ドバイに霞んだアメリカの土曜競馬

3月25日の競馬界の話題は、何と言ってもドバイ・ワールド・カップ・シリーズでした。佐々木オーナーのヴィブロスがドバイ・ターフを制した日本も沸きましたが、アロゲート Arrogate が圧巻の後方一気差し切り勝ちを演じたアメリカはそれ以上。
そんな中、アメリカ本国でも4鞍のG戦がひっそりと行われ、どれも波乱の結果となっています。ドバイは一般スポーツ紙の報道に任せるとして、ここでは人知れず北米からのレポートと行きましょうか。

先ずはガルフストリーム・パーク競馬場のスキップ・アウェイ・ステークス Skip Away S (GⅢ、4歳上、9ハロン)。去年は4月第1週でしたが、今年は若干前倒しての施行。fast の馬場に6頭が出走してきました。余り実績の無い馬が揃い、4対5の1番人気に支持されたのは、前走ガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)は5着に終わったズールー Zulu 。その前に一般ステークス(タマラック・ステークス)に勝っている4歳馬です。
レースは4番人気(7対1)のフラッシー・ジェウェル Flashy Jewel が逃げ、ズールーは2番手追走。本命馬に中々エンジンが掛からない中、前半は後方2番手を追走していた3番人気(4対1)のフェア・ザ・カウボーイ Fear the Cowboy がスルスルと外から進出して前を一気に捉えると、漸く内から伸びるズールーに3馬身差を付ける逆転劇となりました。逃げたフラッシー・ジェウェルが首差で3着。
これがG戦初制覇となるエフレン・ローザ厩舎、ヘスス・リオス騎乗のフェア・ザ・カウボーイもまた、G戦は初勝利となる5歳牡馬。ステークスは3勝目、通算では7勝目となりますが、G戦は初挑戦での快挙となりました。今期は2月にデルタ・ダウンズのアローワンス戦に勝ち、前走サム・ヒューストンの一般ステークス(マクシマム・ゴールド・カップ)で2着。若手調教師に大きなプレゼントを齎しています。

続いてケンタッキー州に隣接しているシンシナティのターフウェイ・パーク競馬場から2鞍。隣の州とは言え、ケンタッキーはダービーもオークスも遠いというのが実感でしょうか。コースがオール・ウェザーという点も、クラシックに繋がりにくくしているのかもしれません。
この日は共に50ポイント対象のクラシック・トライアルで、先に行われたのがバーボネット・オークス Bourbonette Oaks (GⅢ、3歳牝、8ハロン)。これも去年は4月第1週でしたが、今年は3月最終週。12頭のフル・ゲートとなり、前走同じターフウェイ・パークで一般ステークス(シンシナティー・トロフィー・ステークス)に勝って2連勝中のデルフィニア Delphinia が9対5の1番人気。
そのデルフィニアがスタートからハナを奪って逃げ切る構えを見せましたが、第4コーナーでは一杯となって後退。替わって一気に先頭に立ったのが6番人気(12対1)のピュアリー・ア・ドリーム Purely a Dream で、2番手を追走した5番人気(8対1)のオウサム・ボス Awesome Boss に2馬身差を付ける小波乱。ケネス・マクピーク厩舎のワン・ツー・フィニッシュとなりました。3番手を進んだ2番人気(3対1)のダークウイングスオーヴァードバイ Darkwingsoverdubai が半馬身差の3着に入り、人気のデルフィニアは11着惨敗。
ロビー・アルバラード騎乗のピュアリー・ア・ドリームは、2歳時2戦目にキーンランドで初勝利。11月のチャーチル・ダウンズデのアローワンス戦は8着大敗でシーズンを終えていましたが、この日は今期初戦、ステークスもG戦も初挑戦での快勝でオークスへの切符を手にしました。

次は、ケンタッキー・ダービーへの出走権を掛けたスパイラル・ステークス Spiral S (GⅢ、3歳、9ハロン)。1頭が取り消して11頭立てとなり、3回使われたGⅢ戦では全て4着以内に入り、前走パーム・ビーチ・ステークス(GⅢ)でも2着しているキッテンズ・キャット Kitten’s cat が5対2の1番人気。
大外枠発走の3番人気(6対1)エン・ハンセ En Hanse が逃げましたが、2~3番手を追走した10番人気(24対1)の伏兵ファスト・アンド・アキュレート Fast and Accurate が第4コーナーで先頭を奪うと、これも最低人気(35対1)のブルーリッジ・トラヴェラー Blueridge Traveler に4分の3馬身差を付ける大波乱。半馬身差で内を衝いた7番人気(10対1)のコンヴィクト・パイク Convict Pike が3着に食い込み、キッテンズ・キャットは外から追い込むも最後は伸びを欠いて4着まで。
このレース2連覇(去年はオスカー・ノミネイテッド Oscar Nominated)、通算では4勝目となるマイケル・メーカー厩舎、タイラー・ガッフォリオーネ騎乗のファスト・アンド・アキュレートは、去年12月、4戦目にターフウエイ・パークで初勝利を挙げ、今期初戦ガルフストリームの一般ステークス(セージ・オブ・モンティチェロ・ステークス、芝コース)にも勝って、これで3連勝。実は三冠レースの登録はありませんが、20万ドルの追加登録料を支払って、50ポイントを獲得したケンタッキー・ダービーに向かう予定です。

土曜日の最後は、サンタ・アニタ競馬場の芝長距離戦サン・ルイ・レイ・ステークス San Luis Rey S (芝GⅡ、4歳上、12ハロン)。馬場は firm 、このジャンルのアメリカ競馬は不人気ですが、それでも12頭が揃い、一昨年の勝馬でG戦4勝のアシュレイラヴズシュガー Ashleyluvssugar が6対5の1番人気。
そのアシュレイラヴズシュガーがハナに立って逃げ切る作戦に出ましたが、相手はこの馬のみと腹を括って2番手をピタリと追走した3番人気(6対1)のイッツインザポスト Itsinthepost が第4コーナーで早くも外から本命馬に並び掛けると、8番手から猛追する7番人気(25対1)のシンタックス Syntax に1馬身差を付ける快勝。アシュレイラヴズシュガーも粘りましたが、1馬身4分の3差で3着に終わっています。
ジェフ・マリンズ厩舎、タイラー・ベイズ騎乗のイッツインザポストは、これがステークスもG戦も初勝利となる5歳せん馬。このレースは最近8年で6勝している通り、せん馬が強いことを強調した結果となっています。2歳時はフランスで走って未勝利。3歳からアメリカに転じて通算では4勝目。しかし今期は前々走がサン・ガブリエル・ステークス(GⅢ)2着、前走もサン・マルコス・ステークス(GⅡ)2着と、G戦獲りは目前に迫っていました。

 

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください