カリフォルニア・クローム復活
今週のアメリカはデル・マーとサラトガ、2つの大舞台が勢ぞろいして本格的な夏競馬がスタートしました。7月23日の土曜日はその2場に加えてモンマス・パークからも一鞍、合計5つのG戦が行われました。
先ずは前日開幕したばかりのサラトガ競馬場から2鞍。2歳牡馬最初のG戦となるサンフォード・ステークス Sanford S (GⅢ、2歳、6ハロン)は fast の馬場に5頭立て。6月3日にチャーチル・ダウンズで新馬勝ちしたバチューメン Bitumen が、その内容の良さから4対5の1番人気。
スタートから3頭が激しくハナを争う中から、4番人気(6対1)のザレータ Zareta が僅かに先頭での逃げ。やや出遅れ気味のスタートから後方2番手、前の3頭からは6馬身も離されていたバチューメンが直線では4頭の外から一気に追い上げ、2番手を追走した2番人気(8対5)のランダム・ウォーク Random Walk に1馬身4分の3差を付けて優勝。3馬身差で逃げたザレータが3着に粘りました。3着のイラッド・オルティス騎手から2着のホセ・オルティスに対して進路妨害の異議申し立てがなされましたが、審議の結果入着通りで確定しています。
エディー・ケナリー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のバチューメンは、新馬戦を6馬身4分の3差で圧勝しており、これで2戦2勝でG戦に勝ち名乗り。来年のクラシックに向けた長い道程で最初のトップランナーとなりました。
続いてはGⅠ戦のダイアナ・ステークス Diana S (芝GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。雨が降り出したサラトガですが、馬場は firm 。10頭が出走し、4月にメイカー46マイル(芝GⅠ)で牡馬相手に優勝し、前走ロイヤル・アスコットに遠征してデューク・オブ・ケンブリッジ・ステークス(英GⅡ)で4着したミス・テンプル・シティー Miss Temple City が5対2の1番人気。
大外から飛び出した5番人気(8対1)のイザベラ・シングス Isabella Sings がハイペースで飛ばし、レースは混戦模様。直線では後方待機組が一斉に襲い掛かり、最後方で待機した3番人気(4対1)のダシータ Dacita が大外から急襲し、横一戦で並ぶ大混戦をハナ差で差し切っての鮮やかな追込み勝ち。6番手を進んだ6番人気(9対1)のレセプタ Recepta が、7番手から伸びた9番人気(28対1)のラインハ・ダ・バテリア Rainha Da Bateria に頭差先着して2着。3・3着は審議、異議申し立ての両方で対象になりましたが、最終的には入線通りで確定しました。
チャド・ブラウン厩舎、イラッド・オルティス騎乗のダシータは、6月10日ベルモントのニュー・ヨーク・ステークス(芝GⅡ)に続くG戦2連勝で、念願のアメリカGⅠ戦初制覇を達成しました。前走の際に詳しく紹介しましたが、チリの2冠馬で2・3歳時には夫々の部門でチリのチャンピオンに選出されている5歳馬。芝コースのチャンピオン牝馬が最終目標でしょう。
次にモンマス・パーク競馬場のジャージー・ショア・ステークス Jersey Shore S (GⅢ、3歳、6ハロン)を紹介しましょう。fast の馬場に6頭立て。これまでG戦とは縁の無い馬が揃いましたが、中では2歳時にフューチュリティー・ステークス(GⅡ、5着)、今期はハッチェソン・ステークス(GⅢ、6着)に参戦しているフル・サリュート Full Salute が11対5の1番人気。
レースは2番人気(12対5)のフロント・ポケット・マネー Front Pocket Money が逃げ、そのまま逃げ切り勝ち。最後方から追い込んだ5番人気(69対10)のイエロー・チップス Yellow Chips が4分の3馬身差で2着に入り、更に4分の3馬身差で2番手を追走した3番人気(7対2)のカーネル・シャープ Colonel Sharp が3着。フル・サリュートは4番手に付けましたが伸びず、5着に終わりました。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、アントニオ・がラード騎乗のフロント・ポケット・マネーは、これで4戦3勝。G戦はもちろん、ステークスも初勝利となります。
最後にデル・マー競馬場の2鞍。先ずサン・クレメンテ・ハンデキャップ San Clemente H (芝GⅡ、3歳牝、8ハロン)は firm の馬場に1頭が取り消して10頭立て。前走ハネムーン・ステークス(芝GⅡ)で僅差2着のビー・マイン Be Mine が5対2の1番人気。
3番人気(7対2)のベルヴォアー・ベイ Belvoir Bay が逃げ、ビー・マインは5番手追走。2番手を進んだ6番人気(10対1)のレディー・ヴァラー Lady Valeur が交わして先頭に立ちましたが、前半8番手に控えていた5番人気(7対1)のモカット Mokat が馬群を割るようにして第4コーナーで先頭に立つと、レディー・ヴァラーに3馬身4分の3差を付ける快勝。4分の3馬身差で後方2番手から追い込んだ2番人気(3対1)のステイズ・イン・ヴェガス Stays in Vegas が3着に入り、ビー・マインは4着まで。
リチャード・バルタス厩舎、ケント・デサーモ騎乗のモカットはこれまでG戦で何度か入着していた馬で、3月のサンタ・イザベル・ステークス(GⅢ)ではチャンピオンのソングバード Songbird の3着、続く4月のサンタ・アニタ・オークス(GⅠ)でも2着していました。前走ケンタッキー・オークス6着からの巻き返しで、G戦初勝利となりました。
最後はサン・ディエゴ・ハンデキャップ San Diego H (GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。fast の馬場に2頭が取り消して5頭立て。小頭数のGⅡ戦とは言いながら、GⅠ馬2頭の激突で大いに盛り上がりました。一昨年の二冠馬でドバイ・ワールド・カップ制覇以来となるカリフォルニア・クローム California Chrome と、1年後輩で同じサンタ・アニタ・ダービーに勝っているドルトムント Dortmund の対決。もちろん前者が4対5の1番人気で、後者は6対5の2番人気。残る3頭は脇役に過ぎません。
スタートでは6番枠発走のカリフォルニア・クロームが上回りましたが、直ぐに2番枠発走からドルトムントがハナを奪っての逃げ作戦。2番手に付けたカリフォルニア・クロームが第3~4コーナーの中間地点でドルトムントに並び掛けるとスタンドから大歓声。半馬身程カリフォルニア・クロームがリードして直線に向きましたが、渋太く粘るドルトムントが差し返して2頭のマッチレース。しかし終始外でリードを保ったカリフォルニア・クロームが、最後も半馬身差を付けて優勝。7馬身4分の1差で4番手を追走した3番人気(5対1)のウイン・ザ・スペース Win the Space が3着に入っています。
アート・シャーマン厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のカリフォルニア・クロームは、これがG戦8勝目。復活というよりも引き続きチャンピオンの座を堅持していると表現すべきでしょうが。1年後輩でドルトムントと同期の三冠馬アメリカン・フェイロー American Pharoah は引退してしまいましたが、カリフォルニア・クロームは1月のサン・パスカル・ステークス(GⅡ)とドバイに続き、これで5歳シーズンは3戦3勝。BCクラシックで今年のクラシック世代を破り、年度代表馬のタイトルを獲ることが目標でしょう。
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