ロイヤル・アルバート・ホールで連荘(2)
7月の最終日、日曜日のプロムスは昼の部と夜の部が共に面白かったので梯子、というか同じホールだったので連荘(れんちゃん)として纏めて紹介しましたが、8月第1週の日曜日も同じスタイル。昼も夜も聴かなきゃ、というプログラムだったので、今回も連荘としました。
と言っても実際にロンドンに出掛けている訳ではないので、あくまでも仮想空間です。
先ず昼は、前日のユース・オケ公演に続いて今度はスコットランドのユース・オケ。スコットランドが将来どのような国体を選ぶかは不透明ですが、ここは一つ強い団結力を聴こうじゃありませんか。
8月7日 ≪Prom 30≫
ヘレン・グライム Helen Grime/Two Eardley Pictures – 2: Snow(BBC委嘱作品、世界初演)
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第2番
~休憩~
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」
スコットランド・ナショナル・ユース管弦楽団 National Youth Orchestra of Scotland
指揮/イラン・ヴォルコフ Ilan Volkov
ピアノ/パーヴェル・コレスニコフ Pavel Kolesnikov
プログラムを見て直ぐに気付かれると思いますが、冒頭のグライム作品は、前々回BBCスコティッシュ、つまり親分に相当するプロたちが世界初演した新作の第2部でもあります。
スコットランドの風景を描いた絵画がテーマですから、良く考えられた構成と言えましょう。
第1曲「冬のキャタライン」で紹介したようにミュージック・セールス・グループのホームページに辿り着けば、新曲のスコアも閲覧できます。またアードリーの絵画についてはナショナル・ギャラリーのホームページから鑑賞も可能。「雪」とは言え、日本人が描くイメージとはかなり異なるのが面白い所ですね。
2曲目のチャイコフスキーはBBCスコティッシュが演奏したヴァイオリン協奏曲に続くもので、この後聴くことになる第1番に繋がる仕掛け。この3回でチャイコフスキーの主な協奏曲が3曲集中的に楽しめることになります。
ソロを弾くコレスニコフはシベリア生まれだそうで、既に来日も果たしているようです。ホームページはこちら↓
隠れ名曲とも言える第2ピアノ協奏曲に続き、アンコールもチャイコフスキーで、ピアノ曲集「四季」から6月の「舟歌」が演奏されました。
プログラムの後半はストラヴィンスキーの火の鳥ですが、1910年のバレエ全曲版が演奏されました。これもBBCスコティッシュのペトルーシュカに続くもので、夜の部で演奏される春の祭典とてストラヴィンスキーの三大バレエが一気に楽しめます。
一休みして、夜の部は再びBBCスコティッシュとダウスゴーの指揮。二つの団体がコラボレーションしてグライム、チャイコフスキー、ストラヴィンスキーを特集したシリーズということになります。最初から連荘するべく仕組まれたプロムス。
8月7日 ≪Prom 31≫
プロコフィエフ/スキタイ組曲「アラとロリー」
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
~休憩~
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」
BBCスコティッシュ交響楽団 BBC Scottish Symphony Orchestra
指揮/トーマス・ダウスゴー Thomas Dausgaard
ピアノ/キリル・ゲルシュタイン Kirill Gerstein
3日間で2回登場することになったダウスゴーは、ランニクルスの後を継いで新シーズンからBBCスコティッシュの首席指揮者に就任することになっています。そのお披露目的なプロムスでもありました。
何度も触れたように、チャイコフスキーの有名なピアノ協奏曲はチャイコフスキー協奏曲シリーズの、メインの春の祭典はストラヴィンスキー三大バレエ・シリーズの一環。これに、プロコフィエフのバレエから組曲として編まれた作品が冒頭に紹介されるというプログラムです。
特に触れることもありませんが、第1ピアノ協奏曲は通常弾かれるバージョンではなく、1879年オリジナル・ヴァージョン版としうのがミソ。聴いた印象では現行版と殆ど違わないように聴かれましたが、第3楽章に若干違うところがありました。
ソロを弾くゲルシュタインはもちろんロシア生まれですが、ジャズを勉強した後にクラシックに戻った、というか転向したという変わり種。既にN響定期でショスタコーヴィチを弾いたり、2012年のプロムスでもラフマニノフを演奏していました。
アンコールは、リストの超絶技巧練習曲集から第7曲の英雄的。
ストラヴィンスキーについては特記するも無いでしょう。
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