イェーツの逆襲

土曜日のブリーダーズカップに衆目が集まった翌日の日曜日、人知れずロンシャン競馬場でもGⅠ競走が行われていました。
ロワイアル=オーク賞(GⅠ、3歳上、3100メートル)。
ヨーロッパのGⅠの中では最もレヴェルの落ちるレースになり勝ちな長距離戦、今年はかなり高いレヴェルの出走馬に恵まれました。
そもそもこのレースはフランス版セントレジャーで、3歳馬限定のクラシックレースとして存在していました。いろいろ紆余曲折のあったレースですが、最近の事跡に限れば、1964年に距離が3000メートルから現在の3100メートルに延長されました。本来は3100でしたから、正確には戻った、というべきでしょうが。
ロワイアル=オーク Royal-Oak とは往年のフランスの大種牡馬の名前、長距離レースの活躍馬を多く出したことからその名を採られているのです。
他国の例に漏れず、スピード競馬重視の風潮がこのレースの人気低下に繋がり、遂に1979年には古馬にも開放されてクラシックレースとしてのステイタスを失います。
更に1986年、生産に繋がらないせん馬(去勢された馬)の出走も認められるようになり、今日に至っているわけ。
クラシックレースの一環だった当時は9月に行われていましたが、現在は凱旋門ウィークの華やぎも消え、ブリーダーズ・カップの賑わいからも取り残され、人知れずヒッソリと行われるGⅠとなったのでありますな。
しかし今年はチョッと違いましたね。
去年のこのレースを制したアレグレット Allegretto 、凱旋門ウィークの長距離レースの目玉であるカドラン賞で大本命イェーツを破ったバンナビー Bannaby 、去年のカドラン覇者ル・ミラクル Le Miracle 、凱旋門賞出走組のゲタウェイ Getaway 、アイルランド・オークスを制したムーンストーン Moonstone 、そして内弁慶じゃないかということで人気を落としていた英雄イェーツ Yeats 。
実はこの他にも凱旋門組からシャパレルリ Schiaparelli の登録もあったのですが、最終的には取り消して11頭立て。このうち少なくとも6頭は、どれが勝ってもおかしくないハイクラスのステイヤー戦が実現したのでした。
さて勝馬、いろいろ悪口を書かれていたイェーツの圧勝、見事に復活して根強いファンに高配当をもたらしてくれました。不運続きだった騎手ムルタも鼻高々。
2着には1馬身半差でアレグレット、3着は首差でタフなヴェラシティー Veracity が入線しています。アレグレットは、前日サンタ・アニタでターフを制したばかりのスタウト厩舎/ムーア騎手のコンビ。
以下、バンナビー4着、ムーンストーン6着、ル・ミラクル7着、ゲタウェイ8着惨敗という結果。
イェーツはこれが6勝目のGⅠ、オブライエン調教師にとっては2008年の年間GⅠ競走22勝目となりました。
オブライエン師、凱旋門ウィーク、ニューマーケットのホートン・ミーティング、アメリカのブリーダーズ・カップと連続してGⅠ制覇を逃してきました。
シーズン記録であるボビー・フランケル調教師の25勝には3レース届いていませんが、まだ年内にいくつかGⅠレースが残されています。可能性はゼロじゃありませんが、厳しい状況にあることも事実でしょう。
それでも1シーズンにトップ・レースに22勝するというのは大変な偉業であることに違いはありません。
ということで、久し振りにバリードイルの旗が揚がったロンシャン競馬場でした。

 

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