クラシックの谷間
今週のアメリカ競馬は、ケンタッキー・ダービーとプリークネス・ステークスの谷間。3つの競馬場で6鞍のG戦が行われています。
東海岸のニューヨークから始めましょう。
ベルモント・パーク競馬場は雨、今年のアメリカ競馬はここに来て雨に祟られているようですが、それでも予定されていたG戦4鞍が無事に行われました。
最初のピーター・パン・ステークス Peter Pan S (GⅢ、3歳、9ハロン)は、やがて来るベルモント・ステークスに向けた前哨戦でもありますが、去年までGⅡだつたものが今年から降格されています。sloppy の泥んこ馬場に6頭が参戦し、目下2戦2勝の新星タイムライン Timeline が2対5の1番人気。
3番人気(6対1)ミーンタイム Meantime の逃げを2番手でマークしたタイムライン、逃げ馬が第4コーナーで外に大きく膨れるのを見てインを衝き、そのままミーンタイムに3馬身半差を付けて余裕の3連勝です。3番手を進んだ4番人気(8対1)のインプレッシヴ・エッジ Impressive Edge が1馬身半差の3着に入り、泥んこ馬場ならではの前残り競馬。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のタイムラインは、3月にガルフストリームでデビュー勝ちし、4月アケダクトのアローワンス戦に連勝(13馬身半差!)。G戦・ステークスとも初挑戦でベルモント・ステークスが見えてきました。
ベルモントの二つ目は芝のボーゲイ・ステークス Beaugay S (芝GⅢ、4歳上牝、8.5ハロン)。雨でもダートコースに変更されることはなく(外のコースに代わりましたが)、yielding の馬場に2頭が取り消して6頭立て。去年のダイアナ・ステークス(芝GⅠ)に勝ったチリ産馬のダシータ Dacita が、今期初戦で2対1の1番人気。
4番人気(7対2)のホークスモア Hawksmoor が飛び出し、ダシータは最後方から。直線もそのままリードを保ったホークスモア、大外から追い込む本命ダシータを頭差凌いでの逃げ切り勝ちとなりました。4番手を進んだ2番人気(5対2)のタイム・アンド・モーション Time and Motion が4分の3馬身差で3着。
アルノー・ドラクール厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のホークスモアは、去年ドイツの1000ギニーを制したアイルランド産4歳馬。2歳時にはグッドウッドでプレスティージ・ステークス(GⅢ)に勝っており、フランスに遠征してサン=タラり賞(GⅠ)でも2着した実績もあります。去年の秋にキーンランドでクィーン・エリザベス2世カップ(芝GⅠ)でアメリカ・デビューして3着、11月のチャーチル・ダウンズデはミセス・リヴィア・ステークス(芝GⅡ)で6着となり、これが今期初戦でした。
続いても芝コースで、今度はGⅠ戦のマンノ・ウォー・ステークス Man o’War S (芝GⅠ、4歳上、11ハロン)。ここも3頭の取り消しが出て5頭立て。ヨーロッパから遠征してきた牝馬のズーコーヴァ Zhukova が4対5の断然1番人気に支持されていました。
レースは4番人気(9対1)チャーミング・キッテン Charming Kitten の逃げで始まり、ズーコーヴァは2番手に待機。第4コーナーで前を捉えた大本命、直線では桁違いの末脚を発揮して後続を見る間に引き離すと、3番手を追走していた5番人気(10対1)のタグリーブ Taghleeb に6馬身差の圧勝で実力を見せ付けました。4番手から追い上げた3番人気(7対2)のサドラーズ・ジョイ Sadler’s Joy がハナ差の3着。去年の勝馬でドイツ産馬ウエイク・フォレスト Wake Forest は後方のまま5着最下位に終わっています。
アイルランドでデルモット・ウェルド師が管理し、今回はジョン・ヴェラスケスが騎乗したズーコーヴァは、去年のこの時期に地元でブルー・ウインド・ステークス(GⅢ)に優勝。9月にはエンタープライズ・キッターマン・ステークス(GⅢ)でオブライエン厩舎の牡馬ユーエス・アーミー・レンジャー US Army Ranger を破って優勝しており、去年の4月にはアレッジド・ステークス(当時はリステッド戦)であのファウンド Found を破ったこともあります。今期は既にコークの一般ステークス(ノーブレス・ステークス)に勝っており、国際的な長距離5歳牝馬として更に活躍が見込めそうです。
ベルモントの最後は、かつてはGⅠ戦だったラフィアン・ハンデキャップ Ruffian H (GⅡ、4歳上牝、8ハロン)。出走馬は当初から5頭と少なく、何故かゴー・フォー・ワンド・ハンデ(GⅢ)で4着でしかなかったバー・オブ・ゴールド Bar of Gold が6対5の1番人気。
レースは3番人気(3対1)のインダルジェント Indulgent の逃げで始まり、バー・オブ・ゴールドは4番手から。2番手を進んだ4番人気(5対1)のハイウェイ・スター Highway Star が一旦は3番手に下がりながらも、第4コーナーで内ラチ沿いに抜け出すと、大外から追い込む本命バー・オブ・ゴールドを半馬身抑えての優勝。早目に2番手に上がっていた2番人気(5対2)のハイ・リッジ・ロード High Ridge Road が2馬身4分の1差で3着に入りました。オーナー(共に生産者でもある)にとってはワン・ツー・フィニッシュでもあります。
ロドリゴ・ユビーヨ厩舎、エンジェル・アロヨ騎乗のハイウェイ・スターは、前走ディスタッフ・ハンデ(GⅢ)に続くG戦2連勝。去年12月のアケダクトでもゴー・フォー・ワンドに勝っており、G戦は3勝目となりました。
次はアーリントン・パーク競馬場のハンシン・カップ・ステークス Hanshin Cup S (GⅢ、3歳上、8ハロン)。阪神競馬場のアーリントンカップとの友好レースで、オール・ウェザー・コース、fast の馬場に11頭立て。去年はアローワンス戦ばかりを6連勝し、前走ローレルの一般ステークス(ヘンリー・クラーク・ステークス)で3着しているゴースト・ハンター Ghost Hunter が3対1の1番人気。
3番人気(5対1)のワイアス Wyeth が逃げましたが、3番手を進んだ8番人気(25対1)の伏兵クルーマン Crewman が直線中央から抜け、4番手から追い込んでゴール直前前が塞がって行き場を失い、外に持ち出して懸命に差を詰めたゴースト・ハンターを首差抑えてのサプライズ。逃げ粘ったワイアスがハナ差の3着でしたが、惜しかったのはゴースト・ハンターでしょう。前の2頭の間を衝いたものの前が開かず、この点は審議になりましたが前の2頭に瑕疵はなく、しかも追い込んで2着だったのですから、文句のつけようもありませんでした。
ディー・プーロス厩舎、カルロス・マルケス騎乗のクルーマンは、これが通算で6勝目となる6歳せん馬で、G戦は初勝利。ステークスはターフウェイ・パークの一般ステークス(フォアゴー・ステークス)に勝ったことがありましたが、G戦に走ったのは去年のハンシン・カップ7着だけだったというのが奇遇。前走キーンランドのアローワンス戦4着からの巻き返しでした。
土曜日最後のアメリカ競馬は、サンタ・アニタ競馬場のラザロ・バレラ・ステークス Lazaro Barrera S (GⅢ、3歳、7ハロン)。fast の1頭が取り消して5頭立てとなり、サンタ・アニタ・ダービー(12着)までクラシック路線に留まっていたアメリカン・アンセム American Anthem が4対5の圧倒的1番人気。
4番人気(9対1)サットン・インパクト Sutton Impact の逃げを4番手に控えていたアメリカン・アンセム、第4コーナーで前2頭を外から捉えると、最後方から追い込む2番人気(2対1)のキンベア Kimbear に1馬身4分の3差を付けて人気に応えました。3番手を進んだ3番人気(3対1)のアリストクラティック Aristocratic が4馬身4分の3差で3着と、人気通りの結果。
ボブ・バファート厩舎、マイク・スミス騎乗のアメリカン・アンセムは、今年のケンタッキー・オークスをエイベル・タスマン Abel Tasman で制したチャイナ・ホース・クラブが中心となる共同オーナーで、調教師も騎手もオークスと同じコンビネーション。また中国国旗風の勝負服が先頭を駆け抜けています。12月のデル・マーで新馬勝ちして以来の勝鞍ですが、その間シェイム・ステークス(GⅢ)2着、レベル・ステークス(GⅡ)10着、そしてサンタ・アニタ・ダービーと3戦続けてG戦を使ってクラシックを模索。結局ダービーは断念し、ここでG戦初勝利を獲得しました。
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