サラトガのGⅠ祭典はレコード続出

8月も最後の週末を迎えたアメリカ競馬、昨日の土曜日はサラトガでGⅠ戦6連発のフェスティヴァルとなりましたが、他の2場と併せてレース順に取り上げていきます。

そのサラトガは上記のようにGⅠ戦6鞍の他にGⅡ戦も一鞍、合計G戦7鞍の豪華版です。馬場はダートコースが fast 、芝も firm と夏場らしい高速馬場だったようです。第6レースからがG戦の連発で、
第一弾のパーソナル・エンサイン・ステークス Personal Ensign S (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)は、勝馬にBCディスタッフへの優先出走権が与えられるレース。この辺りからは11月第1週のBCシリーズを意識したGⅠ戦が続きます。出走馬は僅か5頭立てでしたが、内4頭がGⅠ馬。残る1頭もGⅡ馬でGⅠでの入着もあるハイレヴェルのメンバーとなり、前走サラトガのシュヴェー・ハンデ(GⅢ)を9馬身で圧勝したカーラライナ Curalina が9対5の1番人気。
3番人気(5対2)のアイム・ア・チャッターボックス I’m a Chatterbox が逃げ、カーラライナは2番手追走。前を捉えて本命馬が第4コーナーを先頭で回りましたが、前半最後方で待機していた2番人気(2対1)のカヴォーティング Cavorting が第3コーナーから仕掛け、直線では3頭の外から追い込み、カーラライナを半馬身差し切っての優勝。首差で3番手に付けていた4番人気(3対1)のフォレヴァー・アンブライドルド Forever Unbridled が3着に入りました。
キアラン・マクローリン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のカヴォーティングは、これが四つ目のGⅠ勝ち。今期初戦の4月にディスタッフ・ハンデ(GⅢ)で2着したあとはラフィアン・ステークス(GⅡ)、前走オグデン・フィップス・ステークス(GⅠ)と連勝し、これで3連勝。去年のBCはフィリー・アンド・メア・スプリントで4着に終わりましたが、今年はディスタッフを目指すことになるのでしょうか。

第7レースは、去年カヴォーティングが挑戦したBCフィリー・アンド・メア・スプリントへの優先出走権を掛けたバレリーナ・ステークス Ballerina S (GⅠ、3歳上牝、7ハロン)。10頭が参戦し、エイコーン・ステークス(GⅠ)の勝馬でCCAオークスで2着した3歳馬のカリーナ・ミア Carina Mia がイーヴンの1番人気。
先ず4番人気(6対1)のポールアズシルヴァーライニング Paulassilverlining が、続いて本命カリーナ・ミアが逃げる目まぐるしい展開となり、5番手を追走していた5番人気(10対1)のハヴューゴーンナウェイ Haveyougoneaway が直線で前3頭を外から捉え、4番手から伸びた6番人気(12対1)のバイ・ザ・ムーン By the Moon に半馬身差を付ける逆転劇。更に1馬身差でカリーナ・ミアは3着でした。
トーマス・モーリー厩舎、同馬とは初コンビとなるジョン・ヴェラスケス騎乗のハヴューゴーンナウェイは、モーリー師の元に転じてからは馬が変わったようになった5歳馬。7月初めの一般ステークス(ダンシン・ルネー・ステークス)、7月27日のオノラブル・ミス・ステークス(GⅡ)と3連勝でGⅠ戦初勝利なりました。モーリー師にとってもGⅠ戦は初制覇。今年はサンタ・アニタで開催されるBCでは、出走権を獲得したフィリー・アンド・メア・スプリントに向かうでしょう。

三つ目のGⅠ戦も短距離のキングズ・ビショップ・ステークス King’s Bishop S (GⅠ、3歳、7ハロン)ですが、こちらは3歳馬限定ということでBCの対象ではありません。1頭が取り消して12頭立てとなり、前走サンタ・アニタのアローワンス戦を18馬身差という圧勝を演じた新星ドレフォング Drefong が3対1の1番人気。クラシック直前まで無敗の快進撃を続けたモヘイメン Mohaymen は7対2の2番人気でした。
大外13番枠発走も何のその、スタートから主導権を奪った本命ドレフォングが、4番手を追走した5番人気(7対1)のエコノミック・モデル Economic Model に3馬身4分の1差を付ける圧巻の逃げ切り勝ちでした。半馬身差で2番手を追走した8番人気(25対1)のノーホールディングバック・ベアー Noholdingback Bear が3着に入り、7番手辺りを進んでいたモヘイメンは11着惨敗で春シーズンの面影も感じられません。
ボブ・バファート厩舎、マイク・スミス騎乗のドレフォングは、カリフォルニアから乗り込んでの3連勝。このレースではBCへの優先出走権は得られませんでしたが、間違いなくBCスプリントで古馬に挑むことになるでしょう。

その古馬たちが、BCスプリントへの優先出走権を争うのが第9レースのフォアゴ・ステークス Forego S (GⅠ、3歳上、7ハロン)。取り消しが2頭あって10頭立てとなり、前走アルフレッド・G・ヴァンダービルト・ハンデでGⅠ馬の仲間入りを果たしたエー・ピー・インディアン A.P.Indian がイーヴンの1番人気。
一つ前のキングズ・ビショップ同様、大外11番枠からスタートしたエー・ピー・インディーはハナに立つも、6番人気(16対1)チーフ・ライオン Chif Lion の主張に譲って2番手で待機。それでもスピードの違いを見せつけた本命馬、逃げ馬を交わすと最後は鞍上が馬を抑える余裕を見せながら、後方3番手から追い込む7番人気(20対1)のタマルカズ Tamarkuz に2馬身半差を付ける大楽勝でした。更に2馬身4分の1差で4番人気(9対1)のストールウォーキン・デュード Stallwalkin’ Dude が3着。勝時計の1分20秒99はステークス・レコード更新です。
アルノー・ドラクール厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のエー・ピー・インディアンは、これで短距離GⅠ戦に2連勝となる6歳せん馬。東海岸の代表としてBCスプリントに向かうことになるのは間違いありません。

続いては、この日最初の芝コースG戦となるソード・ダンサー・ステークス Sword Dancer S (芝GⅠ、3歳上、12ハロン)。これもBCへの優先出走権対象のGⅠ戦で、もちろんヨーロッパからも大挙して参戦してくるBCターフ。アメリカの芝コースだけに出走頭数も少なく、7頭立て。去年のこのレースを制しているジャドモント・スタッドのフリントシャー Flintshire が1対5の断然1番人気。
レースは長距離とあって先ず5番人気(27対1)のローマン・アプルーヴァル Roman Approval が、続いて最初のスタンド前では6番人気(51対1)のインオーディネイト Inordinate がスローに落としてペースを作ります。終始最後方で機を窺っていたフリントシャーは、インコースを衝いて徐々に進出し、直線では内ラチ沿いギリギリをすり抜けて一気に先頭。そのまま5番手から伸びた2番人気(5対1)のマネー・マルチプライアー Money Multiplier に1馬身4分の3差を付けて人気に応えました。更に2馬身4分の3差で後方2番手から4番人気(13対1)のトゥワイライト・エクリプス Twilight Eclipse が3着に食い込み、勝時計2分23秒45は、前のレースに続いてコースレコード更新。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のフリントシャーは、5歳時に続いて今年もソード・ダンサーを制して2連覇達成。去年のこのレースからは4連勝で、かつてパリ大賞典を制した馬としてヨーロッパ勢を迎え撃つアメリカ代表です。

GⅠ戦6連発の最後は、真夏のダービーと異名をとるトラヴァース・ステークス Travers S (GⅠ、3歳、10ハロン)。今年のクラシックは三冠とも勝馬が異なる混戦で、ここも1頭が取り消したものの13頭立て。プリークネスとベルモントの覇者が顔を揃え、プリークネス勝馬のエクサジェレイター Exaggerator が5対2の1番人気、ベルモント勝馬クリエイター Creator は8対1の4番人気でした。
ダッシュ良く飛び出したのは1番枠スタートの8番人気(11対1)のアロゲート Arrogate 、そのまま快調に飛ばすと、2番手を追走していた2番人気(5対1)に何と13馬身半という大差を付ける逃げ切り勝ち。1馬身半差で4番手に付けていた6番人気(9対1)のガン・ランナー Gun Runner が3着に入り、最後方から末脚に賭けたエクサジェレイターは11着、後方4番手を進んでいたクリエイターも7着と期待を裏切ってしまいました。行った行ったの競馬、バファート厩舎のワン・ツー・フィニッシュとレースとしては味気ないものになりましたが、勝時計はトラヴァース147年の歴史で最速の1分59秒36、トラック・レコードでもあります。
去年は三冠馬アメリカン・フェイロー American Pharoah の敗戦でショックを味わったボブ・バファート師、今年はマイク・スミス騎乗で破格の大勝利を味わいました。オーナーはジャドモント・ファームで、ソード・ダンサーに続くGⅠ連勝でもあります。バファート師もキングズ・ビショップのドレフォングに続くGⅠダブル。G戦そのものに初挑戦だったアロゲートですが、クラシック馬を蹴散らしたうえ、歴史を塗り替えるレコード・タイム、かつ13馬身以上での大差圧勝で、あと相手はケンタッキー・ダービー馬ナイクィスト Nyquist 位のもの。彗星のように現れた3歳馬で、BCクラシックは一段と盛り上がりそうな状況になってきました。

GⅠが続いたサラトガ、この日は最後にボールストン・スパ・ステークス Ballston Spa S (芝GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)も行われました。1頭が取り消して7頭立て。2歳時にはBCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフを、そして去年はベルモント・オークスを制した無敗のレディー・イライ Lady Eli が、生死の境を彷徨った蹄葉炎から回復して4対5の断然1番人気。
最低人気(74対1)のシンパシー Sympathy が逃げ、レディー・イライは5番手から。4番手を進んでいた2番人気(2対1)のミス・テンプル・シティー Miss Temple City がスパートして先頭で直線に入りましたが、前半は最後方で待機していた5番人気(27対1)のストライク・チャーマー Strike Charmer が大外を一気に急襲し、追い上げるレディー・イライに4分の3馬身差を付ける鮮やかな差し切り勝ち。半馬身差で3番手を進んだ3番人気(7対2)のセンティエロ・イタリア Sentiero Italia が3着。勝時計1分38秒77はこれまたコース・レコード、ステークス・レコード更新となりました。
マーク・へニング厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のストライク・チャーマーは、5月にベルモントでボーゲイ・ステークス(芝GⅢ)に勝って以来の、4歳時に記録したカーディナル・ハンデ(芝GⅢ)に続くG戦3勝目。その間、二つのGⅠ戦で着外に終わっていました。一方敗れたレディー・イライは7戦目での初黒星となりましたが、大病からの回復と勝馬の大駆けにあっての敗戦。決して名誉に傷が付いたことにはならないでしょう。

さてモンマス・パーク競馬場でもフィリップ・H・イズリン・ステークス Philip H. Iselin S (GⅢ、3歳上、9ハロン)が行われました。fast の馬場に6頭立て。ごドルフィンの所有馬で、去年のキングズ・ビショップ・ステークスで4着したこともある4歳馬で、前走サンタ・アニタでアローワンス戦に勝ったウォーターシェド Watershed が4対5の1番人気。
3番人気(4対1)のミスター・ジョーダン Mr. Jordan が逃げ、ウォーターシェドは最後方から。向正面で5番人気(12対1)のドントベットウイズブルーノ Dontbetwithbruno が競走を中止したり、直線でも上位2頭が進路妨害で審議になるなど荒っぽいレースになりましたが、最終的には2番手を追走していた2番人気(3対1)のバチェロ Baccelo が、逃げたミスター・ジョーダンを1馬身半差捉えて優勝。3馬身差でウォーターシェドは3着に終わりました。二点について審議が行われましたが、入線通りで確定しています。
デヴィッド・ジャコブソン厩舎、ニック・フアレズ騎乗のバチェロは、ブラジルのGⅠ戦で入着してきた6歳せん馬。去年からアメリカに移籍し、前走サンタ・アニタのアローワンス戦3着からのレースで、これが米G戦初勝利となりました。

最後はデル・マー競馬場のパット・オブライエン・ステークス Pat O’Brien S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。このレースも勝馬にBCスプリントへの優先出走権が付与されますが、fast の馬場にも拘らず2頭が出走を取り消したため何と3頭立て。競馬ブログを始めて何年も経ちましたが、アメリカのG戦で3頭立てというのはかなり珍しい光景でしょう。去年サンタ・アニタでトリプル・ベンド・ステークスを制してGⅠ馬の仲間入りを果たしているマソキスティック Masochistic が1対5の圧倒的1番人気。
少頭数レースは荒れるというジンクスもありますが、流石にここは順当。スタートからハナに立ったマソキスティックが、3番手から追い上げる2番人気(5対2)のヴァイジャック Vyjack に3馬身4分の3を付けて逃げ切り勝ち。2番手追走の3番人気(7対1)インデクシカル Indexical が7馬身半離されて予想通りの3着でした。
ロナルド・エリス厩舎、タイラー・ベイズ騎乗のマソキスティックは、これがG戦3勝目となる6歳せん馬。前走サンタ・アニタのアローワンス戦から連勝でBCスプリントを目指します。3頭立てとは言いながら勝時計はレコードに0.31秒及ばなかっただけという速いもので、決して内容は悪くありません。去年のBCスプリントは14頭立ての14着でしたが、今年は如何に。と言っても3頭立てになることはないでしょう。

 

 

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