2016ロイヤル・アスコット3日目

エイシンヒカリの敗退で日本のアスコットへの関心は一斉に退いてしまいましたが、アスコットは未だ開催半ば。その後の大レースにも関心を残している人は、是非こちらをチェックして下さい。
ということで6月16日、アスコット競馬場の王室開催3日目も前2日間と同じ soft の馬場、前半4レースがG戦で、残り2鞍は共にハンデ戦です。

3日目はノーフォーク・ステークス Norfolk S (GⅡ、2歳、5ハロン)からスタート。11頭が参戦し、無敗馬は5頭。全てデビュー勝ちしただけの1戦1勝です。3対1の1番人気に支持されたグローバル・アプローズ Global Applause は3戦2勝、2戦目はニューバリー競馬場の条件戦での2着でしたが、この時勝ったメーマス Mehmas が初日のコヴェントリー・ステークス(GⅡ)で2着していることから、G戦に勝つ器と期待されていました。
ジョイント8番人気(20対1)の無敗馬プラータ・オ・プローモ Plata O Plomo が逃げましたが、スタンド側を先行していたジョイント5番人気(8対1)のプリンス・オブ・リール Prince Of Lir が残り150ヤードで先頭に立ち、先にスパートして一旦はハナに立っていたジョイント8番人気のザ・ラスト・ライオン The Last Lion に半馬身差を付けて優勝。首差で後方から追い込んだ2番人気(7対2)のシルヴァー・ライン Silver Line が3着に入り、人気のグローバル・アプローズは先行グループに付けるも、ワンペースのまま5着に終わっています。

勝ったプリンス・オブ・リールは、5月28日にビヴァリーでのデビュー戦(5ハロン)に勝ったばかり。その時の2着も今日と同じザ・ラスト・ライオン(1馬身4分の1差)で、2戦続けて同じ結果になりました。管理するロバート・カウエル師はロイヤル・アスコット3勝目、騎乗したルーク・モリス騎手はこれがロイヤル・アスコット初勝利となります。
カウエル師の談では、力の要る5ハロンがベストな馬と言うことで、クラシックは考えず今後も5ハロンに徹して行くとのこと。夏のグッドウッドは馬場が乾いて固くなることが例年の傾向なので、夏は一息入れて秋競馬を目指すとのことでした。

第2レースはターセンテナリー・ステークス Tercentenary S (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン)。9頭が出走し、前走ニューマーケットのリステッド戦に勝ったアブドン Abdon と、同じく前走グッドウッドのリステッド戦で2着したプライズ・マネー Prize Money が並んで4対1の1番人気。何が勝ってもG戦は初勝利と言う遅れて来た馬たちの競馬になりそう。
ゴドルフィンのペースメーカーを務める最低人気(33対1)のレース・デイ Race Day が強いペースで飛ばし、スタミナ勝負に持ち込みます。これに利を得て2番手を進んだゴドルフィンのプライズ・マネーが一旦は先頭に立ちましたが、3番手を進んでいたこれもゴドルフィンのジョイント4番人気(11対2)のホールビル Hawkbill が残り1ハロンで寮馬を捉え、プライズ・マネーに1馬身4分の1差を付けて快勝。ペースメーカーのレース・デイも良く粘ってゴドルフィンのワン・ツー・スリーかと思われましたが、後方3番手から3番人気(9対2)のロング・アイランド・サウンド Long Islad Sound が追い込んで2馬身4分の3差の3着に食い込みました。

勝ったホークビルは、これがロイヤル・アスコット2勝目となるチャーリー・アップルビー厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗。2歳シーズンを一般戦3連勝で終え、今期初戦の前走ニューマーケットのリステッド戦(11ハロン)にも勝っており、これで5連勝。
この勢いを駆って愛ダービー、という選択肢もありますが、陣営は来年の本格化に向けてジックリ成長を待つ意向。いずれにしても1マイル半の距離がベストなタイプと言えそうです。

続いては、アスコット・オークスにも擬えられるリブルスデール・ステークス Ribblesdale S (GⅡ、3歳牝、1マイル4ハロン)。14頭と頭数が揃い、当日の朝まではオークス2着のアーキテクチャー Architecture が本命に推されていましたが、レース直前にオブライエン/ムーア・コンビのイーヴン・ソング Even Song の人気が急上昇し、結局はこの馬が15対8の1番人気。アーキテクチャーは3対1のまま2番人気でスタートを迎えました。
ジョイント8番人気(25対1)のシャル・ウィー Shall We が逃げ、ペースをスローに落します。1・2番人気共に中団で並ぶようにレースを進めましたが、馬群を割って巧みに進出し、残り1ハロンで先頭に立ったのはイーヴン・ソング。3番手を進んだジョイント11番人気(33対1)で未勝利のアジマン・プリンセス Ajman Princess に1馬身半差を付け、見事人気に応えました。1馬身差で4番人気(8対1)のザ・ブラック・プリンセス The Black Princess が後方から追い込んで3着に入りましたが、アーキテクチャーは8着敗退。

イーヴン・ソングは、管理するエイダン・オブライエン師にとってロイヤル・アスコット50勝目と区切りとなる勝利。前走ニューマーケットのリステッド戦(プリティー・ポリー・ステークス)は3着でしたが、これによりオークスを回避してこちらに回ることを決断。狙って制したリブルスデールと言えそうです。人気急上昇もその点が買われたからに違いありません。
順当であれば、愛オークスでも人気を集める1頭になるでしょう。オークス馬マインディング Minding を基準にアーキテクチャーの能力を測り、イーヴン・ソングを仕上げる辺りは、オブライエン師の独壇場かも。

それはこの日のメイン、ゴールド・カップ Gold Cup S (GⅠ、4歳上、2マイル4ハロン)でも十二分に発揮されました。長距離マラソン戦にも拘わらず、1頭の取り消しで17頭立て。最初からオリンピック精神で参加するだけ、という馬もかなり見受けられました。そんな中で10対11の2倍を切る1番人気に支持されたのは、去年の愛セントレジャーを圧勝したオブライエン厩舎のオーダー・オブ・セント・ジョージ Order Of St George 。今期もレパーズタウンでの試走(マグラス・メモリアル、リステッド戦)を楽勝して臨戦態勢に入っています。
それでも17頭の多頭数は、馬群を捌くのに騎手の力量が試されるレース。ジョイント8番人気(33対1)のミル・エ・ミル Mille Et Mille の一時は後続を10馬身も引き離す大逃げにも慌てず騒がず、中団を進んだライアン・ムーアのオーダー・オブ・セント・ジョージが冷静に馬群を捌いて残り2ハロンで先頭に立つと、直ぐに安全圏に突入。3番手を粘った5番人気(10対1)のミッズー Mizzou に3馬身差を付ける圧勝で期待に応えました。2馬身4分の1差でジョイント10番人気(40対1)のシェイクザイードロード Sheikhzayedroad が後方から追い込んで3着。

オブライエン師にゴールド・カップ7勝目をプレゼントしたオーダー・オブ・セント・ジョージは単なるステイヤーではなく、1マイル半でも勝負になるスピードも併せ持つ馬。今年は愛セントレジャー連覇という目標もありますが、凱旋門賞制覇の可能性も残しています。
オーナーのクールモア・グループは、キングジョージ参戦の意向を問われ、“それも面白い案だね、考えてみましょう”とのこと。重馬場のキングジョージ、凱旋門賞と言うことになれば、伏兵としての存在感は充分。

最後に残り2レースを簡単に結果だけ。
第5レースは3歳馬の1マイル・ハンデ戦、ブリタニア・ステークス。28頭立てで、勝ったのは13対2の3番人気だったデフロックド Defrocked 。ジェイミー・スペンサーが騎乗していました。
第6レースも3歳馬のみによるハンデ戦で、こちらは1マイル4ハロンのキング・ジョージ5世ステークス。奇妙なことにこちらも13対2の3番人気、プリミティヴォ Primitivo が勝利しています。ジョッキーは若手中の若手。

以上、3日目はライアン・ムーアがG戦ダブルを達成し、開催リーディング・ジョッキー争いでデットーリに並びました。残り2日間、馬はもちろん、二人のタイトル争いからも目が離せなくなってきました。熱血漢フランキーか、何処までも冷静なムーアか。

 

 

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