日本フィル・第681回東京定期演奏会

6月の日フィル東京定期は、本来の会員である金曜日(6月10日)が他のコンサートとバッティングしてしまい、振替の利くオケの方を土曜日に振り替えて聴いてきました。金曜の席は1階の中央ですが、回ってきたのは2階のLBブロック。いつもとは違った印象の日フィルを楽しんできました。

シューマン/「マンフレッド」序曲
ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲
     ~休憩~
ブラームス/交響曲第2番
 指揮/小泉和裕
 コンサートマスター/扇谷泰朋
 フォアシュピーラー/九鬼明子
 ソロ・チェロ/菊地知也

土曜日はプレトークも行われるということで、若干早目にホール入り。女性音楽評論家・萩谷由喜子氏の案内を聞いてからのコンサートです。
日フィルは以前、マエストロ・サロンという他では聞けないユニークな企画がありましたが、それを引き継いだというプレトークは担当の萩谷氏には申し訳ありませんが、演奏家による直接の意見が聞けるわけではなく、今回の様な名曲プログラムでは然程新鮮味は感じられませんでした。

敢えて名曲プログラムと書きましたが、日本フィルではドイツ・ロマン派作品が並ぶ今定期は却って珍しいかも知れません。そもそも日フィルの設立の目的の一つはN響のドイツ路線とは異なる音楽世界を紹介するという点にあったのですから、伝統的にドイツ音楽は敬遠されてきたという経緯もあります。
現首席のラザレフはロシア音楽が中心ですが、次期首席のインキネンはドイツ・ロマン派にも意欲を燃やしており、来期以降はもっと頻繁にドイツ作品が登場してくる筈。
今回の小泉和裕は、その予告編か。彼が前回の東京定期で振ったベートーヴェンの交響曲2曲が立派な出来栄えだっただけに、今回も日フィルから別の側面を引き出してくれることが期待されようというもの。

いつもの席とは異なるので余り立ち入りませんが、予想通り小泉マエストロ(この称号を使っても良い年代になりました)のシューマン、ブラームスは手応え充分。カラヤンの薫陶を受けた指揮法で、日フィルからも鬱蒼たる森の響きを引き出すことに成功しました。両手を滅多に肩から上には揚げない振り方を見ていると、何時の間にかベルリン・フィルを聴いているような錯覚に陥るのが不思議。
今回は協奏曲が1曲も無く、指揮者の個性だけで勝負するような名曲ばかり。3曲とも伝統的な16型、弦楽器の配置もカラヤン時代のベルリンと同じ並びで(指揮者の左手に両ヴァイオリン、右手は中央にチェロ、外側にヴィオラ)で、真にオーソドックスな演奏に終始しました。私の様なロートルには耳にも目にも心地良い2時間です。

管楽器はスコア通り木管は2管、交響曲でのホルンも指定通りの4本で、アシスタントが一人。日フィルの誇る首席奏者が勢ぞろいし、金管群もホルンにはかつての首席だった日橋をゲストに迎え、トランペットのオットー、トロンボーンの藤原が揃い踏み。日フィル最近の好調ぶりを再確認しました。
2階席で聴いていると奏者個々の表情や楽器の吹分けなどが手に取るように判り、音がブレンドされた状態で2階に立ち上ってくるので、これはこれで耳に快いサウンドが楽しめました。譬えは逆ですが、2階最上席で聴いてる響きを再現することを理想とするドイツ・グラモフォンの録音みたい。

何故か今秋の東京定期は他とバッティングする公演が多く、土曜日に振り替えざるを得ない回が増えそう。どの席が回ってくるかは事務局次第ですが、2階で聴くのもまた良し、という感想を持ちました。
隣で聴いて(見て)いた家内も“初めて奏者と楽器が一致した”と言っていましたから、時々は席を替えてみるのも良いことなんでしょう。

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