今年最初の一日G戦9鞍
2月に入って最初の土曜日、2月4日はアメリカ全土でG戦が一気に9鞍行われました。今年最初のG戦オンパレード。
先週は古馬戦線が主体でしたが、今週はクラシックに繋がる3歳戦が中心。5月第1週のケンタッキー・ダービーに合わせ、毎月第1週は見逃せないトライアルが続くことになります。
最初はアケダクト競馬場の一鞍、ウィザーズ・ステークス Withers S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)を取り上げましょう。アケダクトでは今年二つ目の3歳G戦で、fast の馬場に10頭立て。今年最初のジェローム・ステークス(GⅢ)を圧勝したエル・アリーブ El Areeb が1対2の断然1番人気。
1番枠から出た6番人気(29対1)のトゥルー・ティンバー True Timber が逃げ、エル・アリーブは3番手追走。第4コーナーで外から前の馬を捉えた本命馬、粘るトゥルー・ティンバーを4馬身4分の1差引き離して堂々人気に応えました。6番手から伸びた3番人気(6対1)のジェイ・ボーイズ・エコー J boys Echo が半馬身差の3着。
キャサル・リンチ厩舎、トレヴァー・マカーシー騎乗のエル・アリーブは、これで4連勝。G戦も2連勝となり、前走に続いてダービー・ポイント10点を獲得して20ポイントとしました。3月第1週のガッサム・ステークスは未定ですが、4月8日のウッド・メモリアルからダービーを目指すローテーションになるでしょう。
続いてフロリダのガルフストリーム・パーク競馬場の4鞍は、全てが3歳戦。先ずコーナーを1度回るだけのG戦から始まります。最初のスウェイル・ステークス Swale S (GⅡ、3歳、7ハロン)は fast の馬場に6頭立て。5戦5勝で臨んだBCジュヴェナイル・ターフでは6着だったスリー・ルールズ Three Rules が4対5の1番人気。
4番人気(11対1)のデレクス・スマイル Derek’s Smile が逃げ、スリー・ルールズは4番手から。しかし前半は最後方に控えていた2番人気(2対1)のフェイヴァラブル・アウトカム Favorable Outcome が第4コーナーで前3頭を外から捉えると、更に外から迫る本命スリー・ルールズを4分の3馬身抑えて鮮やかな差し切り勝ちを決めました。2番手を進んだ3番人気(4対1)のソニック・ミュール Sonic Mule が2馬身4分の3差で3着。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のフェイヴァラブル・アウトカムは、8月のサラトガでデビューして新馬勝ち。2戦目でベルモントのシャンペン・ステークス(GⅠ)に挑戦して3着となり、2歳終戦のBCジュヴェナイルは12着大敗。3歳初戦は距離の短いここからスタートし、改めてクラシックに向けた調整に入ると思われます。
同じく7ハロン、こちらは牝馬によるフォワード・ギャル・ステークス Forward Gal S (GⅡ、3歳牝、7ハロン)は8頭立て。2連勝で3戦2勝のミス・ローカスト・ポイント Ms Locust Point が未実績ながら6対5の1番人気に支持されていました。
そのミス・ローカスト・ポイントがハナに立って逃げ切る作戦に出ましたが、4番手に付けていた6番人気(14対1)のテキリータ Tequilita が第4コーナーで前の3頭を外から捉え、更に外から追い込む2番人気(2対1)でGⅠ馬(スピナウェイ・ステークスで1着同着)のプリティー・シティー・ダンサー Pretty City Dancer を半馬身差抑える番狂わせでした。最後方から追い込んだ7番人気(45対1)のブラームス・キャット Brahms Cat が1馬身4分の1差で3着に入り、人気のミス・ローカスト・ポイントは5着と荒れました。
マイケル・マッツ厩舎、ルイス・サエズ騎乗のテキリータは、去年10月、4戦目にキーンランドで未勝利を脱し、11月にはローレルの一般ステークス(スマート・ヘイロー・ステークス、6ハロン)に連勝し、3歳初戦も勝って3連勝。陣営は父アンクル・モー Uncle Mo (ベルモント・ステークス勝馬)も母も所有していたマッツ 調教師夫人。ファミリーの期待を背負って、ひれからはクラシック路線に向かうことになるでしょう。
ガルフストリーム3つ目のG戦は、3歳の芝戦スイーテスト・チャント・ステークス Sweetest Chant S (芝GⅢ、3歳牝、8ハロン)。firm の芝コースに9頭が出走し、前走BCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフで5着したリムスカ Rymska がイーヴンの1番人気。
本命馬と同厩の3番人気(5対1)オキナワ Okinawa が逃げ、リムスカは後方3番手からの展開。向正面で徐々に順位を上げたリムスカ、直線では思い切って外に持ち出すと、4番手から抜け出して先頭に立っていた2番人気(3対1)のコンペルド Compelled を並ぶ間もなく一気に4分の3馬身交わして人気に応えました。最後方から追い込んだ6番人気(13対1)のフィフティー・ファイヴ Fifty Five がハナ差で3着。
このレース何と6連覇となるチャド・ブラウン厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のリムスカは、フランスで競走をスタートさせた馬で、彼の地ではリステッド戦を含めて3戦2勝。去年10月に渡米してミス・グリロ・ステークス(芝GⅢ)で2着したあとに現オーナーに転じ、前走BCが5着でした。今期初戦でG戦も初勝利、やはり芝路線、より長距離を選んでいくことになるでしょうか。
ガルフストリームの最後は、コーナーを2度回るホーリー・ブル・ステークス Holy Bull S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。2頭が取り消して7頭立てとなりましたが、何と言っても去年BCジュヴェナイルを制して2歳チャンピオン牡馬に選出されたクラシック・エンパイア Classic Empire が1対2の圧倒的1番人気。ここまで落馬した1戦以外は全て勝って4勝のクラシック最有力候補です。
逃げたのは3番人気(4対1)のアイリッシュ・ウォー・クライ Irish War Cry 、クラシック・エンパイアは3番手に付け、いつでも抜け出す構え。しかし大本命、第3コーナーでは鞍上ルパルーの手が動き、第4コーナーではムチが入って2番手まで押し上げましたが、そこまで。スイスイと逃げるアイリッシュ・ウォー・クライを捉えるどころか、5番手から伸びる2番人気(3対1)ガンナヴェーラ Gunnevera にも交わされて着に終わるショックとなりました。勝馬と2着は3馬身4分の3差、2着と本命馬とは5馬身差の完敗です。
グレアム・モーション厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のアイリッシュ・ウォー・クライは、去年11月にローレルでデビュー勝ち。大晦日にはやはりローレルで一般ステークス(メリーランド・ステークス、7ハロン)にも勝ち、これで無傷の3連勝となりました。G戦初挑戦、コーナーを2度回るレースも初挑戦での主役交代劇。俄かにスターが誕生したと言えそう。この日は父カーリン Curlin (プリークネス勝馬)がガルフストリームでデビュー勝してから丁度10年と1日に当たるのだそうで、偉大な父を継ぐ1頭になるでしょうか。
最後はサンタ・アニタ競馬場から4鞍。最初のロバート・B・ルイス・ステークス Robert B. Lewis S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)は1月のシェイム・ステークス(GⅢ)に続くサンタ・アニタ二つ目のクラシック・トライアル。fast の馬場に僅か5頭立てとなり、大晦日に4戦目で初勝利を挙げたばかりのシーア・フラッタリー Sheer Flattery が何故か7対5の1番人気。マイク・スミス騎乗の鞍上人気でしょうか。
2番人気(3対2)のロイヤル・モー Royal Mo が1番枠を利して逃げ、結果は鮮やかな逃げ切り勝ち。2番手を追走した3番人気(4対1)のアイラップ Irap がそのまま3馬身半差で2着に入り、4番手を進んだシーア・フラッタリーは首差の3着に終わっています。
ジョン・シェリフス厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のロイヤル・モーは、去年8月にデル・マーでデビューして2着、11月のサンタ・アニタでも2着し、同じ月にデル・マーで初勝利を挙げ、暫く休んでいた馬。今期初戦をG戦初勝利で飾りました。1月のシェイム・ステークスを制したゴームリー Gormley と同じ関係者で、陣営は2頭の使い分けに苦労しそうです。
さてサンタ・アニタ、このあとの3鞍は何れも古馬戦線で、最初はスプリントのパロス・ヴァーデス・ステークス Palos Verdes S (GⅡ、4歳上、6ハロン)。1頭が取り消して4頭立てと何とも寂しメンバーとなり、前走大晦日にミッドナイト・リュート・ステークス(GⅢ)を同着ながら制したセント・ジョー・ベイ St. Joe Bay が3対5の1番人気。
ダッシュ良く飛び出した本命馬、道中3番人気(6対1)のオチョ・オチョ・オチョ Ocho Ocho Ocho に絡まれましたが、これを振り切り、3番手から追い上げる2番人気(6対5)のモー・キャンディー Moe Candy に2馬身4分の1差を付けて逃げ切りました。更に4馬身4分の1差で最後方から伸びた4番人気(16対1)のアイク・ウォーカー Ike Walker が3着。
ピーター・ミラー厩舎、ケント・デサーモ騎乗のセント・ジョー・ベイは、12月のアローワンス戦から数えて3連勝。G戦も2連勝となります。
BCのカテゴリーで言えばクラシックの遥かなる前哨戦となるサン・アントニオ・ステークス San Antonio S (GⅡ、4歳上、9ハロン)は、1頭が取り消しての7頭立て。去年のロバート・B・ルイス・ステークスの勝馬モー・スピリット Mor Spirit が9対5の1番人気。それ以来1年間勝ち星がありませんが、レヴェルが高い4歳馬ということでの人気でしょうか。
レースは6番人気(15対1)のエル・フェファーノ El Huefano の逃げで始まり、第4コーナーでも先頭の儘直線に入りましたが、最後方に控えていた2番人気(5対2)のホッパチュニティー Hoppertunity が外から鬼脚を繰り出して追い込み、3番手を進んだ本命モー・スピリットに1馬身差を付けて鮮やかに差し切りました。4分の3馬身差で4番手追走の3番人気(5対2)アクセルレート Accelerate が3着。
ボブ・バファート厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のホッパチュニティーは、去年に続きサン・アントニオ2連覇。去年はそのあと10月にジョッキー・クラブ・ゴールド・カップでGⅠ戦を制し、BCクラシック4着、クラーク・ハンデ(GⅠ)も4着となり、今年こそBCクラシック獲りに挑むことになりますが、当面の目標はドバイ・ワールド・カップ。
土曜日最後は、BCターフを目指す馬たちのサン・マルコス・ステークス San marcos S (芝GⅡ、4歳上、10ハロン)。馬場は firm ながら5頭の取り消しが出て9頭立て。人気が拮抗する中、前走11月のデル・マーでハリウッド・ターフ・カップ(芝GⅡ)を制したテキサス・ライアノ Texas Ryano が2対1の1番人気。
6番人気(それでも8対1)のイッツインザポスト Itsinthepost が逃げ、テキサス・ライアノは後方2番手に待機。直線は多くの馬が一段となる大混戦となり、4~5番手を進んでいた5番人気(7対1)のアイソターム Isotherm が抜け、逃げたイッツインザポストに半馬身差を付ける小波乱。後方3番手から追い込んだ去年の覇者で4番人気(6対1)のフラムボヤント Flamboyant が2馬身差の3着に追い上げ、人気のテキサス・ライアノは後方2番手から追い込むも6着まで。
ジョージ・ウィーヴァー厩舎、サン・アントニオに続きG戦ダブルとなるフラヴィアン・プラット騎乗のアイソタームは、一昨年2歳時のピルグリム・ステークス(芝GⅢ)以来の勝ち星となる明け4歳馬で、前走年末のサンタ・アニタでのマティス・ブラザース・マイル(芝GⅡ)は4着、その前ハリウッド・ダービーも9着の伏兵でした。
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