二大B

29日のプロムスは老舗ゲヴァントハウス管のベートーヴェンをたっぷり味わいましたが、翌日は対照的にピカピカの若者集団グスタフ・マーラー・ユーゲント管をジョルダンが振ったバッハとブルックナーでした。

8月30日 ≪Prom 60≫
J・S・バッハ/カンタータ第82番「われは満ち足れり」
     ~休憩~
ブルックナー/交響曲第9番
 グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団 Gustav Mahler Jugendorchester
 指揮/フィリップ・ジョルダン Philippe Jordan
 バス=バリトン/クリスチャン・ゲルハーヘル Christian Gerhaher

この会はバッハとブルックナー、作品については特に新しいこともないので、横道に逸れて昔のことを思い出しながら聴きましょうか。
私がクラシック音楽に足を踏み入れた頃、当時の先輩たちが作曲家に「三大B」があるということを教えてくれました。音楽と言えばドイツ音楽だった時代ですが、バッハ Bach 、ベートーヴェン Beethove 、ブラームス Brahms こそが有り難く拝聴すべき音楽だと。

次第に時代が下るにつれ、ブラームスの代わりにブルックナー Bruckner を加えた3人こそが「三大B」だと主張する仲間がたち登場してきました。俗に言うブルックナーおたくの面々で、クラシック仲間の間では結構論争になったもんです。
ある時、書物だったか放送だったかで、ストラヴィンスキーがバッハ・ベートーヴェン・ベルリーニ Bellini こそが「三大B」だと主張していたのを知って腰を抜かしたことがあります。如何にもストラヴィンスキーらしい皮肉じゃ、と。

更に時代を経て、英国の音楽雑誌か何かで指揮者サー・トーマス・ビーチャムが、“バッハ・ベートーヴェン・ブラームスを三大Bと称するが、そのBは Boring (退屈な)の「B」だ”と言っていたのを見て爆笑したこともありました。
もちろんビーチャムは3人が本気で退屈だと思っているわけではなく、ドイツ音楽が生真面目で謹厳実直ということを英国人独特のユーモアで言い表したんでしょう。私はその時、ビーチャム Beecham 、バルビローリ Barbiroli 、ベーム Boem こそ指揮者の「三大B」だと思ったものでしたっけ。

ということで下らない話でした。このプロムスはバッハとブルックナー、人によっては三大Bの二人で、前日のベートーヴェンを併せて三大Bが聴けたわけだ。
いつもは楽章間で拍手お構いなしのプロムス聴衆ですが、流石にこの日は静かに鑑賞し、全曲が終わってからも長い沈黙でブルックナーに敬意を表していました。

 

 

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