中国マネー、泥んこ馬場のケンタッキー・オークスを制す

5月第1週、アメリカ競馬は愈々三冠レースが始まり、チャーチル・ダウンズ競馬場で金曜日にケンタッキー・オークスが、土曜日にはケンタッキー・ダービーが行われます。
5月5日はオークス・デイですが、今年は金曜日も土曜日も天気予報は雨とのことで、泥んこ馬場の三冠第一弾ということになりそうですネ。

さて既に報道されていると思いますが、オークスは4番人気の伏兵エーブル・タスマンが勝つ波乱で、人気馬は総崩れ。余り気乗りのしない結果となりましたので、今日はベルモント競馬場から先にレポートしていきましょう。
どうやらニューヨークもケンタッキーも雨が降り続いているようで、ベルモント競馬場も馬場は sloppy 。この日行われた唯一のG戦ヴァグランシー・ハンデキャップ Vagrancy H (GⅢ、4歳上牝、6.5ハロン)は、3頭の取り消しがあり8頭立て。去年はプリークネス・デイに行われたG戦です。前走バーバラ・フリッチー・ステークス(GⅡ)で2着したバイ・ザ・ムーン By the Moon が2対1の僅差で1番人気。
泥んこ馬場は、基本的に前に行った方が有利。同じ2対1で2番人気のプリティー・エヌ・クール Pretty N Cool が逃げ、これをピタリと2番手でマークした本命バイ・ザ・ムーンが並んで直線へ。そのまま外から交わしたバイ・ザ・ムーンが、プリティー・エヌ・クールに1馬身4分の3差を付けて人気通りの結果となりました。5番手から伸びた3番人気(5対2)のケイゾン Quezon が3馬身4分の1差で3着。
ミシェル・ネヴィン厩舎、ラジーヴ・マラー騎乗の5歳馬バイ・ザ・ムーンは、2歳時にフリゼット・ステークスを制してGⅠ馬になっており、去年6月のベッド・オー・ロージズ・ステークス(GⅢ)以来となるG戦3勝目。前回のG戦勝ちの後、バレリーナ・ステークス(GⅠ)でも2着、BCフィリー・アンド・メア・スプリントでは5着していました。

そしてここからが、5月開催がスタートしたチャーチル・ダウンズ競馬場。この日はオークスを含めてG戦6鞍、牝馬のG戦が中心です。馬場はニューヨークと同じメインコースが Sloppy 、芝コースは稍重、つまり good の表記です。
最初は古馬牝馬のGⅠ戦、ラ・トロワイエンヌ・ステークス La Troienne S (GⅠ、4歳上牝、8.5ハロン)。1頭が取り消して8頭立てとなり、5戦連続でのG戦挑戦となるペイド・アップ・サブスクライバー Paid Up Subscriber がイーヴンの1番人気。ここ4戦では2・5・2・3着とタイトル獲得には今一歩の馬です。
逃げたのは4番人気(7対1)のビッグ・ワールド Big World 、直線入口では後続馬が外から差を詰めて並ばれたようにも見えましたが、そのままリードを保ち、6番手から追い込んだ6番人気(15対1)のロマンティック・ヴィジョン Romantic Vision に1馬身4分の1差を付けての逃げ切り勝ちです。2番手を追走した5番人気(8対1)のストリームライン Streamline が4分の3馬身差で3着。ペイド・アップ・サブスクライバーは5番手から伸びるも4着まで。
トーマス・エイモス厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のビッグ・ワールドは、2歳時にアケダクトでテンプテッド・ステークス(GⅢ)に勝っていた4歳馬。去年12月にフェア・グラウンズの一般ステークス(ルイジアナ・チャンピオンズ・デイ・レディーズ・ステークス)に勝ってから4連勝で、前走はオークローン・パークのアローワンス戦勝ちでした。ここまで11戦して7勝、勝鞍以外は全て3着という特異な成績の持ち主です。

続いては第6レースのアリシェバ・ステークス Alysheba S (GⅡ、4歳上、8.5ハロン)。1頭が取り消して10頭立てとなり、去年のアイオワ・ダービー(GⅢ)馬でトラヴァース・ステークス(GⅠ)2着以来の休み明けとなるアメリカン・フリーダム American Freedom が3対2の1番人気。
レースは1番枠を利して5番人気(6対1)のバード・ソング Bird Song が飛び出し、アメリカン・フリーダムは2番手を追走。直線、久々が堪えたかアメリカン・フリーダムは次第に外に膨れ、バード・ソングは難なく3番手から追う3番人気(9対2)のオノラブル・デューティー Honorable Duty に1馬身差を付ける逃げ切り勝ち。後方2番手から追い込んだ7番人気(20対1)のインターナショナル・スター International Star が1馬身差の3着に入り、本命馬は結局4着に終わりました。
イアン・ウイルケス厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のバード・ソングは、前走ベン・アリ・ステークス(GⅢ)は3着でしたが、前々走のフレッド・W・フーバー・ステークス(GⅢ)に勝っており、G戦2勝目の4歳馬。チャートル・ダウンズが地元で、初勝利もこのコースででした。次はGⅠ獲りが目標でしょう

この日三つ目のG戦が、good の芝コースで行われた短距離のトゥイン・スパイアーズ・ターフ・スプリント Twin Spires Turf Sprint (芝GⅢ、3歳上、5ハロン)。3頭が取り消しての10頭立て。GⅢ3勝馬で、去年のBCターフ・スプリント3着以来となるピュア・センセーション Pure Sensation が3対2の1番人気。
外枠発走の馬が好スタートから先手を取り、7番人気(23対1)のレイテント・リヴェンジ Latent Revenge が逃げ、ピュア・センセーションは3番手から。直線でムチが入る本命馬に対し、4番手追走から伸びたのが2番人気(3対1)のグリーン・マスク Green Mask 、粘るレイテント・リヴェンジを外から2馬身捉えての優勝です。中団7番手から追い込んだ4番人気(7対1)のホワイ・トゥー Why Two が1馬身4分の3差で3着に入り、人気のピュア・センセーションは4着。これで3戦続けて本命馬は4着という結果になりました。
ブラッド・コックス厩舎、同馬とは初コンビとなるハヴィエル・カステラノ騎乗のグリーン・マスクは、一昨年のBCターフ・スプリントで3着、去年のBCでも5着だった6歳せん馬で、前走シェイカータウン・ステークス(芝GⅡ)2着からのG戦初勝利です。

第8レースからは3歳牝馬によるG戦が続き、先ずエイト・べルズ・ステークス Eight Belles S (GⅡ、3歳牝、7ハロン)。取り消しは無く14頭が参戦し、前走オークス・トライアルの一つファンタジー・ステークス(GⅢ)で5着だったベンナー・アイランド Benner Island が僅かの差で3対1の1番人気。
ダッシュ良く飛び出したのは9番人気(16対1)のラヴリー・ベルナデット Lovely Bernadette でしたが、直ぐに1番枠スタートの本命変なー・アイランドが交わしての逃げ。直線、4番手から外を回った7番人気(14対1)のゴールデン・ミスチーフ Golden Mischief が先頭に立ちましたが、内ラチ沿いに進路を取ったベンナー・アイランドが二の足を使って再び先頭を奪うと、前半10番手の後方を進んでいた3番人気(4対1)のユニオン・ストライク Union Strike の猛追をギリギリ頭差凌いで人気に応えました。8番手から伸びた11番人気(49対1)の伏兵ラネー Laney が1馬身半差の3着。
勝馬は、前のレースに続いてブラッド・コックス厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗。ステークスもG戦も初勝利で、前々走のハネービー・ステークス(GⅢ)では2着しており、G戦勝ちも時間の問題だったと言えそうです。オークスを避けて短距離に回ったのが正解。次はGⅠのエイコーン・ステークスを予定している由。

オークスの前に行われたのが、芝のオークスにも相当するエッジウッド・ステークス Edgewood S (芝GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。ここも取り消しは無く13頭が揃い、同じ勝負服で同じ厩舎のラ・コロネル La Coronel とドリーム・ダンシング Dream Dancing が、馬券上もペアとなってイーヴンの1番人気。
3番人気(4対1)のスタリオン・エアレス Stallion Heiress が逃げましたが、8・9番手を進んだ1番人気の2頭、直線ではラ・コロネルが大外から、ドリーム・ダンシングは内で馬群を割って伸び、最後は外のラ・コロネルが半馬身寮馬を抑えるワン・ツー・フィニッシュの快挙となりました。2番手追走から一旦は先頭に立った8番人気(22対1)のスイーピング・バディ Sweeping Paddy が2馬身4分の3差で3着。
ワン・ツー・フィニッシュはマーク・カッセ厩舎、勝馬にはフロラン・ジェルーが騎乗していました。(2着はジュリアン・ルパルーとフランス人コンビ) 勝ったラ・コロネルは2歳時にジャスミン・ステークス(芝GⅢ)に優勝し、BCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフは6着。前々走フロリダ・オークス(芝GⅢ)2着から前走アパラチアン・ステークス(芝GⅢ)を制しており、G戦は3勝目となります。カッセ師によると、ラ・コロネルは今年6月のロイヤル・アスコットに遠征する計画があるそうな。

そして愈々ケンタッキー・オークス Kentucky Oaks (GⅠ、3歳牝、9ハロン)。フルゲートの14頭が揃い、予備登録の1頭は結局除外となりました。オークスの主要なトライアルは6レースに絞られますが、6対5の1番人気に支持されたパラダイス・ウッズ Paradise Woods はサンタ・アニタ・オークス(GⅠ)を圧勝した馬。フェア・グラウンズ・オークス(GⅡ)に勝ったファレル Farrell が4対1の2番人気で続き、ガゼル・ステークス(GⅡ)のミス・スカイ・ウォリアー Miss Sky Warrior は6対1の3番人気。トライアル優勝組が人気上位3頭を占めていました。
やはり泥んこ馬場が影響したでしょう、人気のパラダイス・ウッズは先行馬有利と逃げ作戦。これをミス・スカイ・ウォリアーが2番手でマークして直線に入ると、先ず本命馬は急速にバテて内ラチ沿いを力なく後退。一旦は先頭に立った3番人気もやがて後続馬の追い上げに飲み込まれ、最後で躍り出たのは前半最後方に待機していた4番人気(9対1)のエイベル・タスマン Abel Tasman 。やはり11番手から足を伸ばしてきた6番人気(12対1)のダディーズ・リル・ダーリング Daddys Lil Darling に1馬身4分の1差を付ける波乱となりました。更に1馬身差で6番手を進んだ8番人気(36対1)のロックダウン Lockdown が3着に入り、パラダイス・ウッズは11着、ファレルは最下位14着、ミス・スカイ・ウォリアーも8着と上位人気馬は総崩れです。
他にもガルフストリーム・パーク・オークス馬ソルティー Salty (9対1、5番人気)は5着、アシュランド・ステークスのセイラーズ・ヴァレンタイン Sailor’s Valentine (45対1、13番人気)が6着、ファンタジー・ステークスのエヴァー・ソー・クレヴァー Ever So Clever (28対1、7番人気)も9着でした。
ボブ・バファート厩舎、マイク・スミス騎乗のエイベル・タスマンは、サンタ・アニタ・オークスでは1番人気に推されながら2着に終わった馬で、前走の負けが無ければ優勝候補の筆頭だった1頭。勝たれてみれば当然だったのかも。因みにダディーズ・リル・ダーリングはアシュランドの2着、ロックダウンもガゼル2着でしたから、今年のオークスはトライアル2着組が1着から3着までを独占したことになります。
エイベル・タスマンにとってGⅠ戦は、2歳時のスターレット・ステークスに続く2勝目。3歳初戦のサンタ・イザベル(GⅢ)2着、そしてサンタ・アニタ・オークス2着に続いての今期初勝利となります。
バファート師は1999年のシルヴァーバレットデイ Silverbulletday 、2011年のプラム・プリティー Plum Pretty に続く3度目のオークス。スミス騎手も2013年のプリンセス・オブ・シルマー Princess of Sylmar に次いでオークスは2勝目となりました。オーナーは中国人が馬主に名を連ねるチャイナ・ホース・クラブ。代表はテオ・アー・キン(漢字は調べていません)という人で、どうやら金満建築家とのこと。今年1月に同馬を爆買いし、中国マネーで射止めた金的と言えそうです。もちろん中国ではギャンブルは違法のため、シンガポールが拠点。世界中で名馬を買い漁っているグループで、オーナーの勝負服が中国国旗ソックリなのが気になります。個人的には後味の余り良くないオークスでした。

 

 

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