デュティユー生誕100年
プロムスでは毎年アニヴァーサリーを迎える作曲家を特集しますが、何と言っても今年は生誕100年を迎えるアンリ・デュティユーでしょう。室内楽プロムスでは既に弦楽四重奏曲が演奏されていましたが、8月8日からの3日間は、本体のプロムスで連続して3作品が紹介されます。
その第一弾が、サロネン指揮フィルハーモニア管によって演奏された The Shadows of Time 。
8月8日 ≪Prom 32≫
シェーンベルク/ワルシャワの生き残り
デュティユー/時間の影
~休憩~
マーラー/交響曲第1番
フィルハーモニア管弦楽団 Philharmonia Orchestra
指揮/エサ=ペッカ・サロネン Esa-Pekka Salonen
ナレーター/デヴィッド・ウイルソン=ジョンソン David Wilson-Johnson
合唱/フィルハーモニア・ヴォイシズ男声合唱団 Philharmonia Voices (men’s voices)
8日に取り上げられた The Shadows of Time 、日本のクラシック・ファンで知らない人がいればモグリとでも言うべき作品で、小澤征爾の委嘱によって作曲、小澤とボストン交響楽団によって初演された作品ですね。
第2次世界大戦終結50年に当たり、アンネ・フランクの日記に触発された一品で、ボーイ・ソプラノ3人が加わる20分強の傑作。残念ながら手元にスコアがありませんが、ショット社から出版されていますので、入手は容易です。
デュティユー作品の前に演奏されたのが、シェーンベルクの短編。タイトルからも判るように、ナチスによるユダヤ人虐殺を糾弾する内容で、英語による語りの後、男声合唱がヘブライ語で「シェマ・イスラエル」が歌われる感動的な作品。
英語の語り部分はシェーンベルク自身が書き下ろしたもので、軍人の威圧的な口調で語るように指示されています。スコアには他にレイポヴィッツが書いたフランス語版、マルガリート・ペーターによるドイツ語版も掲載されていますが、英語版がもっともシックリ来るようです。
当初はサイモン・ラッセル・べアール Simon Russell Beale という人が語りを務める予定でしたが、表記のウイルソン=ジョンソンに替りました。
プログラム前半は、第2次世界大戦が産み出した作品が並ぶという拘りの選曲。
後半のマーラーは特に書くこともないでしょう。フィルハーモニア管のアンサンブルが素晴らしく、サロネンの表現も見事。この曲の名演の一つと言って良さそう。
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