今年最初のGⅠ戦3連発

3月11日は、サンタ・アニタでGⅠ戦が3戦続けて行われる、今年最初の競馬フェスティヴァル。例年に比べて小粒な印象もありましたが、終わって見れば実力馬が順当に力を発揮した一日となったようです。

最初に、アケダクト競馬場はトム・フール・ハンデキャップ Tom Fool H (GⅢ、4歳上、6ハロン)一鞍。fast の馬場に8頭が出走し、前走10か月ぶりのアローワンス戦で2着と復調が見えるサッシカイア Sassicaia が2対1の1番人気。去年はアケダクトのトボガン・ハンデ(GⅢ)を制し、カーター・ハンデ(GⅠ)にも駒を進めた(6着)1頭です。
3番人気(4対1)のチーフ・ライオン Chief Lion が逃げて粘りましたが、4番手を進んだ4番人気(5対1)のスパーティエイティス Spartiatis が伸び、チーフ・ライオンを2馬身捉えての優勝。後方3番手に付けていた7番人気(17対1)の伏兵キング・クランツ King Kranz が2馬身4分の1差の3着に追い込み、人気のサッシカイアも後方2番手から追い上げましたが、4着と及びませんでした。
レオン・ブルジーウィッツ厩舎、ラジーヴ・マラー騎乗のスパーティエイティスは、これがG戦初勝利となる7歳せん馬。去年のこのレースにも出走して6着でしたが、前走アケダクトのアローワンス戦に続く2連勝と晩生振りを発揮した形です。もちろん目標はカーター・ハンデでのGⅠ制覇でしょう。

次にオークローン・パーク競馬場のハネービー・ステークス Honeybee S (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)に行きましょうか。ここも馬場は fast 、11頭が参戦し、未だこれが3戦目ながら、前走一般ステークスでの2着が評価されたイレート Elate か゜9対5の1番人気。
9銀人気(29対1)の伏兵サムデイ・スーン Someday Soon が逃げましたが、4番手に付けた2番人気(5対2)のイット・ティズ・ウェル It Tiz Well が第3コーナーで3番手に上がり、直線で抜けると、後方から追い込む8番人気(22対1)のベンナー・アイランド Benner Island を1馬身抑えて優勝。イレートも良く伸びましたが、3馬身4分の3差の3着に終わりました。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、コーリー・ナカタニ騎乗のイット・ティズ・ウェルは、これで5戦3勝2着1回3着1回と一度も掲示板を外しておらず、これがG戦初勝利。サンタ・アニタのデビュー千こそ3着でしたが、2戦目にロス・アラミトスで初勝利。1月のサンタ・イネズ・ステークス(GⅡ)でいきなり2着し、前走2月のサンタ・アニタでアローワンス戦に勝ち、ここまで順調に成長してきた1頭です。

そして、フロリダはタンパ・ベイ・ダウンズ競馬場からG戦3鞍。最初のフロリダ・オークス Florida Oaks (芝GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)は芝コースの3歳牝馬戦で、firm の馬場に1頭が取り消しての8頭立て。2歳時にキーンランドでジャスミン・ステークス(芝GⅢ)に勝ち、BCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフでも6着に入ったラ・コロネル la Coronel が4対5の断然1番人気。
レースは6番人気(34対1)ライク・ア・ハリケーン Like a Hurricane の逃げで始まり、ラ・コロネルは6番手待機。徐々に進出した本命馬が一旦は直線で先頭に立ちましたが、前半は最後方に控えていた3番人気(4対1)のフィフティー・ファイヴ Fifty Five が第3コーナーから捲る様に仕掛け、最後はラ・コロネルを首差捉えた所がゴール。4番手から伸びた2番人気(5対2)のコンペルド Compelled が半馬身差の3着でした。勝時計1分41秒60は、ステークス・レコードだそうです。
トーマス・ブッシュ厩舎、ホセ・オルティス騎乗のフィフティー・ファイヴは、これで5戦3勝。2戦目にアケダクトで初勝利を挙げ、2歳シーズンを終了。今期はガルフストリームでアローワンス戦に勝って幸先よくスタートし、前走スイーテスト・チャント・ステークス(芝GⅢ)で3着(この時はコンペルドが2着)してのG戦初制覇。前走同様、後方一気の差し脚勝負を得意とする芝馬です。

続くヒルスボロー・ステークス Hillsborough S (芝GⅡ、4歳上牝、9ハロン)は、去年からGⅡに昇格した一戦。10頭が参戦し、去年の2着馬でG戦に4勝、前走エンデヴァー・ステークス(芝GⅢ)も快勝して好調のイザベラ・シングス Isabella Sings が今年こそということで、2対1の1番人気。
そのイザベラ・シングスがスタートから先手を取って逃げ切る構えを見せましたが、4番手を進んだ2番人気(3対1)のディッキンソン Dickinson が直線で本命馬を外から捉えると、更に外を6番手追走から追い込む3番人気(7対2)エリシーズ・ワールド Elysea’s World を半馬身抑えての差し切り勝ち。イザベラ・シングスは粘りながらも、更に1馬身4分の1差で3着に終わりました。
キアラン・マクローリン厩舎、パコ・ロペス騎乗のディッキンソンは、前走2月11日のスワニー・リヴァー・ステークス(芝GⅢ)に続く芝G戦2連勝。これまで未勝利戦、アローワンス戦の4勝に加え、5歳になって充実の時を迎えたようです。

タンパ・ベイの最後は、文字通りタンパ・ベイ・ダービー Tampa Bay Derby (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。fast のメインコースに10頭が揃い、G戦は未勝利ながら前走、サム・F・デーヴィス・ステークス(GⅢ)で2着して注目を集めたタプリット Tapwrit がイーヴンの1番人気。
6番人気(9対1)のステート・オブ・オナー State of Honor が逃げて速いペースを演出しましたが、慌てず後方3番手に待機したタプリット、早くも第4コーナーで外から一気に先頭を奪うと、直線は独り舞台。粘るステート・オブ・オナーに4馬身半差を付けて格の違いを見せ付けました。後方2番手から追い込んだ3番人気(5対1)のワイルド・ショット Wild Shot が1馬身半差の3着。勝時計1分42秒36は、ステークス・レコードでもあり、トラック・レコードでもあります。
トッド・プレッチャー厩舎、ホセ・オルティス騎乗のタプリットはデビュー戦、サラトガでは最下位10着大敗のスタートでしたが、2戦目にガルフストリーム・パーク・ウエストで初勝利。続いてガルフストリームの一般ステークス(パルピット・ステークス)にも連勝し、前走初挑戦のG戦で2着。その時に勝ったマクラッケン McCraken がここを故障で回避したため、実力通りのG戦初勝利に繋がりました。これで獲得したダービー・ポイントは通算で54、間違いなくプレミエ・クラシックを狙える1頭でしょう。

土曜日の最後はサンタ・アニタ競馬場ですが、G戦は4鞍。今年初めて一日にGⅠ戦3鞍の競馬祭りとなりました。最初はクラシック前哨戦のサン・フェリペ・ステークス San Felipe S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。7頭が出走し、3戦無敗で既にG戦を2勝しているマスタリー Mastery が4対5の圧倒的1番人気。
終始半馬身差で逃げていたマスタリー、直線に入るや本領を発揮、見る間に後続を突き放すと、3番手から進出した3番人気(3対1)のイリアッド Iliad に6馬身4分の3差を付ける圧勝です。鞍上は手綱を抑えたままの大楽勝。1馬身4分の3差で、最後方から追い上げた無欲の6番人気(60対1)ターム・オブ・アート Term of Art が3着。
ボブ・バファート厩舎、マイク・スミス騎乗のマスタリーは、サンタ・アニタでデビュー勝ち。続くボブ・ホープ・ステークス(GⅢ)を連勝し、僅か3戦目でロス・アラミトス・フューチュリティーを制してGⅠホースの仲間入りを果たしました。これが今期初戦、順調にダービー取りに一歩前進したと言えそうですが・・・。目下のところ、ケンタッキー・ダービーの1番人気。しかしレース後、左前脚に軽度の骨折が見つかり、状態によってはクラシックに間に合わないかも。順調に見えたマスタリーですが、俄かに暗雲が立ち込めてきました。

そしてここからが、今期初のGⅠ戦3連発。その第一弾、トリプル・ベンド・ステークス Triple Bend S (GⅠ、4歳上、7ハロン)は、去年までは3歳上の条件で6月のレースだったもの。今年はドバイと対抗するためか、サンタ・アニタ・ハンデ同日の施行となりました。7頭が出走し、2015年のこのレースを制したマソキスティック Masochistic が1対2の1番人気。
そのマソキスティックがスタートから先手を奪ってレースを主導しましたが、1番枠発走から終始内ラチ沿いにレースを進めた4番人気(16対1)のデンマンズ・コール Denman’s Call が、直線でも馬1頭分空いた内ラチ沿いをスルスルと抜け、大本命を1馬身内から差し切っての逆転勝ち。2番手を追走した5番人気(19対1)のコンクェスト・コプラ Conquest Cobra が4馬身4分の1差で3着に入る波乱となりました。
ダグ・オネイル厩舎、タイラー・ベイズ騎乗のデンマンス・コールは、未だこれが8戦目というキャリアの浅い4歳せん馬。勝鞍はデビュー戦以来の2勝目という知られざる1頭ですが、去年はサンタ・アニタ・ダービー(6着)にも参戦したほどに陣営では期待されていた存在で、ここ2戦のアローワンス戦は何れも3着だったもの。G戦初勝利がいきなりのGⅠ勝ちとなるサプライズでした。

次のフランク・E・キルロー・マイル Frank E. Kilroe Mile (芝GⅠ、4歳上、8ハロン)は、firm の芝コースに1頭が取り消して6頭立て。去年の勝馬ワッタ・ヴュー What a View 、一昨年の勝馬リング・ウィークエンド Ring Weekend も出走してきましたが、何故か2走前にマティス・ブラザーズ・マイル(芝GⅢ)を制したコンクェスト・エンフォーサー Conquest Enforcer が5対2の1番人気。
5番人気(7対1)に落ちていたワッタ・ヴューが逃げましたが、4番手の内を追走していた最低人気(9対1)のバル・ア・バリ Bal a Bali が第4コーナーで外に出し、ゴール寸前で粘るワッタ・ヴューを頭差捉えるサプライズ。後方2番手から伸びた3番人気(3対1)のボロ Bolo が1馬身半差の3着に入り、人気のコンクエスト・エンフォーサーは2番手追走も5着に沈み、リング・ウィークエンドも4着に終わる又してもの波乱劇となりました。
リチャード・マンデラ厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のバル・ア・バリは、2015年5月にブラジルから転戦してきた7歳牡馬で、勝鞍はアメリカ・デビューのアメリカン・ステークス(芝GⅢ)以来の久しぶり。その間もG戦の常連でしたが、今回は去年6月のサンタ・アニタ・ゴールド・カップ(GⅠ)8着以来の休み明けで、リフレッシュ効果があったのでしょうか。

そして最後、愈々大一番のサンタ・アニタ・ハンデキャップ Santa Anita H (GⅠ、4歳上、10ハロン)です。9頭立てで、ペガサス・ワールド・カップの覇者アロゲート Arrogate がドバイ遠征に踏み切ったため主役不在の印象ですが、そのペガサスでアロゲートの2着したシャーマン・ゴースト Shaman Ghost が順当に6対5の1番人気。G戦2連勝中のミッドナイト・ストーム Midnight Storm が7対5の2番人気で続き、前評判は2頭の一騎打ちムード。
人気の一角ミッドナイト・ストームが逃げ、シャーマン・ゴーストは3番手辺りを追走。第3コーナーで早くも追い出しにかかった本命馬、ライヴァルが楽な手応えで逃げ切るかに見えましたが、最後は離れた外からジワリと差を詰め、最後は4分の3馬身ミッドナイト・ストームを捉えて人気に応えました。後方2番手から追い込んだ5番人気(18対1)のフォロー・ミー・クレフ Follow Me Crev が4馬身半差の3着。
ジェームス・ジャーキンス厩舎、前のレースに続きハヴィエル・カステラノが騎乗したシャーマン・ゴーストは、去年のブルックリン・ハンデ(GⅡ)、ウッドワード・ステークス(GⅠ)に続く3つ目の勲章。ウッドワードの後はクラーク・ハンデ(GⅠ)でも3着しており、最早GⅠ戦の主力を形成する1頭に成長した5歳牡馬と評して良さそうです。

 

 

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