密かな盛り上がり、3歳短距離路線

オークス/ダービーのエプサム開催を1週間後に控えた英国競馬、5月28日の土曜日はヘイドック・パーク競馬場のG戦3鞍が行われましたが、クラシックとは別路線の興味深いレースが続いています。
この日は good の馬場、先ず古馬牝馬の長距離戦ピナクル・ステークス Pinnacle S (GⅢ、4歳上牝、1マイル3ハロン200ヤード)は2頭が取り消して7頭立て。未だG戦勝は無いものの、去年のブリティッシュ・チャンピオンズ・フィリーズ・アンド・メアーズ(GⅠ)で2着したジャーニー Journey がイーヴンの1番人気。

ジョイント5番人気(11対1)スイーピング・アップ Sweeping Up の逃げを2番手で追走したジャーニー、残り1ハロンでこれを捉えると、力で捻じ伏せるようにスイーピング・アップに1馬身4分の1差を付けて人気に応えました。後方2頭の中から3番人気(11対2)のミス・マージュリー Miss Marjurie が伸びて3馬身4分の1差の3着。
これがG戦初勝利となったジャーニーは、ジョン・ゴスデン厩舎、フランキー・デットーリ騎乗の4歳馬。去年はリステッド戦を連勝していきなりGⅠ戦に挑んでの2着。今期はヨークのダンテ開催で行われたミドルトン・ステークス(GⅡ)から始動して3着、叩かれて気配を増したここでは当然のパフォーマンスでしょう。デットーリ騎手もトレードマークのフライング・ディスマウントで得意のパフォーマンスを披露しました。
ロイヤル・アスコットではハードウィック・ステークス(GⅡ)で牡馬に挑む予定で、オッズはレース前の14対1から12対1に上昇しています。

続いては、古馬の短距離とマイルの中間に位置するジョン・オブ・ゴーント・ステークス John of Gaunt S (GⅢ、4歳上、7ハロン)。ヨーロッパでは7ハロンという距離は決して多くなく、この距離を得意にする馬にとっては貴重な機会です。2頭の取り消しがありましたが9頭が揃い、前走レスターのリステッド戦に勝って順調なホーム・オブ・ザ・ブレイヴ Home Of The Brave が9対4の1番人気。
そのホーム・オブ・ザ・ブレイヴが何時もの様にスタートから飛ばし、4番手から伸びたジョイント3番人気(6対1)コンヴェイ Convey との追い比べを首差で制しての逃げ切り勝ち。2番手を進んだ2番人気(11対4)のソー・ビラヴド So Beloved が粘って2馬身差の3着。

ヒューゴー・パーマー厩舎、ジェームス・ドイル騎乗のホーム・オブ・ザ・ブレイヴは、去年7月にカラーのミンストレル・ステークス(GⅢ)も同じように逃げ切っており、これが二つ目のGⅢ戦勝利となります。パーマー師は短距離向きの同馬を早々とクラシック路線からは撤退させ、新設短距離GⅠ戦のコモンウェルス・カップに切り替えて6着。前走リステッド戦に勝った直後にゴドルフィンが購入し、今回は新しい勝負服での初戦でした。
上記の様にヨーロッパではこの馬向きのレースが少ないため、アメリカでいくつかのG戦を使ってからBCに挑む計画とのこと。秋にはフランスで7ハロンのGⅠ戦フォレ賞も行われますが、10月のフランスは馬場が重くなることが多く、固い馬場を得意とする同馬は夏の間に稼ごう、という腹もあるようです。

ヘイドックの最後は、去年からいきなりGⅡに格上げされたサンディー・レーン・ステークス Sandy Lane S (GⅡ、3歳、6ハロン)。もちろんロイヤル・アスコットのコモンウェルス・カップ(GⅠ)を目指す馬にとって格好のトライアルで、1頭が取り消しての7頭立て。3歳馬の短距離G戦を勝って連勝中の2頭が参戦し、中でも前走アスコットでパヴィリオン・ステークス(GⅢ)に勝って5連勝中のギフテッド・マスター Gifted Master が5対4の1番人気。前走フランスに遠征してシジー賞(GⅢ)を制し3連勝中のクワイエット・リフレクション Quiet Reflection は牝馬と言うこともあってかジョイント4番人気(7対1)に過ぎません。
レースは、本命ギフテッド・マスターがスピードに物を言わせてスタートから主導権を奪っての逃げ作戦。しかし後方に待機していたクワイエット・リフレクションが強烈な差し脚を披露し、同じく後方から追い上げた同じ4番人気のドンジュアン・トリオンファント Donjuan Triumphant に3馬身4分の3差を付ける鮮やかな差し切り勝ちでした。頭差でギフテッド・マスターは3着。

カール・バーク厩舎、ダギー・コステロ騎乗のクワイエット・リフレクションは、昨シーズンをコーンウォリス・ステークス(GⅢ)優勝で締め括り、今期初戦が上記シジー賞。そのレポートでも紹介しましたが、鞍上コステロがゴール板を間違えたために頭差まで詰め寄られる辛勝だったもの。今回はそうしたアクシデントも無く、本来の切れ味を余すところなく発揮しました。
このレースは1985年に創設され、今年が32回目。G戦としては2年目ですが、過去には牝馬の活躍が続く伝統があり、1986年から1991年には牝馬が6連覇。更に1994年から1996年と、2009年から2011年にかけても二度に亘って牝馬が3連覇したという歴史もあります。短距離では所謂セックス・アローワンス(性差)は余り意味を持たないような気がします。

日本では3歳スプリント路線は全く確立していませんが、ヨーロッパでは去年から見直され、アスコットのコモンウェルス・カップが頂点。これまでトライアルとしてイギリスでは4月のアスコットでパヴィリオン・ステークスが行われ、フランスでは4月シャンティーのシジー賞、5月メゾン=ラフィットではテクサニータ賞が行われてきました。
明日はアイルランドのナース競馬場でラッケン・ステークス(GⅢ)が行われ、トライアルが出揃います。一見地味な3歳短距離路線ですが、昨日のヘイドックでは2強対決が実現した印象。もちろんクラシック路線から短距離に転向する馬たちも加え(例えばエアー・フォース・ブルー Air Force Blue)、3歳スプリンターは密かな盛り上がりを見せています。

 

 

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