エプサム・サマー・ミーティング

いよいよ今週末、エプサム競馬場でオークスとダービーが行われます。そこでこの日記では、エプサム競馬場のことを簡単に紹介しておきましょう。
エプサムは「イギリスで最も有名な競馬場」と定義しておけばよいでしょうか。何しろ英国クラシックの頂点、オークスとダービーが行われる舞台なんですからね。ロンドンの中心から15マイルという近距離。毎年たくさんの人が訪れます。競馬ファンはもちろんのこと、そうでない人たちも、ね。
ここエプサム・ダウンズは、本来は公共のスペースです。ですから競馬場の諸施設のあるエリアは別として、誰でも自由に往き来できる場所。競馬そのものも、レース途中の端っこ辺りはタダで見物できます。
ダービーが行われる「ダービー・デイ」は、それこそお祭り状態です。いや、お祭りというより無礼講ですな。私が実際に見物した1975年の時点でも、ミニ・サーカスはあるわ仮設ストリップ小屋が出るわ、もう大変な騒ぎでしたよ。一杯引っ掛けたオッサンがシルクハットを裏返しに置いて、プッチーニの「誰も寝てはならぬ」などを激唱していましたっけ。
19世紀はもっと凄かったそうで、季節は良し、競馬というよりはピクニックの名所だったようですね。お祭りが中心、競馬は序でに見る、というか無視。
当時は「ダービー・デイ」は国民の祝日でしたが、今は違います。
私が参加した頃は、ダービーは6月の第一水曜日と決まっていたモンです。その日は普通に平日なんですが、シティーからは正装して馬車で出かける連中なども大勢見掛けましたし、ロンドン中がお祭りムード一色。“こいつら仕事はどうするんじゃ~”と思いましたね。
ま、それから紆余曲折があったようで、最近はオークスが金曜日、ダービーが土曜日で定着したみたい。何しろついこの間まで土日は競馬はお休みだった国ですから、英国も変わったと言おうか、地に落ちたと言おうか・・・。
さて、エプサムの競馬には300年以上の歴史があります。記録に残っている最も古い競馬開催は1661年だそうですね。
18世紀、ここに館を構えていた第12代ダービー卿 Lord Derby が競馬好きで、毎年ここでパーティーを開いていました。そのパーティーの席で、ジョッキー・クラブの中心的人物だったバンバリー卿 Sir Charles Bunbury と意気投合、若駒のために短い距離のレースを創設することで合意したのが、オークスとダービーです。オークスは1779年、ダービーはその翌年、1780年に第1回が行われています。以来、2百うん十年。
「オークス」というのはダービー卿の館の名称、「ダービー」はもちろん、その館の主の名前です。
よくダービーの名前の由来に、“ダービーさんとバンバリーさんがコインを投げ、その裏表でダービーさんが勝ったのが名前の起こり”なんて説明がありますが、これは真っ赤な嘘、らしいですよ。
エプサム競馬場のこと、ダービー・オークスの話は限がありませんからこの辺で止めときましょう。また来年ということにして。
エプサムでクラシックが行われるのは5月末か6月初め、これをサマー・ミーティングと称しています。ダービーとオークスの他に、コロネーション・カップという古馬のためのGⅠ競走も行われます。
実は例年ですとスプリング・ミーティングが3日間あるんですが、今年はスタンド改築のため、春は休場になっていました。春開催では、ダービーのトライアルであるブルー・リバンド・トライアル、オークスのトライアルであるプリンセス・エリザベス・ステークスが行われますし、名物のハンデ戦が二つ、1マイル4分の1のシティー・アンド・サバーバン・ハンデ、2マイル4分の1のグレート・メトロポリタン・ハンデもあるんですが、今年は中止です。
エプサム競馬場は極めて起伏に富んだコースで、例えばダービーならスタートして暫くは上り坂をゆっくり右にカーヴしていきます。丘の頂上から有名なタテナム・コーナーまでは左回りに坂を下る。下り切ったところで左に折れ、ゴールまではかなりの急坂を昇る、という具合。バランスの悪い馬にはとても乗りこなせない難コースですね。騎手にとっても同じ。
ということで、今年のオークス、ダービーですが、6日前の最終登録の段階で、どちらも18頭が登録を済ませました。
今大騒ぎになっているのは、月曜日の朝、ジム・ボルガー調教師がニュー・アプローチ New Approach をダービーに出走させると発表したこと。ニュー・アプローチはエプサムには出ない、と師が公言したのは4月のことでしたから、み~んなそれを信じ、ブックメーカーも賭けの対象から外していましたからね。
ボルガー師の決定には賛否両論、イギリス中が蜂の巣を突付いたような騒ぎになってます。マンデー・ショック、帝国を揺るがす。ちとオーバーかな。
まぁ、それ位な事件であることは間違いなくて、慌ててニュー・アプローチに賭ける人が殺到しているようですね。今なら3番人気みたい。
1番人気はカジュアル・コンケスト、2番人気はカーテン・コールですが、どちらも経験の浅い馬で、実力については未知ですから。
後は枠順が発表された頃に続けましょう。今日はここまで。

 

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