10月8日のアメリカ競馬(1)ニューヨーク編
これから土曜日のアメリカ競馬をレポートしていきますが、BCのトライアル最前線ということで、3つの競馬場で合計13鞍という盛り沢山。全てを一つの記事に纏めるのが憚られますので、州毎に区切ることにしました。何とか今日中には全て更新したいと思っていますが、当方の能力には限界があり、明日にずれ込むかもしれません。ま、気長に付き合って下さいということで、ニューヨークから始めることにしましょう。
なおアメリカはハリケーンの襲来で多くの犠牲者が出ているようですが、競馬が開催された3州は影響もなく、全てダートは fast 、芝は firm の馬場で行われました。先に結果だけを書いておくと、G戦が初勝利という馬は只1頭で、その1頭も本命馬でしたから概ね順当だったと言えそう。余りにも数が多いので、多少端折る所があるかもしれませんが、悪しからず。
ということで最初はベルモント・パーク競馬場からのG戦6鞍。このうち4鞍がブリーダーズ・カップに優先出走権が与えられるレースで、全てレース順に取り上げていきます。
第4レースのフリゼット・ステークス Frizette S (GⅠ、2歳牝、8ハロン)は、もちろんBCジュヴェナイル・フィリーズの対象レースで、6頭が出走し、デビュー戦に勝ったばかりのイエロー・アゲート Yellow Agate が6対5の1番人気に支持されていました。
4番人気(6対1)のリビーズ・テイル Libby’s Tail が逃げ、イエロー・アゲイトは後方2番手に待機。第4コーナーで漸く3番手にまで押し上げた本命馬、逃げるリビーズ・テイルをゴール直前、頭差で外から差し切り、人気を証明しました。3着は9馬身4分の1もの大差が付いて3番手を進んだ5番人気(23対1)のカラフル・シャレーズ Colorful Charades 。
クリストフ・クレメント厩舎、マヌエル・フランコ騎乗のイエロー・アゲートは、新馬勝ちからいきなりのGⅠ制覇で2戦2勝。オーナーは最近欧米で動向が気になるチャイナ・ホース・クラブという団体で、競馬全体を爆買いする積りでしょうか。騎乗したフランコは先週のヴォスバー・ステークスをジョーキング Joking で制したのがGⅠ戦初勝利で、2週連続でのGⅠ勝ち2勝目となりました。クレメント師によるとBC遠征は未定とのことで、オーナーと相談して決めるとのことでしたが・・・。
第5レースはケルソ・ハンデキャップ Kelso H (GⅡ、3歳上、8ハロン)。これはBCの対象ではありません。2頭が取り消して5頭立てとなり、今期メトロポリタン・ハンデ(GⅠ)で2着したこともあるアンカー・ダウン Anchor Down が2対1の1番人気。
4番枠から好スタートを決めたアンカー・ダウン、そのまま逃げの手に出て、2番手を追走した3番人気(5対2)のタマルカズ Tamarkuz に一旦は詰め寄られながらも突き放し、同馬に2馬身差を付ける逃げ切り勝ち。4馬身半差で3番手を追走した5番人気(7対1)のオーシャン・ナイト Ocean Knight が3着に流れ込み、行った行ったの典型的な競馬。
トッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のアンカー・ダウンは、前走サラトガのアルフレッド・ヴァンダービルト(GⅠ)では6着に凡走していました。2歳時は見出走、3歳時には2戦2勝でしたが、そのあとほぼ1年間の休養。今年5月にベルモントでウエストチェスター・ステークス(GⅢ)に勝って復活し、これがG戦2勝目の5歳せん馬です。BCダート・マイルには向かわず、11月26日に明けダクトで行われるシガー・マイル(GⅠ)を目標にするとのことでした。
第6レースのフラワー・ボウル・ステークス Flower Bowl S (芝GⅠ、3歳上牝、10ハロン)。これはBCフィリー・アンド・メア・ターフの対象レースです。6頭が出走し、蹄葉炎から奇跡的に復帰したレディー・イライ Lady Eli が4対5の1番人気。
3番人気(9対2)のセンティエロ・イタリア Sentiero Italia が逃げ、レディー・イライは3番手の外を追走。第4コーナーで前の2頭を捉えた本命馬、逃げたセンティエロ・イタリアに4分の3差を付けて見事期待に応えました。1馬身4分の1差で後方2番手から追い込んだ2番人気(3対1)のシー・カリージ Sea Calisi が3着。
チャド・ブラウン厩舎、イラッド・オルティス騎乗の4歳馬レディー・イライは、2歳時にBCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフ、3歳時にもベルモント・オークス(芝GⅠ)に勝っており、GⅠは3勝目。オークスのあと蹄葉炎を発症しましたが、今夏のサラトガでボールストン・スパ・ステークス(芝GⅡ)で2着となり復活。これで8戦7勝2着1回とほぼパーフェクトな成績のまま、二度目のBC制覇に向かいます。
一つ一般ステークスを挟んで第8レースとして行われたのが第145回を迎える伝統のシャンペン・ステークス Champagne S (GⅠ、2歳、8ハロン)。もちろんBCジュヴェナイルの対象レースで、6頭が出走し、2戦2勝、前走は一般ステークス(ファニー・サイド・ステークス)ながら2着以下に10馬身以上の大差を付けて圧勝したシンダーガード Syndergaad が9対5の1番人気。しかし他馬も差がなく、3頭が5対2の2番人気で並んでいました。
その2番人気の一角、1番枠スタートのプラクティカル・ジョーク Practical Joke がスタートで出遅れ、人気のシンダーガードは迷わず逃げ作戦。しかし出遅れながらも直ぐに体制を立て直したプラクティカル・ジョーク、第3コーナーで4番手に上がり、直線で内から外に持ち出すと一歩づつ本命馬との差を詰め、ゴールではぎりぎりハナ差でシンダーガードを捉えていました。6馬身半差がついて、3番手を追走した2番人気の1頭フェイヴァラブル・アウトカム Favourable Outcome が3着。
チャド・ブラウン厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のプラクティカル・ジョークは、前走サラトガのホープフル・ステークスに続きGⅠ戦2連勝で、無傷の3戦3勝。もちろんBCで最強2歳馬のをタイトルをかけることになりますが、このレースはケンタッキー・ダービーのポイント対象でもあり、勝馬に与えられる10ポイントを得、来年のクラシックも見据えることになります。
第9レースはヒル・プリンス・ステークス Hill Prince S (芝GⅢ、3歳、9ハロン)。これはBCの対象ではありませんが、10頭が揃い、前走セクレタリアート・ステークス(芝GⅠ)を制して十分にBCを狙う資格のあるビーチ・パトロール Beach Patrol が5対2の1番人気。
そのビーチ・パトロールがダッシュ良く飛び出しましたが、向正面では4番人気(6対1)のモンスター・ビー Monster Bea に逃げを譲って2番手に控えます。しかしスタートで他馬と接触し、前半は後方3番手の内で待機していた2番人気(3対1)のキャメロット・キッテン Camelot Kitten が、直線で先頭に立った本命ビーチ・パトロールとの一騎打ちに持ち込むと、外からの追い込みを利して、頭差本命馬を捉える鮮やかな差し切り勝ち。1馬身差で3番手を進んだ3番人気(5対1)のアナルズ・オブ・タイム Annals of Time が3着に入りました。3頭出しで臨んだチャド・ブラウン厩舎のワン・ツー・スリー・フィニッシュです。
フラワー・ボウル、シャンペンに続いてこの日三つ目のG戦となったチャド・ブラウン厩舎、フラワー・ボウルに続き二つ目のG戦のイラッド・オルティスが騎乗したキャメロット・キッテンは5月にアメリカン・ターフ(芝GⅡ)、6月にもペニー・リッジ(芝GⅢ)と連勝し、7月はベルモント・ダービー(芝GⅠ)で2着。8月のサラトガでナショナル・ミュージアム・オブ・レーシング・ホール・オブ・フェイム(芝GⅡ)にも勝って、先月はサラナック(芝GⅢ)で2着。これで今期4つ目のG戦勝ちとなりました。
最後の第10レースがジョッキー・クラブ・ゴールド・カップ Jocky Club Gold Cup (GⅠ、3歳上、10ハロン)。BCクラシックの対象レースで、1頭が取り消して5頭立て。去年のこのレースで3着、BCクラシックはアメリカン・フェイロー American Pharoah の2着、そして遂にクラーク・ハンデでGⅠを奪取したエフィネックス Effinex が6対5の1番人気。
レースは4番人気(6対1)のプロトニコ Protonico の逃げで落ち着き、エフィネックスはこれを2番手でマーク。残る3頭はほぼ一団で差無く前2頭を追うコンパクトな流れとなりましたが、エフィネックスが満を持して先頭に立った所、4番手を進んだ3番人気(7対2)のホッパチュニティー Hoppertunity が前2頭を直線で外から捉え、エフィネックスを半馬身差し切っての逆転勝ち。2馬身半差で逃げたプロトニコが3着に粘りました。
ボブ・バファート厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のホッパチュニティーは、一昨年のクラーク・ハンデ勝馬で、去年は同レースでエフィネックスの2着だった5歳牡馬。今期は2月にサン・アントニオ・ステークス(GⅡ)を制し、3月にはドバイ・ワールド・カップでカリフォルニア・クローム California Chrome の3着。帰国してからはサンタ・アニタ・ハンデ(GⅠ)4着、パシフィック・クラシック(GⅠ)も4着。先週サンタ・アニタのオウサム・アゲン・ステークス(GⅠ)にも登録していましたが、それが9ハロンで、同馬は10ハロンが必要最低限の距離と見て回避したのが正解でした。もちろんBCクラシック制覇を目指します。
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