京都市響・第8回名古屋公演

今年も行ってきました。猛暑の名古屋へ。このところ夏の行事になった感のある京都市響の名古屋公演、今年は早くも、というか、いつの間にか8年目になったそうです。
広上が京都のシェフになってから、今年が10年目。就任して間もなく始まった名古屋公演は、想像するにマエストロがかつては名フィルの副指揮者(?)を務めていたことがある、という繋がりから実現したのかもしれません。

実は名古屋は家内の実家でもあり、学生時代の音楽好きな友人たちも彼等の公演に通っていたという偶然もあって、今年も一昨年同様4名様ご一行で鑑賞してまいりましたよ。
一昨年と言ったのは、去年は名古屋公演が6月に組まれていて、私共は東京で連日のように室内楽に出掛けていた日々。涙を呑んで欠席したのでした。早速、去年も聴いたというお二人から“悲愴、素晴らしかったがなぁ~”とチクリ。
で、今年は万全を期して次のプログラムに臨みます。

ブラームス/大学祝典序曲
ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
     ~休憩~
ブラームス/交響曲第3番
 指揮/広上淳一
 ヴァイオリン/ピンカス・ズーカーマン
 チェロ/アマンダ・フォーサイス
 コンサートマスター/豊嶋泰嗣(ゲスト)
 フォアシュピーラー/泉原隆志

京響の名古屋公演は、時期は別の大阪公演共々京都での定期とは異なるプログラム、いわば名古屋限定のコンサートというのも魅力。これは京都では聴けないから、というので態々京都から足を伸ばすファンも多いようです。
忘れちゃ困りますが、もちろん東京から遠征する追っ駆けもいるのですゾ。

今回はオール・ブラームス。実は京響、前日と前々日は真ん中の協奏曲だけ別の作品と言うプログラムで定期公演を開催してきたばかり。ブラームスの2曲は定期と同じで、この日が3日連続の公演。演奏の仕上がり具合が半端ではなかったことに納得します。(京都公演はハイレゾで配信されるそうですネ)
因みに京都の定期はで、同じくズーカーマンのソロでベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が取り上げられ、これまた凄い演奏だったとのこと。前の日に京響定期と祇園祭を堪能し、翌日は名古屋と言う選択肢があったのかもしれません。

オーケストラのメンバーが入場すると、名古屋のファンは拍手を以て迎えます。この辺りも東京では見られない珍しい光景。もちろん東京でも海外オケには演奏前の歓迎拍手が起きるようですが、日本のオケにはどちらかと言うと冷静です、よね。
最初は明るい大学祝典序曲。2年振りの愛知県芸術劇場コンサートホールのアクースティックに馴染むまで少し時間を要しましたが、最初からヨーロッパ調の京響サウンドを味わいます。

続いて協奏曲。ズーカーマンと言えば泣く子も黙るヴァイオリニスト、ヴィオリスとでもあり指揮者でもあります。私も随分若い頃から聴いてきましたが、今回は久し振りで、その容姿にも貫録が加わったことに感慨が湧きました。
対するチェロのアマンダ・フォーサイス Amanda Forsyth は、豊かなブロンドの美しい女性で、ご存知ズーカーマンとはご夫妻でもあります。夫人ももちろん京都に同行していて、定期の合間に名古屋公演のリハーサルも行ってきたとのこと。

夫婦である上に、京都でもしっかり準備を重ねてきたブラームスが息が合わないワケはありません。広上/京響も阿吽の呼吸で二人の合奏をサポート。
第3楽章が堂々と締め括られると、ズーカーマンが大げさな身振りで広上とオケを絶賛。彼のこんな派手なガッツポーズを見たのは初めてで、ソリストとオーケストラの息が見事に合った証拠でもありましょう。
後で知ったことですが、京都定期の2日目、即ち7月16日がズーカーマンの誕生日だったそうで、本番では京響メンバーが「Happy Birthday to You」を演奏してズーカーマンを感激させたそうな。その流れで名古屋公演のリハーサルでも広上マエストロからズーカーマンに大型ケーキのプレゼント。そんな裏話もあっての大名演に繋がったのでした。

ここでアンコールがプレゼントされないわけはありませんよね。アマンダさんが楽譜を探したり、譜面台を用意したり(ブラームスではアマンダさんは暗譜、ピンカス氏は譜面を置いて演奏していました)に手間取って、日本語の“ごめんなさい”も。
彼女が告げたアンコール作品は、グリエールのヴァイオリンとチェロのための8つの二重奏曲作品39から、第7曲のスケルツォというもの。エッ、そんな曲があったの、という珍品だし、余りクラシックに縁の無い方には、エッ、そんな作曲家がいるの、というほどでしょう。アマンダさんは頻りに“グリエール”と発音を強調していましたっけ。
それでも拍手鳴り止まず、ズーカーマンがコンマスを、フォーサイスがチェロ主席の手を引いて夫々下手・上手に引き連れて舞台を降り、前半が終了しました。

そしてメインの第3交響曲。今年10シーズン目を迎えた広上が京響で初めて取り組むのがブラームスの交響曲。私もずっと広上を聴いてきましたが、実はブラームスは決して多く取り上げる作曲家ではなかったと思います。
恐らく機が熟すのを待っていた節のある広上のブラームス、確かにスケールの大きさ、楽譜の深い読み、繊細極まりないニュアンス、落ち着いたテンポと秘められた情念の噴出等々、人がブラームスに求めたい全てが盛り込まれた名演、いや超の字を付けなければならないほどのブラームスが其処にありました。

遅いテンポながら決して弛緩せず、微妙な色彩感で描いた第3楽章、巨大な自然力が眼前に聳える様な第4楽章は特に圧巻。4曲あるブラームスの交響曲で最も地味なのが第3番でしょうが、コアなファンが最も大切にしているのが第3交響曲でもあります。
そうした真のブラームス党なら、この日の演奏が如何に素晴らしかったかが理解してもらえるでしょう。
正式に発表されてはいませんが、広上のブラームス・ツィクルスは、今シーズンは10月に第1番を定期で取り上げます。当然京都で聴きますね、ブラームスの交響曲第1番も。

皆さん、これでお終いだと思いますか。川瀬賢太郎じゃないけれど、“バレバレの”アンコールがありました。オール・ブラームス・プロならハンガリー舞曲と思いますが、そうはならないのが広上流。
“北欧の作曲家のロマンス”と曲名を告げて演奏されたのが、先日N響と川崎でも演奏したラーションの田園組曲からロマンス。川崎の時以上に情熱的、全身全霊で立ち向かった弦合奏と聴いたのは気のせいでしょうか、それとも暑さの所為?

今回は日帰りの名古屋旅、ほぼ満席の新幹線で品川駅に降り立つと、名古屋より暑い東京の空気が待っていました。また来年、あるのかなぁ~。

 

 

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