フロラン・ジェルーの大活躍

8月第2週のアメリカ、東海岸は夏の嵐が吹き荒れ、予定されていたサラトガ競馬場は最後の6レースがキャンセルとなりました。この日予定されていたアディロンダック・ステークス Adirondack S (GⅡ、2歳牝、6.5ハロン)は8月19日に、またフォースターデイヴ・ステークス Fourstardave S (芝GⅠ、3歳上、8ハロン)が8月20日に夫々順延されることが決まりました。
サラトガがハリケーンなどの豪雨でキャンセルされることは最近では珍しくなく、2006年には猛暑のために中止になったこともありました。いずれにしても今世紀に入ってからのことで、近年の気候変動が競馬の面からも証明されているようです。

というひとで土曜日のアメリカ競馬、デル・マーとシカゴの2州だけになりましたが、先ずアーリントン・インターナショナル競馬場の芝G戦フェスティヴァルから始めましょう。5鞍のG戦は何れも芝コース、内3鞍がGⅠ戦という豪華版。馬場は firm 、レース順に取り上げて行きます。毎度のことですが、アーリントンは最終オッズも、詳しいレース展開も不明。
最初は第6レースのアメリカン・セントレジャー American St. Leger (芝GⅢ、3歳上、13.5ハロン)。2頭が取り消して9頭立てとなり、ステークスに2連勝中のダ・ビッグ・ハース Da Big Hoss が4対5の1番人気。
4番人気(6対1)オプラード・オレー O’Prado Ole が逃げましたが、2番手に付けていた6番人気(14対1)のドイツ遠征馬ヴァシール Wasir が交わして先頭で直線。前半は4~5番手に待機していたダ・ビッグ・ハースがこれを外から捉えると、後方2番手から追い込む3番人気(6対1)でアイルランドの障害馬クロンドウ・ウォリアー Clondaw Warrior に1馬身4分の3差を付けて人気に応えました。首差で粘ったヴァシールが3着。
マイケル・メイカー厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のダ・ビッグ・ハースは、これで3連勝。4月にキーンランドでエルクホーン・ステークス(芝GⅡ)、6月にはベルモントでゴールド・カップ(リステッド戦)に連勝しており、G戦はこれで4勝目となります。

続いてはGⅠ戦3連発の第1弾となるセクレタリアート・ステークス Secretariat S (芝GⅠ、3歳、10ハロン)。9頭が出走し、G戦は未勝利ながら前走ベルモント・ダービー(芝GⅠ)で3着したビーチ・パトロール Beach Patrol が5対2の1番人気。
最低人気(73対1)のシザーズ・アンド・テープ Scissors and Tape が逃げ、ビーチ・パトロールは3番手追走。2番手に付けていたこのレースを2連覇中、5度目の勝利を目指すエイダン・オブライエン厩舎の2番人気(3対1)ロング・アイランド・サウンド Long Island Sound が逃げ馬を捉えて内ラチ沿いに先頭に立ったところ、本命ビーチ・パトロールが外から並び掛けて2頭の一騎打ち。内のロング・アイランド・サウンドも良く差し返しましたが、最後は頭差ビーチ・パトロールが抑えて優勝。4分の3馬身差で2番人気に並んでいたアメリカン・パトリオット American Patriot が3着。前走アメリカン・ダービー(芝GⅢ)に勝ったワン・ミーン・マン One Mean Man は4着でした。
チャド・ブラウン厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のビーチ・パトロールは、アメリカン・セントレジャーを制したダ・ビッグ・ハースと同じレモン・ドロップ・キッド Lemon Drop Kid 産駒で、父にG戦2連勝をもたらしました。またジェルー騎手も前のレースに続いてG戦2連勝。この日は午前中のレースでも1勝しており、ハットトリック達成です。なお、ペディグリー・オン・ラインのデータではビーチ・パトロールのファミリーを「9」としていますが、正しくは「9-a」となります。と言っても血統研究家以外には関係ない話題でしょうが・・・。

次は第8レースのビヴァリー・D・ステークス Beverly D. S (芝GⅠ、3歳上牝、9.5ハロン)。勝馬にはBCフィリー・アンド・メア・ターフへの優先出走権が与えられます。14頭と多頭数が参戦し、フランスでGⅡ戦に勝ち、アメリカ・デビューのシープスヘッド・ベイ・ステークス(芝GⅡ)に勝っているシー・カリージ Sea Calisi がイーヴンの1番人気。
レースは13番人気(97対1)のエルーシヴ・ミリオン Elusive Million が引っ張りましたが、2番手を追走していた5番人気(10対1)のジペッサ Zipessa が捉えて直線。ここに後方待機組のシー・カリージと7番人気(20対1)のアルズ・ギャル Al’s Gal が追い込み、本命馬がアルズ・ギャルを半馬身抑えて又も本命馬が人気に応えました。1馬身4分の1差でジペッサが粘って3着。
勝ったシー・カリージは、セクレタリアートに続いてチャド・ブラウン師のGⅠ戦ダブル、騎乗したフロラン・ジェルーは何とG戦3連勝の大当たりです。オーナーのマーチン・シュヴァル氏もこのレース、2005年のアンガラ Angara 、2006年ゴレラ Gorella 、そして2011年のスタチェリータ Stacellita に続く4勝目となる快挙。シー・カリージは前走ニュー・ヨーク・ステークス(芝GⅡ)では2着でしたが、アメリカでは3戦2勝。念願のGⅠ戦初制覇を果たしました。ドイツ牝系ですが、長年GⅠ級の馬が出ていなかったファミリー、その意味でも歴史を変える1勝となります。

GⅠ戦3連発の最後がアーリントン・ミリオン Arlington Million (芝GⅠ、3歳上、10ハロン)。これも勝馬にはBCターフへの優先出走権が与えられます。2頭が取り消して11頭立てとなり、フロラン・ジェルー騎乗のワールド・アプルーヴァル World Approval が7対2の1番人気。前走ユナイテッド・ネイション・ステークスに勝ってGⅠ馬の仲間入りを果たしています。
8番人気(13対1)のテイク・ザ・スタンド Take the Stand が逃げ、ワールド・アプルーヴァルは2番手追走。しかし直線に入ると追込み勢が一斉に追い上げる激しい戦いとなり、5頭の外から猛追した2番人気(4対1)のモンダイアリスト Mondialiste が内ラチ沿いに伸びるアーリントン・ハンデ(芝GⅢ)勝馬で7番人気(12対1)のカサクィ Kasaqui を首差抑えての差し切り勝ち。3~4番手を追走していたベルモント・ダービー(芝GⅠ)勝馬でオブライエン厩舎の6番人気(7対1)が同じく首差で3着。人気のワールド・アプルーヴァルは、ジェルー騎手4連勝成らず7着に終わりました。
英国から遠征したモンダイアリストは、デヴィッド・オメーラ厩舎、アーリントンは初体験となるダニエル・タドホープ騎乗の6歳馬で、去年はカナダでウッドバイン・マイル(カナダGⅠ)に勝ち、BCマイルで2着。今期はロイヤル・アスコットのクイーン・アン・ステークスこそ11着に終わりましたが、7月のヨークでニュー・ヨーク・ステークス(GⅡ)で2着して調子を上げていました。得意の遠征競馬でGⅠ戦初制覇を果たし、当然ながら無条件で出走権を得た今年のBCマイルを目指します。父はヨーロッパで大活躍のガリレオ Galileo 、アメリカでもスピード競馬に通用することを証明して見せました。

アーリントンの最後も、芝コースのパッカー・アップ・ステークス Pucker Up S (芝GⅢ、3歳牝、9ハロン)。2頭が取り消して12頭立て。6月にチャーチル・ダウンズでリグレット・ステークス(芝GⅡ)に勝ったオーンティー・ジョイ Auntie Joy が2対1の1番人気だったようです。(全馬の最終オッズは不明)
9対1のモムズ・チョイス Moms Choice の逃げで始まりましたが、最後は3頭が横一戦で並ぶ写真判定の大接戦。6対1のトライ・ユア・ラック Try Your Luck が先頭でゴールインし、ハナ差で3対1(?)のノーブル・ビューティー Noble Beauty が2番手、頭差でオーンティー・ジョイは3番手での入線でした。しかし最後の直線でトライ・ユア・ラックがオーンティー・ジョイの進路に入ったことが審議の対象となり、結局トライ・ユア・ラックはオーンティー・ジョイのあと、3着に降着。2番手で入線したノーブル・ビューティーが1着となり、オーンティー・ジョイが2着に繰り上がりました。
終わって見ればノーブル・ビューティーはチャド・ブラウン厩舎、フロラン・ジェルー騎乗で、この日ブラウン厩舎はG戦3勝、ジェルー騎手は5勝、G戦も4勝と言う大活躍になりました。ノーブル・ビューティーはラムゼー夫妻の所有馬でキッテンズ・ジョイ Kitten’s Joy 産駒。ステークスは初勝利ですが、5月にガルフストリームでハネー・ライダー・ステークス(一般ステークス)、6月には本命馬が勝ったリグレット・ステークスでも2着を続けており、審議とは言いながらG戦も初勝利となります。

最後にデル・マー競馬場のベスト・パル・ステークス Best Pal S (GⅡ、2歳、6.5ハロン)をレポートして締めとしましょう。fast の馬場に6頭立て。前走未勝利戦で5馬身差の圧勝で目を惹いたクリムト Kilimt がイーヴンの1番人気。
2頭が煽って出るバラついたスタートになりましたが、スムーズに出た2番人気(2対1)のビッグ・リーグ Big League が逃げ、クリムトは2番手追走。直線、クリムトが逃げ馬に外から並び掛けて2頭のマッチ・レース。最後は本命馬が逃げ馬を2馬身4分の3差突き放して人気に応えました。更に3馬身分の1差で3番手に付けていた3番人気(9対2)のサーストフォーライフ Thirstforlife が3着と順当。
勝ったクリムトはボブ・バファート厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗で、6月サンタ・アニタのデビュー戦は9対5の1番人気になりながら4着敗退。2艘目となった前走サンタ・アニタの未勝利戦(5.5ハロン)で5馬身4分の1差の圧勝を演じ、これで3戦2勝としました。今の時点では将来性も未知数でしょう。

 

 

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