日本フィル・第685回東京定期演奏会

11月の日フィル東京定期、私は金曜会員ですが、生憎サルビアホールの例会と重なってしまい、土曜日に振り替えての参戦でした。本来の定席よりやや後方の席が回ってきたので、いつもとはやや異なる印象もありました。
この9月から桂冠指揮者兼芸術顧問という肩書に変わったラザレフが新たに開始する《ラザレフが刻むロシアの魂 Season Ⅳ グラズノフ》の第1回です。

ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲第1番
     ~休憩~
グラズノフ/交響曲第5番
 指揮/アレクサンドル・ラザレフ
 ヴァイオリン/郷古廉
 コンサートマスター/木野雅之
 フォアシュピーラー/齋藤政和
 ソロ・チェロ/菊地知也

首席指揮者だった前シーズンの最後のテーマだったショスタコーヴィチから引き続き協奏曲が1曲、前回予告編の様に紹介されたバレエ「四季」の作曲家でもあるグラズノフとの組み合わせです。
土曜日は音楽評論家氏によるプレトークがあるというので早めに出掛け、山野雄大氏の解説も併せて拝聴しました。中々微に入り細を穿ったプレトークで、判り易く淀みないトークに感心。特に音楽教師グラズノフと、弟子筋のプロコフィエフとショスタコーヴィチとの関係が面白く聞けました。個人的にはグラズノフが大好きなので、一々頷きます。

前半のショスタコーヴィチ1番は、これまでも日フィル定期では度々名演に接してきた作品。ベルキン、堀米の妙技も思い出しながら聴いていました。
今回のソリスト郷古は、やはり近現代の作品に最大の適性を持つと考えているヴァイオリニストで、ラザレフと堂々と渡り合い、丁々発止の名人芸はこれまた見事なもの。使用楽器は1682年製のストラディヴァリとのこと。

後半は、山野氏が解説でも力を入れていたグラズノフの第5交響曲。ラザレフがグラズノフの交響曲を日フィルで取り上げるのは初めてだと思いますが、読響に客演していた当時に同じ第5を聴いたことがあります。
確かその時はハチャトゥリアンとの組み合わせだったと記憶しますが、チョッとやり過ぎじゃないかと思ったほどの大熱演でしたっけ。その印象は、今回も全く変わりません。

人気が出ないのが不思議な位の手応えある交響曲。特に終楽章のリズミックに盛り上がる音楽は、ラザレフの資質に完全にマッチしていると思います。
山野氏によればマエストロはストラヴィンスキーのフィナーレの熱狂に通ずると評価しているそうですが、私はどうしてもラフマニノフの交響舞曲のフィナーレを連想してしまいます。スコアから引けば、第4楽章の練習番号9から。アニマートからの展開は「グラズノフの熱狂」とでも名付けたい熱さで、ラザレフを含めてロシア人のDNAは明らかに西欧ヨーロッパ民族とは異なっていると考えざるを得ません。これが無ければ、本当のロシア音楽とは言えないのでしょう。
ということで、リズムをずらせながらクライマックスに突き進んでいく手法。今回のプレトークには登場しませんでしたが、グラズノフとラフマニノフとの師弟関係、友情にも繋がるのではないかと思ってしまうのです。ラフマニノフは当然、この曲を知っていたでしょう。

今回は、演奏時間もそうだったように短めの感想。珍品のバレエ音楽や交響曲の4番や8番、今後ラザレフが繰り出すグラズノフ・ルネサンスを聴き逃す手はありません。マエストロには「ニェット」と言われてしまいそうですが、個人的にはグラズノフの奇作「諸国の国家によるパラフレーズ」をナマで聴きたいんだけど・・・。

 

 

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