス・ジャーキンス厩舎、ホセ・オルティス騎乗のユニファイドは3戦戦3勝となりましたが、ベイ・ショアの時にも指摘したように距離が課題になりそう。ベイ・ショアの7ハロンから今回は一気に9ハロンに伸びた距離でも勝ちましたが、最後は詰め寄られてのもの。1マイル半のベルモント・ステークスはこの馬の守備範囲を超えるという印象でした。

最後は今週唯一のGⅠ戦、マンノ・ウォー・ステークス Man o’War S (芝GⅠ、4歳上、11ハロン)。9頭が出走し、去年のアーリントン・ミリオン(芝GⅠ)6着からアメリカに転厩し、前走パン・アメリカン・ハンデ(芝GⅡ)で頭差2着したドイツ馬ウェイク・フォレスト Wake Forest が2対1の1番人気。その時勝ったカイグン Kaigun の4対1(2番人気)を抑えての人気でした。
4番人気(9対2)のゴー・アラウンド Go Around が逃げ、ウェイク・フォレストは後方2番手から末脚に賭ける展開。2番手を進んだ8番人気(18対1)のマネー・マルチプライアー Money Multiplier が抜け出しましたが、ウェイク・フォレストは前走同様内ラチ沿いを衝きましたが前が開かず、思い切って前の4頭の外に持ち出してから追い出すと切れ味は圧巻。間に合わないと見えた位置から一気にマネー・マルチプライアーを4分の3馬身差し切って人気に応えました。更に1馬身差で3番手を進んだ6番人気(12対1)のキャントヘルプビリーヴィング Can’thelpbelieving が3着に入り、4番手を進んだカイグンは6着敗退。ブラウン厩舎のワン・ツー・フィニッシュ。
チャド・ブラウン厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のウェイク・フォレストは、これがアメリカでの初勝利。GⅠ勝利も初となる6歳馬ですが、ドイツ時代はアンドレアス・ヴォーラー厩舎でGⅢに2勝。去年のハンブルグ・トロフィー(GⅢ)に勝った後アーリントンに遠征して3着。これを機にブラウン厩舎に転じ、新環境で2戦目での快勝でした。前走も最後方から内を衝いての差し競馬、今回の内容から見ても秋の芝コースGⅠ戦で有力な1頭になることは間違いなさそうです。牝系も近親にドイツ・ダービー馬が3頭、セントレジャー馬も1頭出ているドイツの長距離クラシック系「W」。

最後にサンタ・アニタ競馬場のラザロ・バレラ・ステークス Lazaro Barrera S (GⅢ、3歳、7ハロン)。3歳クラシック戦線の一つですが、短距離戦ということもあって三冠レースとは縁の無い一戦です。fast の馬場に7頭立て。内5頭がダービーへのトライアルを経験してきた馬たちで、サンタ・アニタ・ダービー(GⅠ)で6着だったデンマンズ・コール Denman’s Call が8対5の1番人気。
外枠から出た2番人気(3対1)のアイ・ウィル・スコア I Will Score がジワッと先頭に立ち、直線でも3番手追走し外から追い込む3番人気(7対2)のムラゼク Mrazek を首差抑えての逃げ切り勝ち。3馬身4分の1差で2番手を追走していた4番人気(7対2)のスモーキー・イメージ Smokey Image が3着に入り、デンマンズ・コールは後方3番手のまま5着に終わりました。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マーチン・ガルシア騎乗のアイ・ウィル・スコアは、2月にロバート・B・ルイス・ステークス(GⅢ、8.5ハロン)で3着した時にはダービーに向かう1頭と考えられていましたが、次のサン・フェリペ・ステークス(GⅡ)で6着に敗れて路線を変更。4月15日にオークローン・パークで6ハロンの一般ステークス(バチェラー・ステークス)で2着となり、ここで7ハロンが最適距離であることを見出したようです。

 

 

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