3歳馬不在の仏セントレジャー
北緯50度以北のアイルランドとイギリスはG戦シーズンを終えましたが、50度以南のフランスはあと一月ほどG戦が続きます。昨日はサン=クルー競馬場でG戦2鞍が行われました。一つはフランス版の菊花賞に当たるロワイアル=オーク賞です。
馬場は good to soft 、先ず本来サン=クルーが舞台のフロール賞 Prix de Flore (GⅢ、3歳上牝、2100メートル)は9頭立て。3歳馬6頭に対し古馬3頭というメンバーでしたが、今年の仏オークスに参戦するも落馬で無念を味わったアルマンド Armande が29対10の1番人気。落馬明けの前走コンピエーニュの一般戦で2着と復調の兆しです。
6番人気(76対10)のスパイス・トレイル Spice Trail が逃げましたが、先行して一旦は下がった7番人気(89対10)のラヴィング・シングズ Loving Things が残り300メートルで先頭に立つと、後方3番手から追い込む3番人気(23対5)のスウィッチング Switching に1馬身4分の1差を付けて優勝。4番手から伸びた2番人気(37対10)のフリア・クルザーダ Furia Cruzada が頭差で3着でした。アルマンドも後方から追い上げましたが4着に終わり、1・3着は古馬という結果になっています。
勝ったラヴィング・シングズは、英国でルカ・クマニ師が管理し、クリストフ・スミオン騎乗の4歳馬。今期初戦にポンテフラクトのリステッド戦に勝ち、その後ランカシャー・オークス(GⅡ)3着、グッドウッドのグローリアス・ステークス(GⅢ)4着、ヨークシャー・オークス8着とG戦を使われ、渡仏してG戦初勝利となりました。夏場の固い馬場が苦手な馬で、フランスの秋競馬で馬場に恵まれたということでしょう。
続いてロワイアル=オーク賞 Prix Royal-Oak (GⅠ、3歳上、3100メートル)。かつては3歳クラシックの最終戦、フランス・セントレジャーと呼ばれていましたが、今年は15頭も参戦していながら3歳馬はゼロ。クラシック・レースとしての意味は完全に失われてしまいました。今年は去年に続き、2年連続本来のロンシャンからサン=クルーに移されての開催です。
そもそも仏セントレジャーが古馬に解放されたのは1979年で、実際に古馬が勝ったのは1981年が最初でした。以来去年までの38回で、3歳馬が勝ったのは15回。また以前は出走資格が無かったせん馬が勝ったのも7回を数え、去年までせん馬が4連覇していたほど。これまで3歳馬が1頭も参戦しなかったのは1996年(5頭立て)、2007年と2回あり、今年は3回目となります。
その15頭の中で2対1の1番人気に支持されたのは、去年の覇者ヴァジラバド Vazirabad 。前走カドラン賞(GⅠ)は1番人気に支持されながらも最後で寄れ、クエスト・フォー・モア Quest For More の2着。実力は上位ながら、前走のような気性の悪さが死角でしょうか。
先ず14番人気(51対1)の伏兵モンタリー Montaly が逃げ、500メートル行った地点からは7番人気(20対1)のジャスティス・ベル Justice Belle が替わって先頭。後方に待機したヴァジラバドが追い込んで先頭に立つと、今回は脚を掬われるような素振りは全く見せず、先行していた5番人気(17対1)でヴェルメイユ賞2着のエンドレス・タイム Endless Time に1馬身4分の3差を付けて人気に応えました。中団から伸びた2番人気(23対10)で凱旋門賞4着のシルジャンズ・サガ Siljan’s Saga が半馬身差の3着に入り、GⅠ戦好走組が上位を占める順当な結果です。
ロワイアル=オーク賞2連覇を達成したヴァジラバドは、アガ・カーン所有、アラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗の4歳せん馬。せん馬はこれで5連勝となります。連覇が可能になってから、実際に2連覇したのはヴァジラバドが4頭目。
アガ・カーン四世にとってロワイアル=オーク賞は4勝目、デュプレ師は1998年のティラーズ Tiraaz に続く3勝目で、スミオンは去年に続く連覇で2勝目となります。スミオンはフロール賞と併せてこの日のG戦ダブル。
何度も紹介してきましたが、去年のロワイアル=オークを制して3歳シーズンを終えたヴァジラバド、今期はドバイから5月のヴィコンテス・ヴィジエ(GⅡ)と連勝し、サン=クルー大賞典は距離が短く7着敗退。長距離に戻って9月にグラディアトゥール(GⅢ)勝利で復帰しましたが、前走カドランがまさかの2着に終わっていました。
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