チャーチル・ダウンズのイヴニング開催
三冠レースを終えたアメリカ競馬ですが、これからは秋のブリーダーズ・カップに向けて長い優先出走権争いが続いて行きます。
6月第3週はケンタッキー州のチャーチル・ダウンズでG戦が5鞍並びましたが、これは夕方からの開催のため今現在未だ結果が入っていません。
ということで、今回はモンマス・パーク競馬場のサルヴァトール・マイル・ステークス Salvator Mile S (GⅢ、3歳上、8ハロン)から始めましょう。去年は7月2日に開催されていた一戦。雨に煙っても馬場は fast 、9頭が出走し、前走ピムリコ・スペシャル(GⅢ)で3着したネーム・チェンジャー Name Changer が僅かの差で3対1の1番人気。
スタートは3番手だった6番人気(9対1)のクラッシー・クラス Classy Class が第1コーナーを過ぎて内からスルスルと先頭を奪うと、5番手から追い込む8番人気(21対1)のジャスト・コール・ケニー Just Call Kenny に2馬身4分の3差を付けての逃げ切り勝ちです。4番手から徐々にポジションを上げてきた最低人気(22対1)のアデロンダック・キング Adirondack King が首差の3着に入り、6番手を進んだ人気のネーム・チェンジャーは5着に敗れるなど、人気上位の馬は全て5着以下となる波乱となりました。
キアラン・マクローリン厩舎のクラッシー・クラス、レース前のパドックで騎乗予定のパコ・ロペスが他の馬に蹴られて負傷したため、急遽アントニオ・ガラード騎手に乗り替わってのG戦、ステークス初勝利となりました。3歳時にはブルー・グラス・ステークス(GⅠ)に出走して5着と言う実績もありますが、前走メリーランド・スプリント・ステークス(GⅢ)では6着。その前にアケダクトのアローワンス戦に勝っていた5歳牡馬です。
そうこうしている内に、カリフォルニアのサンタ・アニタ競馬場からも結果が入ってきました。芝コースの3歳牝馬戦ハネムーン・ステークス Honeymoon S (芝GⅡ、3歳牝、9ハロン)は firm の馬場に6頭立て。ここまで6戦して無敗のサーキャット・サリー Sircat Sally が1対5の断然1番人気です。
最低人気(45対1)のタップ・イット・オール Tap It All が後続を引き離して逃げましたが、楽に2番手を追走していたサーキャット・サリーが第4コーナーでこれを外から捉えると、後方2番手から伸びる並んだ2番人気(9対2)のボー・リコール Beau Recall の猛追を首差抑えて無敗の連勝記録を「7」に伸ばしました。4番手を進んだ同じ2番人気のパシフィック・ウインド Pacific Wind が1馬身4分の1差で3着。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のサーキャット・サリーは、これで4月のプロヴィデンシア・ステークス(芝GⅢ)、5月のセニョリータ・ステークス(芝GⅢ)とG戦も3連勝でGⅡ戦は初勝利。次はGⅠ戦という順番ですが、この日は最後で詰められましたから、次走こそが試金石となりそうです。8月半ばのデル・マー・オークスがその舞台でしょうが、間にもう一叩きというローテーションが予想されます。
サンタ・アニタのもう一鞍は、ダートコースのサマータイム・オークス Summertime Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。fast の馬場に1頭が取り消して8頭立て。ハネービー・ステークス(GⅢ)の勝馬で、サンタ・アニタ・オークス3着以来となるイット・ティズ・ウェル It Tiz Well が6対5の1番人気。
7番人気(19対1)のシーザ・チャッティーキャット Sheza Chattykat が逃げましたが、2番手に付けていた2番人気(7対2)のフェイピエン Faypien がこれを外から捉え、後方3番手から更に外を通って追い込む5番人気(10対1)のモーポティズム Mopotism を頭差抑えて優勝。最後方から内を衝いて伸びた4番人気(5対1)のマジェスティック・クオリティー Majestic Quality が半馬身差の3着に食い込み、イット・ティズ・ウェルは4番手追走も1馬身及ばず4着止まりでした。
ボブ・バファート厩舎、ラファエル・べハラノ騎乗のフェイピエンは、3月のデビュー戦こそ3着でしたが、2戦目で初勝利を挙げるとここまで3連勝。前走一般ステークス(エンジェルズ・フライト・ステークス)に続くステークスも2連勝で、全てサンタ・アニタでの競馬です。新たなスターの誕生でしょうか。
最後に結果が入ってきたのが、チャーチル・ダウンズ競馬場。5鞍のG戦のトップバッターはマット・ウイン・ステークス Matt Winn S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。fast の馬場に6頭が出走し、ケンタッキー・ダービー8着以来となるチャーチルでは負け知らずのマクラッケン McCraken が1対5の圧倒的1番人気。
2番人気(8対1)のアクアマリン Aquamarine が好スタートから先頭でペースを作りましたが、スタートの出が悪かったマクラッケンは後方2番手からの競馬。それでも前との差を徐々に詰めた大本命、前3頭の外から並び掛けて直線に入ると、3番手を進んでいた4番人気(10対1)のカーネルスダークテンパー Colonelsdarktemper に2馬身4分の1差を付ける横綱相撲でした。最後方から追い込んだ5番人気(14対1)のソサエティー・ボー Society Beau が4分の3馬身差で3着。
イアン・ウイルケス厩舎、ブライアン・ジョセフ・ヘルナンデス騎乗のマクラッケンは、これでチャーチル・ダウンズ競馬場では4戦4勝。無傷の4連勝でサム・F・デイヴィス・ステークス(GⅢ)を制して1番人気で臨んだブルー・グラス・ステークス(GⅡ)で3着、ケンタッキー・ダービーでは初めて掲示板を外しましたが、ここを快勝してクラシック路線に乗った実力を証明した形です。
続いては古馬の芝戦、ワイズ・ダン・ステークス Wise Dann S (芝GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。8頭が出走し、去年のこのレースで上位3頭を締めた馬たちの再戦。もちろん勝ったプルーヴェン Pleuven が2対1の1番人気。
レースはハナを主張した5番人気(7対1)のチョコレート・ライド Chocolate Ride が逃げ、プルーヴェンは4番手追走。前半は後方3番手を内ラチ沿いに追走していた去年2着で2番人気(3対1)のカサクィ Kasaqui が向正面で外に出し、第4コーナーでは大外を衝いて追い上げると、逃げたチョコレート・ライドを2馬身4分の3差し切って見事去年の雪辱を果たしました。後方2番手から伸びた3番人気(5対1)のコンクェスト・パンセーラ Conquest Panthera が1馬身4分の1差の3着に入り、プルーヴェンは6着敗退。去年3着のサッチャー・ストリート Thatcher Street も7着に終わっています。
イグナシオ・コレアス厩舎、ジェームズ・グレアム騎乗のカサクィは、去年のアーリントン・ハンデ(芝GⅢ)以来の勝鞍で、去年はワイズ・ダン2着の余勢を駆ってアーリントンを制したものでした。前走ターフ・クラシック(芝GⅠ)4着からのリバウンドです。
チャーチル・ダウンズ三つ目のG戦は、BCディスタッフへの優先出走権が掛かったフレール・ド・リ・ハンデキャップ Fleur de Lis H (GⅡ、3歳上牝、9ハロン)。去年、そのBCディスタッフで3着以来となるGⅠ戦2勝馬のフォレヴァー・アンブライドルド Forever Unbridled がイーヴンの1番人気。
6番人気(13対1)の伏兵アポロジャイノットアクセプテッド Apologynotaccepted が逃げ、フォレヴァー・アンブライドルドは後方2番手。逃げ馬が粘って直線でもリードを保っていましたが、大外を回って前との差を詰めた本命馬、鞍上は持ったままの余裕を見せながらも外から突き抜け、逃げるアポロジャイノットアクセプテッドに1馬身4分の3差を付けてGⅠ馬の貫禄を見せ付けました。3番手を進んだ3番人気(4対1)のカランバ Carrumba が3馬身半差で3着。
ダラス・スチュアート厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のフォレヴァー・アンブライドルドは、これが5歳初戦。アップル・ブロッサム・ハンデ、ベルデイム・ステークスに続き、次なるGⅠ戦は? レヴェルの高い古馬牝馬戦線でBCを取るのは至難の業だとは思いますが・・・。
土曜日唯一のG戦は、やはりBCクラシックの優先出走権対象となるスティーヴン・フォスター・ハンディキャップ Stephen Foster H (GⅠ、3歳上、9ハロン)。8頭が出走権を掛けて参戦、しかしここはクラーク・ハンデ(GⅠ)の勝馬でドバイ・ワールド・カップで王者アロゲート Arrogate の2着したガン・ランナー Gun Runner が1対2の圧倒的1番人気。
予定通りスタートから先手を取ったガン・ランナー、直線に入ると後続馬を引き離す一方。直線半ばで鞍上が手綱を抑える余裕を見せながらも、4番手から抜けてきた2番人気(5対1)のオノラブル・デューティー Honorable Duty に何と7馬身の大差を付ける圧勝でした。3番手を進んだ5番人気(10対1)のブレイキング・ラッキー Brealing Lucky が1馬身4分の1差で3着。7馬身差はレースの26年の歴史の中で最大の着差です。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のガン・ランナーは、去年のケンタッキー・ダービー3着馬。トラヴァースも3着でしたが、3歳後半からの充実度は相当なもの。目標はBCでアロゲートを倒して古馬チャンピオンの座に就くことでしょうが、今日のレース内容なら逆転の可能性もあるように思えました。
この日最後のG戦は、3歳牝馬の芝戦リグレット・ステークス Regret S (芝GⅢ、3歳牝、9ハロン)。12頭とフルゲートになり、トライアルとなる前走エッジウッド・ステークス(芝GⅢ)の3・4着馬が上位人気。4着馬ながら前々走アパラチアン・ステークス(芝GⅢ)でも3着だったプロクターズ・レッジ Proctor’s Ledge が5対2の1番人気。
11番人気(33対1)の伏兵ライク・ア・ハリケーン Like a Hurricane が逃げましたが、3番手を進んだ2番人気(7対2)のスイーピング・パディー Sweeping Paddy が抜け出し、9番手から追い込むライヴァルで本命のプロクターズ・リッジを3馬身半抑えて優勝。2番手を追走していた7番人気(18対1)のサマー・ラック Summer Luck が1馬身差の3着でした。
デール・ロマンス厩舎、ルイス・サエズ騎乗のスイーピング・パディーは、上記エッジウッド・ステークスでプロクターズ・レッジに先着して3着だった馬。2歳時にはBCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフに出走して8着に入ってもいましが、G戦はこれが初制覇となります。
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