第一生命ホールのクァルテット・ウイークエンド
6月17日、久し振りに晴海のトリトンで弦楽四重奏曲を聴いてきました。
第一生命ホールで所謂SQW(最初はクァルテット・ウェンズディ、後にクァルテット・ウイークエンド)が始まった当初は、私も毎回のように通って弦楽四重奏の世界を勉強させてもらいました。
あの当時は有名・無名を限らず世界から今旬の団体が登場し、各団体が個性的なプログラムで腕を、表現力を競ったものでした。
しかし企画者が変わり、その方針も採算重視に移行する(逆か)と同時にシリーズは当り障りのないプログラム(譬えが不適切でしょうが)に変貌、私の足も次第に遠のいてしまいました。
今年のSQW、手渡されたプログラムによると、ボルドー国際弦楽四重奏コンクールの優勝団体による3回で纏められているようで、6月4日のアキロンQ、6月10日と17日にシューマンQが登場するという短期フェスティヴァルの趣でしょうか。
私は一押しのシューマンQに出掛けたのですが、最初の10日は横浜の日フィルを優先してパス。2日目だけを聴いた次第です。この2回はセット券としても販売されていたようで、セットで勝った人は初日の演奏後にアフター・コンサートもあったそうな。そこで耳寄りなニュースも流れたと聞いています。
折角ですからシューマンQの2回のプログラムを紹介しておくと、
6月10日 シューマン・クァルテットⅠ
ハイドン/弦楽四重奏曲作品76-4「日の出」
バルトーク/弦楽四重奏曲第2番
~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1」
6月17日 シューマン・クァルテットⅡ
モーツァルト/弦楽四重奏曲第23番「プロイセン王第3」
武満徹/ランドスケープⅠ
~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第13番作品130
というもの。私が聴いたのは2回目の方です。
採算重視の筈にしては客席に空席が目立ったのが気掛かりですが、初日はもっと入っていたのだそうな。
さてシューマンQについては、当欄も声を大にしてその素晴らしさをレポートしてきました。彼らが未だブレイクする前の2012年2月の鶴見サルビア、ボルドー優勝後の2014年11月の鶴見サルビアと第一生命ホール。
私は今回が4回目のシューマン体験ですが、それまでの感想はこちらを読んでください。
2012年のサルビア↓
2014年のサルビア↓
2014年のトリトン
今回の演奏そのものの印象は、前3回と変わりありません。メンバーは2014年の時と同じで、シューマン3兄弟にヴィオラのリザ・ランダルというメンバー。
ただ、プログラムに掲載されていた2014年の写真を見ると、今回はヴィオラとチェロの位置が替っていました。右端にヴィオラが出る配置です。
最初の衝撃から大きく変化したことと言えば、当初はシューマンQとしてのCDが1枚も無かったのに対し、今回は既に3枚目のアルバムがリリースされていること。しかも3枚目はベルリン・クラシックスという堂々たるレーベルで、この5年間で彼らが一気にメジャー化したような印象を持ちました。
それは演奏面でも若干現れていて、これまで以上にスタイルはシンフォニックになり、大ホール向きの演奏に変わりつつあるのではないかと言う予感も。
私にはこれが良いことなのか困ったことなのかを判断する力はありませんが、未知の団体を紹介するという私の役割は終わったのかもしれません。“シューマンQ、評判通り素晴らしいでしょ”とやや遠めに賛同するばかり。これを「出世」と呼ぶのなら、出世が早過ぎます。
今回も盛大なブラヴォ~が飛び交う中(室内楽ではチョッと違和感も)、エリックの流暢な日本語がアンコールを告げます。ハイドンの「鳥」四重奏曲作品33-3から、トリオがヴァイオリン2本だけで演奏されるという奇抜な第2楽章スケルツァンド・アレグレット。
「ハイドンはどれも同じでつまらない」と嘯く音楽家も存在するほどですが、シューマンQのハイドンを聴かせてやりたい。彼らは今までも、そしてこれからも偉大なるパパ・ハイドンの素晴らしさを伝え続けて行くでしょう。
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