ワイラースタイン姉弟、デュサパンで共演
今年のプロムスも最初の一週間、19日の水曜日はホスト・オケのBBC交響楽団をアメリカの若手指揮者ジョシュア・ワイラースタインが指揮するフランス音楽プグラムでした。
1987年生まれの29歳、これがワイラースタインのプロムス・デビューです。
7月19日 ≪Prom 7≫
ジャン=フェリ・ルベル Jean‐Féry Rebel/バレエ音楽「四大元素」 Les élémens ~第1曲「混沌」 Le cahos
パスカル・デュサパン Pascal Dusapin/Outscape (BBC他の共同委嘱、英国初演)
~休憩~
ベルリオーズ/幻想交響曲
BBC交響楽団 BBC Symphony Orchestra
指揮/ジョシュア・ワイラースタイン Joshua Weilerstein
チェロ/アリサ・ワイラースタイン Alisa Weilerstein
3曲の中で、誰もが知っているのはベルリオーズだけでしょう。手元にスコアがあるのもベルリオーズだけという人も多いでしょうが、実は3曲とも簡単にスコアが見ることが出来るのです。
最初に演奏されたルベルは1666年に生れ、1747年に亡くなったフランスのバロック音楽の作曲家兼ヴァイオリニスト。この四大元素というバレエは、最も特異なバロック作品として知られているそうです。
リュリに師事し、パリ・オペラ座の首席ヴァイオリニストだったルベル、後にコンセール・スピリテュエルの指揮者も務めたそうで、如何にもこの時代の人間らしいマルチ音楽家の一人でした。
今回演奏されたカオスはバレエの前奏、というか序曲に相当する部分で、バレエとしてはこの後、地・水・火・空気が順次演奏されて行きます。冒頭の不協和音に先ず驚かされますが、ここを聴くと我々が普段聴いているバロック音楽が極く一部に過ぎないと痛感させられます。
因みにスコアはペトルッチの無料サイトからダウンロードでき、実際に私も譜面を見ながら聴くことが出来ました。
2曲目は一気に時代が飛んで、2016年に書かれたばかりの新作。デュサパンはサントリーホールのサマーフェスティヴァルでテーマ作曲家にも選ばれましたから、その作品をきかれた方も多いでしょう。
プロムスで演奏されたアウトスケープは実質のチェロ協奏曲で、セロ Celo (魂)と題された作品に続く作曲者2作目のチェロ協奏曲。大自然をテーマにした作品と言う意味でも2作目に当たるのだそうです。
作品については出版社のサラベール社のホームページに詳しい解説があり、下欄のスコアをクリックすると全曲閲覧することが出来ます。私もこれを見ながら二度も聴いてしまいました。
http://www.durand-salabert-eschig.com/en-GB/News/2016/05/Dusapin-Outscape.aspx
今回のソリストであるアリサ・ワイラースタインのために書かれたもので、もちろん彼女のソロでシカゴで初演され、今回が英国初演。
指揮者とチェリストのワイラースタインは5歳違いの姉と弟で、父はクリーヴランド弦楽四重奏団の創設メンバーでファースト・ヴァイオリンのドナルド・ワイラースタイン、母もピアニストという音楽一家に育ったエリート中のエリートですね。
アリサの見事なテクニックに大喝采、アンコールはバルトークの二つのヴァイオリンのための44の二重奏曲集から最後の第44番「トランシルヴァニア舞曲」。
弟が指揮棒をヴァイオリンに持ち替え、第1ヴァイオリンのパートをチェロにアレンジしてのデュオがまたまた喝采を呼び込みます。
後半は何のコメントも要しないベルリオーズ。第1楽章提示部は繰り返しを実行し、第4楽章は繰り返しませんでした。このあともアンコールがあったかもしれませんが、マイクは直ぐにスタジオに返されて番組終了。
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