クーシストって、何?
8月5日から7日までのプロムスは、ある意味で全て関連性があるようです。チャイコフスキーの協奏曲、ストラヴィンスキーの三大バレエ、女流作曲家の新曲、ユース・オーケストラの演奏といった共通点ですね。
そのトップバッターが、5日夜のBBCスコティッシュ管のコンサート。指揮はデンマーク生まれのダウスガードです。
8月5日 ≪Prom 27≫
ヘレン・グライム Helen Grime /Two Eardley Pictures – 1: Catterline in Winter(BBC委嘱作品、世界初演)
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
~休憩~
ストラヴィンスキー/ペトルーシュカ
BBCスコティッシュ交響楽団 BBC Scottish Symphony Orchestra
指揮/トーマス・ダウスガード Thomas Dausgaard
ヴァイオリン/ペッカ・クーシスト Pekka Kuusisto
最初は、今年のBBC委嘱作品の世界初演。ヘレン・グライムはプロムスの常連で、私がネット中継を聴き始めてからだけでも、2012年に「夜の歌」、2014年には「ニア・ミッドナイト」が演奏されており、隔年での登場と言うことになります。
2014年の時には彼女のホームページ、全曲が閲覧できるスコアのページをリンクしておきました。今回も同じで、ミュージック・セールス・グループのホームページで見ることが出来るプロフィールがこれ。1981年生まれ、イギリスの女性作曲家です。
http://www.musicsalesclassical.com/composer/short-bio/3953
このページにある作品 Works をクリックし、管弦楽 Orchestra を選べば今回の委嘱作品が出てきます。更にこれをクリックすればスコアも全曲閲覧出来る、というのも一昨年のニア・ミッドナイトと同じ。画面が大型のパソコンを持っている人は、見ながら聴くことも可能です。
今回の新曲は「アードリーの2枚の絵」とでも訳せるタイトルで、この日演奏されたのは第1曲の「冬のキャタライン」。因みに第2曲の「雪」は、8月7日に行われるプロム30で初演されることになっています。
作品のタイトルであるジョーン・アードレイ Joan Eardley (1921-63) は英国の女流画家で、彼女のスコットランド北東部の風景を題材にした絵画にインスピレーションを得た作品。
ネットで検索すると「キャッターリン」と表記されているものもありますが、この日コメンテイターの発音では「キャタライン」と読んでいました。キャタラインとは地名で、その絵画そのものはブリティッシュ・ミュージアムのサイトで見ることが出来ます。
http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&gdr=1&p=Joan+Eardley+Catterline+in+Winter
演奏時間は9分弱、この世界初演の後、9月にはグラスゴウでスコットランド初演が予定されています。
これに続いて演奏されたチャイコフスキーが曲者。クーシストというヴァイオリニストは名前は知っていましたが、多分演奏を聴くのは初めて。
何とも冷たいというか、醒めた演奏で、第1楽章のカデンツァ、特にフラジォレットやグリッサンドの個所で客席から笑い声が起きるのは何としたことでしょう。何処かパロディックな臭いのする演奏で、チャイコフスキーをバカにしているような姿勢が聴き取れます。
第1楽章が終わると盛大に歓声と拍手が起き、まるで全曲が終了したかのよう。素人受けのする弾き方で、ロンドンではこれが好みなんでしょうか。
アンコールもありましたが、演奏と言うよりは弾きながら歌うエンターテインメントで、客席を笑わせながら民謡らしき一節を披露。聴衆にもフレーズを歌うように要請し“そこはもっと大きく”などと語りかけます。
チャイコフスキーと変なアンコールを聴かされた私としては、クーシストというヴァイオリニストは芸術家と言うより、「芸人」と呼んだ方が良さそう。
最後に演奏されたペトルーシュカは1947年版。一日置いた7日には「火の鳥」と「春の祭典」が2つとも演奏され、ストラヴィンスキーの三大バレエが完結します。
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