デットーリ、4度目のオークス

6月の第1金曜日はオークス。昨日はエプサム競馬場でGⅠ戦が2鞍行われましたが、先に第5レースのオークス Oaks (GⅠ、3歳牝、1マイル4ハロン6ヤード)をレポートしましょう。

馬場は good ですが、スタート前にエプサム・ダウンズは雷鳴と電光が轟く突然の嵐。枠順を紹介したように10頭が枠入りを始めましたが、この雷に驚いた米国馬ダディーズ・リル・ダーリング Daddys Lil Darling がゲートインを拒否、結局彼女を除いた9頭立てで行われました。
8対11の1番人気は予想通り1000ギニー2着のロードデンドロン Rhododendron で、血統から距離不安があることも指摘されています。今年のエプサム・クラシックはオブライエン vs ゴスデンの対決色が強く、2番人気は6対1のイネイブル Enable 。もちろんゴスデン厩舎で、英国ファンの期待も背負う1頭。ゴドルフィンのソーベツ Sobetsu も同じ6対1で2番人気に並んでいました。

スタートの時点で雨が降り出していましたが、レース半ばからは豪雨。視界も乏しくなる中でレースが進みます。
スタートから1ハロンはソーベツが先手を取りましたが、直ぐに本命馬のペースメーカーでもある最低人気(50対1)ポケットフルオブドリームズ Pocketfullofdreams が先頭を奪い、後続に大きな差を付けてタテナム・コーナーへ。直線に入ると直ぐ逃げ馬と2番手に付けたソーベツが脱落、替わって3番手を進んだイネイブルと、4番手でマークしたロードデンドロンとのマッチレースに。
内のデットーリ騎乗イネイブルに外からムーア騎乗のロードデンドロンが並び掛けましたが、最後は本命のスタミナ不足か、イネイブルがロードデンドロンを5馬身突き放しての圧勝。6番手から追い上げた7番人気(16対1)のアルーリングリー Alluringly が6馬身差で3着に入り、オブライエン厩舎は2・3着でした。以下6番人気(14対1)のホースプレイ Horseplay が4着、4番人気(12対1)のコロネット Coronet が5着に入り、期待のソーベツは8着とバテています。
勝時計2分34秒13はオークス・レコードとなりましたが、この馬場にも拘らずレコードとなったのは、2頭が最後まで死闘を繰り広げたためでしょう。因みにレコード・タイムは英国では余り重要なことではなく、日本の様に馬の強さとは繋がらないので念のため。

イネイブルを管理するジョン・ゴスデン師は、2014年のタグルーダ Taghrooda に続く2度目のオークス。また騎乗したデットーリは4度目のオークス制覇となります。デットーリの最初のオークスは1994年のバランシン Balnchine で、これに付いては今年の日本ダービー馬レイデオロの血統プロフィールでも紹介しています。これがデットーリの英国初クラシックでもありました。
1995年にムーンシェル Moonshell 、2002年にカッジア Kazzia とオークスに勝てきたデットーリでしたが、今回のイネイブルは実に15年振りの快挙となります。
またオーナーはフランケル Frankel でも有名なハーリッド・アブダッラー殿下。1997年のリームス・オブ・ヴァーズ Reams of Verse 以来の2勝目で、何れプロフィールを紹介しますが、母もアブダッラー氏がボスを務めるジャドモント・スタッドの勝負服で走った馬でした。

イネイブルは去年11月28日にニューカッスルでデビュー勝ち。2歳時はこの一戦のみで、3歳初戦はニューバリーの条件戦。このレースではウイリアム・ビュイックが乗り、同じゴスデン厩舎/アブダッラー殿下でデットーリ騎乗のシャッター・スピード Shutter Speed の3着に敗れました。このシャッター・スピードがエプサムを回避して仏オークスに向かうことは、同馬がミュジドラ・ステークス(GⅡ)を制した時に紹介した通りです。
3戦目が、前走のチェシャー・オークス(リステッド戦)優勝。この時2着だったアルーリングリーが本番でも3着(11馬身差とは言え)でしたから、チェシャー・オークスも前々走の条件戦の内容も高く再評価されるべきでしょう。
ゴスデン師が3年前に勝ったオークス馬タグルーダは、7月のアスコットでキングジョージも制覇。イネイブルも愛オークスでクラシック・ダブルという目標があるものの、キングジョージという選択肢もありそう。仏オークスをシャッター・スピードで制することになれば、陣営にとっては忙しい夏が待っていることになるでしょう。

そして6月2日にエプサム競馬場で行われたもう一つのGⅠ戦が、第3レースに組まれていたコロネーション・カップ Coronation Cup (GⅠ、4歳上、1マイル4ハロン6ヤード)。馬場発表はオークスと同じ good でしたが、この時点では雨も降っておらず、視界も良好でした。
出走馬は10頭。去年の凱旋門賞2着でBCターフを制したハイランド・リール Highland Reel が9対4の1番人気。もちろんオブライエン/ムーアのコンビで、この日のGⅠダブルを狙う一番手でした。

そのハイランド・リール、いつものようにスタートから主導権を奪っての逃げ。ムーア騎手が手綱を抑えたままタテナム・コーナーから直線、ここで2番手を追走していた3番人気(11対2)でウイリアム・ビュイック騎乗のホークビル Hawkbill が並び掛け、一旦先頭に立つ勢いながらもムーアは未だ我慢。しかし最後の坂、ムーアが気合を入れて差し返すとホークビルは外に膨れ、開いたスペースに後方2番手から追い込む5番人気(9対1)のフロンティアーズマン Frontiersman に1馬身4分の3差を保ったまま堂々の逃げ切り勝ちです。
3馬身半差が開いてホークビルは3着、2番人気(7対2)でゴスデン/デットーリ・チームのジャーニー Journey は、4番手追走も最後は力尽きて5着に終わりました。

オブライエン師はコロネーション・カップ、2005年にイェーツ Yeats で制して以来、2011年から2013年までのセント・ニコラス・アベイ St Nicholas Abey の3連覇を含めて8勝目。ムーア騎手は2009年のアスク Ask 、2011年のセント・ニコラス・アベイに続く3勝目となります。
ハイランド・リールは、これがGⅠ戦5勝目。一昨年3歳時にはセクレタリアート・ステークスと香港ヴァーズ、去年はキングジョージとBCターフを制しましたが、凱旋門賞と香港ヴァーズは共に2着でした。香港を半馬身差で制したサトノクラウンが出ていれば、という憶測も成り立ちますが、朝4時に自厩を立って午後3時に難コースのエプサムでGⅠを制するハード・スケジュール、7か国で22戦もこなしてケロッとしているこの馬のタフさは別のものでしょう。
この後はロイヤル・アスコットのハードウィック・ステークス(GⅡ)を使ってキングジョージ連覇へ、というスケジュールでしょうか。そして秋は世界各国に向かって再び旅立つことが予定されています。

 

 

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