二人の音楽巨人

17日のプロムスは、恐らく今年の全プログラムで最も人気が高かったコンサートじゃないでしょうか。バレンボイムとアルゲリッチという現代クラシック界を代表する二人の大音楽家が競演するのですから。
今年はブラジルの五輪と重なっていることもあり、プロムスでも南米の作品、演奏家にスポットを当てていますが、この回もアルゼンチン出身の二人ということで、南米特集でもあります。

オーケストラはアラブ人とイスラエル人で構成されているウェスト-イースタン・ディヴァン管弦楽団。平和に深い想いを抱くバレンボイムの発案で創設され、ゲーテの西東詩編から採った名称であることはご存知の通り。毎年プロムスの常連でもあります。

8月17日 ≪Prom 43≫
イョルク・ヴィドマン Jörg Widmann/Con brio
リスト/ピアノ協奏曲第1番
     ~休憩~
ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲
ワーグナー/楽劇「神々の黄昏」夜明けとジークフリートのラインへの旅、葬送行進曲
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲
 ウェスト-イースタン・ディヴァン管弦楽団 West–Eastern Divan Orchestra
 指揮/ダニエル・バレンボイム Daniel Barenboim
 ピアノ/マルタ・アルゲリッチ Martha Argerich

冒頭のヴィドマンは先日も作品が取り上げられ、現代の売れっ子作曲家。コン・ブリオはマリス・ヤンソンスのベートーヴェン全曲演奏会で演奏するために委嘱された作品の一つで、ヴィドマン作品は第7交響曲と第8交響曲とに組み合わされるべく書かれた一品。
ヴィドマンの他に作品を委嘱された作曲家はマナイ、望月京、シチェドリン、シャルクシュニーデ、カンチェリの面々で、これ等を共に収録したバイエルン放送交響楽団とのベートーヴェン全集はナクソスのNMLでも配信されています。これとバレンボイムを聴き比べるのも一興。

続いてアルゲリッチ登場。客席は中々演奏が始められない程の歓呼に包まれ、期待のリストが始まります。バレンボイムも協奏曲では暗譜での指揮だった由。
アルゲリッチ姉御らしく真にテンペラメンタルなリストで、付いて行けない人もいるのではないでしょうか。却ってそれが聴き手の熱狂を呼ぶ辺りがミュージック・ジャイアンツの所以でしょう。
協奏曲1曲で客席が満足するわけも無く、長いカーテンコールの末に譜捲り氏を伴って登場した二人、シューベルトの四手のためのロンド、イ長調D951を二人で連弾します。この光景、少し前にルフトハンザの帰国便で「春の祭典」を見たデュオであることを思い出しました。最早二人のデュオは音楽界の儀式ですらあると思いました。

後半は、ワーグナーの管弦楽作品から4曲を恰も交響曲のように並べたコンサート。敢えてワーグナーを演奏する所に、バレンボイムの真骨頂があります。何故か判らない人はそれで構いませんが。

最後は得意のスピーチ。“第1幕の続きはやりません。第2幕もやりません。それで第3幕のプレリュードを演奏します”ということでアンコール。
2時間半のコンサートがやっと終わりかと思った時、突然ローエングリンの第3幕前奏曲が始まりました。終わった後も何時までも拍手が続いていましたが、放送は時間切れでスタジオに。延々2時間40分を超えるコンサート、バレンボイムの会は長くなっていけません。

 

 

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