2017ロイヤル・アスコット3日目

6月22日、アスコット競馬場の王室開催3日目はレディース・デイ。ロイヤル・アスコットを観戦するためには正装が条件なので私は遠慮しますが、3日目のファッションだけはナマで見たいと思いますね。ハイライト映像もユーチューブに出ていますから、興味ある方はご覧ください。
さて3日目も馬場は good to firm 、前2日と同じく1日6レース、最初の4鞍がG戦ですが、何と言っても注目は第4レースのゴールド・カップでしょう。今年も大接戦にスタンドも揺れていました。

3日目のスタートは、2歳馬の短距離戦ノーフォーク・ステークス Norfolk S (GⅡ、2歳、5ハロン)。1頭が取り消して17頭立て。ここ数年ロイヤル・アスコットの2歳戦と言えばアメリカからウェスリー・ワード厩舎が送り込む快速馬ということで、ここも2戦1勝のマクエリン McErin が13対2の1番人気。但し、地元で2戦2勝のサントリー Santry にも期待が集まり、この2頭がジョイント1番人気と言うことで並んでいました。
直線コースの多頭数、例によってスタンド側と離れた外の二手に分かれますが、4頭を除いてはスタンド側。ここ2日間では圧倒的にスタンド側が有利だったこともあるでしょう。人気のマクエリンも好スタートからハナに立つ勢いでしたが、4番人気(8対1)のカードシャープ Cardsharp とサントリーも最初から好位置で本命馬をマーク。
マクエリンが2頭に交わされて勝負あったかに見えましたが、スタンドから遠い側を走っていた4頭の中から抜け出してきたのが、9番人気(14対1)の伏兵スー・ネイション Sioux Nation 。ゴールインしてみれば、スー・ネイションがスタンド側のサントリーに半馬身先着していました。1馬身半差でカードシップが3着に入り、マクエリンは7着敗退。

勝ったスー・ネイションは、エイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗。このブランドで余り人気が無かったのは、ここまで4戦もしていて勝ったのはコークの未勝利戦のみだったからでしょう。前走カラーのリステッド戦は6着に敗れていましたが、これまでのレースと違って高速馬場になったのが勝因と言えそうです。不利に思えたスタンドから遠い側(枠順では内枠になります)ですが、ムーアによればどちらも馬場状態は同じとのこと。2番枠スタートを巧く利用したムーアの判断が光りました。
オブライエン厩舎はこのレース、2015年のウォータールー・ブリッジ Waterloo Bridge に続いて2度目。

第2レースは、去年までターセンテナリー・ステークス Tercentenary S として行われてきたハンプトン・コート・ステークス Hampton Court S (GⅢ、3歳、1マイル1ハロン212ヤード)。今年、レース名が変わりました。3頭が取り消して(1頭は交通渋滞で間に合わなかったとか)13頭立てとなり、仏2000ギニー5着、仏ダービー6着とクラシックで走って来たオブライエン厩舎のオーダーオブザガーター Orderofthrgarter が100対30の1番人気。仏ダービーは6着と言え、勝馬からは3馬身差でした。
結果的に本命馬のペースメーカーとなった5番人気(8対1)のタジ・マハール Taj Mahar が逃げましたが、これを2番手で追走した2番人気(9対2)のベンバトル Benbatl が残り1ハロンで抜け出し、安全圏にリードを広げると、中団から外を通って追い上げるオーダーオブザガーターに半馬身差を保って優勝。同じく中団から伸びた4番人気(7対1)のミレージ・ダンサー Mirage Dancer が4分の3馬身差の3着に入って順当に収まりました。

ベンバトルは今年のロイヤル・アスコットで絶好調のゴドルフィンの馬で、サイード・ビン・スロール厩舎、若手(未だ21歳)の有望株オイジン・マーフィー騎乗。マーフィーは、これが嬉しいロイヤル・アスコット初勝利となりました。同馬は3歳になってからドンカスターでデビュー勝ちし、クレイヴァン・ステークス(GⅢ)3着、ダンテ・ステークス(GⅡ)2着とクラシック・トライアルで立て続けに好走し、ダービーは5着の逸材です。未だ5戦、父はデュバウィ Dubawi 、今後は10ハロン近辺のGⅠ戦の常連になることは間違いないでしょう。

続いてはアスコット・オークスとも呼ばれるリブルスデール・ステークス Ribblesdale S (GⅡ、3歳牝、1マイル3ハロン211ヤード)。レディース・デイに相応しい一戦でもあります。出走馬は12頭と比較的落ち着いたメンバーで、2対1の1番人気に支持されたのは、クラシックには間に合わなかった良血馬モリ Mori 。3歳になってのデビューは5着でしたが、それから2連勝でG戦初挑戦。何と言っても父フランケル Frankel 、母はGⅠ戦6勝のミッドデイ Midday 、オーナーはジャドモントとあって、ファンの期待が集まるのは当然でしょう。
レースは8番人気(20対1)ザ・スカイ・イズ・ブレイジング The Sky Is Blazing の大逃げで始まります。一時は10馬身、直線に向いた時も7馬身差がありましたが、3番手を進んでいた5番人気(16対1)のハートフォード・ダンサー Hertford Dancer が一気に差を詰めて先頭に立ち、そのまま押し切るかに見えましたが、中団に待機していたモリ、4番人気(9対1)のコロネット Coronet が並んで追い上げ、最後はコロネットがモリを首差抑えてスリリングなフィニッシュを制しました。ハートフォード・ダンサーは1馬身差の3着。

勝ったコロネットは、3着のハートフォード・ダンサー共々ジョン・ゴスデン師の管理馬で、デットーリが騎乗予定だった1頭。今回はフランスからデットーリの友人オリヴィエ・ペリエが呼ばれていました。2歳時に2戦2勝、今期はサン=タラリ賞3着で始動し、オークスは5着だった馬。モリとの叩き合いは、経験の差が制したとも言えそうです。彼女も父はデュバウィ、2レース続けての勝利となりました。
コロネットの愛オークスへのオッズは、レース前の10対1から6対1に上昇。ゴスデン師はイネイブル Enable の目標を愛オークスに置いているので、コロネットの参戦は未定。師はパーク・ヒル・ステークスかセントレジャーを狙っている様子でした。

そして3日目、いやロイヤル開催最大の目玉が、ゴールド・カップ Gold Cup (GⅠ、4歳上、2マイル3ハロン210ヤード)。今年は去年の勝馬、セントレジャー馬2頭が参戦する豪華版で、去年の覇者で凱旋門賞でも3着と大健闘したオーダー・オブ・セント・ジョージ Order Of St George が5対6の1番人気。2連覇を掛けてオブライエン/ムーアのコンビが挑みます。
スタートで先手を取ったのは、2番人気(5対1)で逃げたら強いビッグ・オレンジ Big Orange 。しかし2ハロン進んだ所で8番人気(25対1)のクエスト・フォー・モア Quest For More が替わって先頭を奪い、ビッグ・オレンジは2番手に控えます。一方、オーダー・オブ・セント・ジョージは終始後方3~4番辺りでジックリ機を窺います。
スタートから6ハロン進んだ地点で再びビッグ・オレンジが前に出ると、そのまま直線も後続を離して逃げ切る構え。しかしここに大外からジワジワと迫ってきたのが大本命。残り1ハロンで2番手まで押し上げると、ムーアの一ムチに一歩また一歩と前を追い、スタンドは手に汗握る叩き合いに大歓声。その歓声が届いたのか、懸命に粘るビッグ・オレンジがゴール板ではオーダー・オブ・セント・ジョージを短頭差抑えて逃げ切っていました。先行集団の中から、去年のセントレジャー馬で9番人気(33対1)のハーバー・ロウ Harbour Law が3着に食い込みましたが、前2頭とは6馬身差が付いていました。一昨年のセントレジャー馬で牝馬のシンプル・ヴァーズ Simple Verse は、3番人気(15対2)と期待されながらも最下位惨敗に終わっています。

マイケル・ベル厩舎、ジェームス・ドイル騎乗のビッグ・オレンジは、グッドウッド・カップ2連覇を含め、これがG戦8勝目。本来はデットーリのお手馬ですが、今回は落馬負傷のためドイルに乗り替わり。数日前にデットーリはドイルに電話でビッグ・オレンジの騎乗についてアドヴァイスしていた由。ムーア騎手との最後の叩き合い、ドイルの頭の中ではデットーリの声が響いていたのだそうです。レース後、オブライエン師がベル厩舎のチームを祝福していたのが印象的。
恐らくビッグ・オレンジの次なる目標はグッドウッド・カップ3連場でしょう。この勝利によってハンデがきつくなるメルボルン・カップ、今年は回避するようです。

3日目の残り2レースは、何れも3歳馬限定戦。
第5レースのブリタニア・ステークス Britannia S は牡馬とせん馬のみによる1マイルのハンデ戦。29頭が出走し、11対2の1番人気に支持された3戦2勝のサン・オブ・ザ・スターズ Son Of The Stars が11着に敗れ、25対1のブレス・ヒム Bless Him がスタンドから遠い側を一気に追い込んで優勝。デヴィッド・シムコック厩舎、ジェイミー・スペンサー騎乗。

最後の第6レースは1マイル4ハロンのハンデ戦、キング・ジョージ・5世ステークス Kibg George Ⅴ S 。こちらも4対1の1番人気マスター・シンガー Master Singer が第5レースと同様に11着敗退。7対1のアッティー・パース Atty Persse が3馬身差で圧勝しましたが、父はフランケルで4戦3勝。ロジャー・チャールトン厩舎、見習い騎手のキーラン・シューマークが騎乗していました。

 

 

 

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