クァルテット・エクセルシオ第10回札幌定期演奏会

ブログを暫く更新していなかったのは、この演奏会を聴きに札幌に出掛けていたから。観光も含めて2泊3日、ハプニングもあった演奏会以外の事は別に纏めるとして、ここはコンサートのレポート。

ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第2番ト長調作品18-2「挨拶」
シューベルト/弦楽四重奏曲第11番ホ長調D353
     ~休憩~
ブラームス/弦楽四重奏曲第2番イ短調作品51-2

昨シーズンはサントリーホール・ブルーローズでのベートーヴェン全曲演奏会、続いてドイツ楽旅と多忙な1年を乗り切ったクァルテット・エクセルシオ。そのためもあって去年の定期演奏会は開催されませんでしたが、2017-2018シーズンは通常のスケジュールに復帰。
シーズン最初の定期演奏会として6月27日に札幌コンサートホール Kitara 小ホールで行われたのが、上記のプログラムによる公演です。

もちろん東京でも同じ曲目で7月8日に第32回東京定期が行われますが、生憎小欄は他の演奏会とバッティング。色々悩んだ末に札幌遠征と決め込みました。去年のドイツでツアー癖が付き、今年は札幌ツアーとなった次第。言い出しっぺとして申し訳ないと思っています。

さて中島公園の中に位置するキタラ、これまで札響定期を聴きに何度か大ホールにお邪魔したことはありましたが、小ホールは初めて。もちろんエクの札幌定期も初めてで、全席自由席、ここはやや早めに列に並びます。
見ると年配の紳士淑女たちが並び始め、ホールの事、札幌でのコンサート通いについてご教示くださった方もおりました。東京よりフレンドリーな印象。
今年が開館20周年のキタラ、小ホールは2階まである453席のホールで、大ホールと共に札幌クラシック(ビールじゃなくて)の発信地でもあります。

真っ先に並ぶまでもなく、選べる席は選り取り見取り。ここが満席になるのは余程話題性に富んだ公演だけかもしれません。それでもご教示頂いた淑女のお話では、今回は列ができるのもいつもより早め、列そのものも長目なのだそうな。室内楽ではいつも聴いている辺りの席に陣取って開演を待ちます。

今回の定期、実は事前に2度も触れる機会があって、最初は京葉線の新浦安駅前(というより駅横か)に新装成った浦安音楽ホールでの内覧会。6月22日の木曜日にエクのリハーサルが公開され、新ホールの音響を確かめると同時にシャーベルトとブラームスの一部リハを見てきました。
もう一つが、定期では恒例になっている九品仏の大瀧サロンでの試演会。こちらも口づてに噂が広まっているようで、6月25日に行われた会は今まで最も多くのファンが集う会となりました。
こちらは演奏会と全く同じ順序で全3曲が通して一気に演奏され、終了後は懇親会。最後まで残っていた人は夫々の感想を言い合うなどして、エクとしても意義ある試演会だったようです。

“じゃ、また明後日”という挨拶で別れたファン若干名も、三々五々キタラに集合してきました。内覧会→支援会→札幌本番→東京本番という猛者もおられるでしょう。
プログラムはウィーンを中心に活躍した大作曲家の3曲が年代順に並ぶオーソドックスなもの。前日聴いた現代音楽とは180度違う作品群が並びました。

冒頭のベートーヴェンは、言うまでもなく去年、全曲演奏会を果たした作品の一つ。また気持ちを新たに挑むベートーヴェンを味わいます。
試演会に参加されたエク・フレンズからは、是非もう一度ベートーヴェン全曲をというリクエストが上がったほどに、エクのベートーヴェンは一つのスタンダードに成りつつあると言って良いでしょう。

続いて演奏されたシューベルト作品は、今年エクがテーマにしているシリーズの一環。若書きと言うには完成度が高く。特に第2楽章では転調が大胆且つ頻繁で、これを抵抗なく聴かせるには相当な音楽的技術が必要と聴きました。
内覧会では、ついつい舞台上のエクと“結構複雑な曲ですね”と会話してしまったくらい。もちろんエクとしても初めてのチャレンジ作品で、こういうシューベルトを抵抗なく楽々と演奏して行けるのが理想の姿、とも語っていましたっけ。

明らかにリハーサル、試演会と表現を重ね、札幌ではレヴェルも随分向上していました。もちろん当方が聴き慣れたという要因もありましょうが、東京では更に仕上がったシューベルトが聴けるでしょう。上野で初体験される方、是非円熟一歩手前のシューベルトを堪能してください。
敢えて聴き所を少し紹介すると、ベートーヴェンとは違った刻みの世界。人に勇気を与える、というより聴く者を幸せにするような刻みがシューベルト独特の世界を作り出します。
そして転調が目まぐるしい第2楽章、繰り返し記号が無く、一筆書きの様な第3楽章メヌエットのトリオ部分でしょうか。リハでも繰り返し表現を練り込んでいました。

後半はブラームスの2番。試演会で伺った所では、第1回の定期で取り上げて以来、公式に演奏するのは初めてとか。その所為もあるのでしょうか、演奏として真に良くこなれて居て、ブラームス特有の内面の火が燃え盛るよう。この日も、試演会の場でも最も評価が高い一品でした。

演奏を終え、ホワイエでは初老の紳士が絶賛、“ベートーヴェン、シューベルト、ブラームスと時代順に聴くと、夫々の作曲家の特徴が良く聞き取れ、実に素晴らしい演奏会だった”という声も耳にしました。同感ですネ。
ベートーヴェンがト長調、シューベルトもホ長調とシャープ系の調が並び、ブラームスはイ短調なれど第1楽章の副次主題はイ長調、第2楽章も主調はイ長調だし、3部形式の第3楽章も第2部はシャープ3つのイ長調。第4楽章でも副主題がイ長調に転調するという具合で、プログラムがフラット系の調性で統一されていたことも、演奏会の好印象と安心感に繋がったのではないかと思慮します。

定期演奏会ということてもあり、アンコールは不要。終了後もサイン会、個人的な挨拶、記念撮影といつまでも賑わいの消えないキタラ小ホールでした。

 

 

 

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