古巣を指揮したヴォルコフ

イギリスの名曲が二晩続いたプロムス、水曜日はBBCスコティッシュ管が登場し、前任の首席指揮者ヴォルコフが絵画に因んだ作品を集めたプログラムを披露しました。

7月26日 ≪Prom 16≫
リスト/交響詩「ハムレット」
ジュリアン・アンダーソン Julian Anderson/The Imaginary Museum (BBC、ベルゲン・フィルとシドニー交響楽団の共同委嘱、世界初演)
     ~休憩~
リスト/交響詩「揺りかごから墓場まで」
ムソルグスキー=ラヴェル/展覧会の絵
 BBCスコティッシュ交響楽団 BBC Scottish Symphony Orchestra
 指揮/イラン・ヴォルコフ Ilan Volkov
 ピアノ/スティーヴン・オズボーン Steven Osborne

ヴォルコフはイスラエル生まれの41歳、2003年1月に史上最年少(27歳)でBBCスコティッシュの首席指揮者に就任しましたが、現在はアイスランド響の首席指揮者を務めています。
現在のポストにあるオケとも、BBCスコティッシュともプロムスに出演しているので、過去の記録を検索してみれば何点かがヒットしました。
既に都響や名フィルを指揮している模様ですが、私は未だナマ演奏に接したことは無く、専らプロムスの中継で聴いてきた指揮者です。現代作品の録音が多く、いくつかがNMLで試聴可能。

前半も後半もリストの比較的珍しい交響詩で始まりますが、今回の絵画と音楽というテーマに合致しているのがリストの交響詩でしょう。

2曲目、ジュリアン・アンダーソンの新作は6楽章のピアノ協奏曲で、作品のタイトルは想像上の美術館巡りということ。演奏時間は25分程です。
アンダーソンは今年50歳、2014年までの作品はフェイバー・ミュージック社から出版(全てネットで閲覧可能)されてきましたが、現在の出版社はショット。そのショット社のホームページに掲載されているプロフィールは、こちら。

https://en.schott-music.com/shop/autoren/julian-anderson

更に、今回オズボーンに献呈された新曲についても、こんな解説が読めます。

https://en.schott-music.com/shop/the-imaginary-museum-no347808.html

絵画というよりも最初から鳥っぽい音楽ですが、自身が語るインタヴューによると、実際にオーストラリアの鳥の声の模倣も出てくるそうです。

後半を開始するリストの「揺りかごから墓場まで」は、別に社会保障問題を音楽にしたわけではなく、ハンガリーの画家ミハイー・ジチーの同名絵画に触発された作品。
リストには全部で13曲の交響詩がありますが、この作品だけは他から遥か後になって書かれたもので、ロマン派というより現代的な響きを持っているのが特徴でしょう。全体は「揺りかご」「生きるための闘い」「墓場へ」の3部分で構成され、全体は通して演奏されます。タイトルは若い頃の交響詩「前奏曲」を連想させなくもない。
私はこの作品、未だナマ演奏で聴いたことはありません。

最後のムソルグスキー=ラヴェルは説明することもないでしょう。ジュリアン・アンダーソンの新曲のヒントになったのが、オズボーンがアンコールで弾いたラヴェルの「悲しき鳥たち」だった、という話に納得しました。
(去年の Prom 24 、私の感想も残っています)

 

 

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