3歳牡馬戦線、ハスケルも日替わり

アメリカの夏競馬、7月30日の日曜日もサラトガとデル・マーでG戦が1鞍づつ行われましたが、モンマス競馬場でもGⅠのハスケルが行われ、こちらはこれに合わせてG戦5鞍のフェスティヴァルとなっていました。

最初にサラトガ競馬場から紹介すると、この日はシュヴィー・ハンデキャップ Schuvee H (GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。かつてはGⅠ戦だった伝統の一戦ですが、近年では凋落の一途、遂に今年は fast の馬場に3頭立て言うレースになってしまいました。日本中央競馬会は一レースの頭数が減ることを問題視しているようですが、今年のシュヴィー・ハンデを見たら何と思うのでしょうか。それでも単勝馬券は成立し、前走オグデン・フィップス・ステークス(GⅠ)でソングバード Songbird の2着したペイド・アップ・サブスクライバー Paid Up Subscriber が3対5で1番人気。
どの馬が行き、どの馬が勝ってもおかしくないようなレースですが、結局は2番人気(イーヴン)のテラ・プロメッサ Terra Promessa が逃げ、3番人気(6対1)のアポロジャイノットアクセプテッド Apologynotaccepted が2番手、本命馬が最後方で落ち着きます。とは言っても3頭は1馬身半の中に納まる一団。第3コーナーでペイド・アップ・サブスクライバーが一気に外からハナを奪うと、後は2頭を引き離す一方。アナウンサーが“further, and further, and further, and further”と繰り返したように、何とゴールではテラ・プロメッサに32馬身半差を付けていました。4馬身差でアポロジャイノットアクセプテッドが3着。それにしても32馬身というのは余り聞いたことのない着差ですし、「半」というオマケが付くのも良く判りません。日本なら「大差」で片付くでしょうに。
チャド・ブラウン厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のペイド・アップ・サブスクライバーは、去年6月にチャーチル・ダウンズでフルール・ド・リ・ハンデ(GⅡ)に勝って以来の勝鞍で、G戦も2勝目。この間6連敗中でしたが、前走の他にもマディソン・ステークス(GⅠ)3着、ラ・トロワイエンヌ・ステークス(GⅠ)4着とGⅠ戦でそこそこの成績を残してきた5歳馬。ここは勝って当然と言えるでしょう。

ここからはモンマス・パーク競馬場のフェスティヴァルに行きましょう。G戦は全部で5鞍で、最初は モンマス・カップ・ステークス Monmouth Cup S (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。fast の馬場に1頭が取り消してここも4頭立てと少頭数。前走メトロポリタン・ハンデ(GⅠ)で2着したシャープ・アズテカ Sharp Azteca が3対10の圧倒的1番人気。
2番人気(5対1)クラッシー・クラス Classy Class の逃げを2番手でマークしたシャープ・アズテカ、第4コーナーの手前で早々と先頭に立つと、3番手から追い縋る4番人気(6対1)のドネガル・ムーン Donegal Moon に7馬身半の大差を付けて人気通りの圧勝です。最後方を進んだ3番人気(6対1)のジャスト・コール・ケニー Just Call Kenny が更に3馬身4分の1差で3着。勝時計の1分40秒19はトラック・レコードのオマケ付き。
ホルヘ・ナヴァロ厩舎、パコ・ロペス騎乗のシャープ・アズテカは、これがG戦3勝目となる4歳牡馬。今期初戦にガルフストリーム・パーク・ハンデ(GⅡ)にも勝っており、今シーズン二つ目のG戦勝ちとなりました。

モンマス競馬場二つ目のG戦は、モンマス・ステークス Monmouth S (芝GⅡ、3歳上、9ハロン)。去年は施行されておらず、2年振りの開催となりました。firm の芝コースに6頭が参戦し、前走BCターフ6着以来の休養明けとなるマネー・マルチプライアー Money Multiplier が4対5と2倍を切る1番人気。
外枠から飛び出した5番人気(13対1)のスムース・ダディー Smooth Daddy が逃げ、マネー・マルチプライアーは3~4番手追走。第3コーナーでは早くも先頭に立った大本命、2番手を追走していた2番人気(5対2)のアイリッシュ・ストレイト Irish Strait に1馬身半差を付けて見事人気に応えました。同じく1馬身半差で、5番手から伸びた3番人気(4対1)のカラーファ Kharafa が3着と順当。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のマネー・マルチプライアーは、これが意外にもステークスもG戦も初勝利となる5歳せん馬。ここまでG戦は未勝利ながら、ハリウッド・ダービー8着からGⅠ戦ばかり6連戦し、その合間にアローワンス戦に勝ってきてこれが通算での4勝目。マンノ・ウォー、ユナイテッド・ネイションズ、ソード・ダンサーと3つのGⅠ戦で2着しており、次は8月26日にサラトガで行われるソード・ダンサー・ステークスで正真正銘のGⅠ馬を目指します。

続くモーリー・ピッチャー・ステークス Molly Pitcher S (GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)は8頭立て。目下G戦ばかり7連敗中も、去年のトップ・フライト・ハンデ(GⅠ)を制しているカランバ Carrumba が7対5の1番人気。
レースは5番人気(9対1)のマネーズオンシャルロット Money’soncharlotte の逃げで始まり、カランバは3番手追走。しかし逃げ馬は直線に入っても逃げ足衰えず、出遅れたスタートから最後方を進んでいた3番人気(4対1)エスケンフォーマネー Eskenformoney の猛追を1馬身4分の1差振り切っての逃げ切り勝ちでした。カランバは2馬身半差で3着に終わっています。
ケリー・ブリーン厩舎、パコロロペス騎乗のマネーズオンシャルロットは今期、アローワンス戦からスタートしてモンマスのリステッド戦(レディーズ・シークレット・ステークス)と無傷の3連勝となる5歳馬。3歳時にはケンタッキー・オークスにも出走(13着)したほどの期待馬で、ここに来て充実著しい1頭と言えるでしょう。

次のマッチメーカー・ステークス Matchmaker S (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)は、1頭が取り消しての6頭立て。GⅠ戦3勝の実力馬で、今期はロイヤル・アスコットに遠征してクイーン・アン・ステークスこそ13着惨敗に終わったものの帰国第一戦となるミス・テンプル・シティー Miss Temple City が4対5の1番人気。
大外枠発走で4番人気(14対1)のジュディーズ・チャンス Judy’s Chance が逃げ、ミス・テンプル・シティーは2番手でマーク。直線、外を回って伸びたミス・テンプル・シティーでしたが、前半は4番手の内ラチ沿いと経済コースを進んだ2番人気(2対1)のウィーキーラ Wekeela が直線もインコースぎりぎりを衝いて伸び、5番手から追い込む3番人気(2対1)のウォー・フラッグ War Flag に4分の3馬身差を付けて優勝。ミス・テンプル・シティーは最後で2着馬に1馬身交わされての3着に終わりました。
モンマス・ステークスに続いてG戦ダブルとなったチャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のウィーキーラは、3歳まではフランスでジャン=クロード・ルジェ師が管理していた5歳馬で、3歳時はサン=タラリ賞(GⅠ)で2着したほかクロエ賞(GⅢ)に勝っていました。去年はアメリカでGⅠ戦ばかり3戦し、ジェニー・ワイラーとゲイムリーで2着、ダイアナ・ステークスは10着最下位。今期はベルモントの芝アローワンス戦に勝って始動し、これで2連勝、アメリカでのG戦初勝利となります。

モンマスの最後、メインのハスケル・インヴィテーショナル Haskell Invitational (GⅠ、3歳、9ハロン)は勝馬にBCクラシックへの優先出走権が与えられる一戦で、7頭立て。近年三冠レースの活躍馬が制して重要度を増しているハスケルですが、今年の3歳牡馬は団栗の背比べ状態。その中から三冠は無縁ながらピーター・パンとペガサスとGⅢ戦を連勝して4戦無敗のタイムライン Timeline が9対5の1番人気。
レースはスタートから激しい先頭争いとなり、4番人気(7対1)のバトル・オブ・ミッドウェイ Battle of Midway と、本命タイムラインが競る様なハナ争い。これで消耗した2頭は脱落し、5番手の内で我慢していた4番人気(7対1)のマクラッケン McCracken が一気に先頭に立って直線。このまま粘り切るかに見えましたが、前半最後方で待機していた6番人気(9対1)のガーヴィン Girvin と、4番手を進んでいた3番人気(4対1)のプラクティカル・ジョーク Practical Joke が連れて追い込み、ゴールではガーヴィンが外からマクラッケンをハナ差で差し切っての優勝。プラクティカル・ジョークが半馬身差で3着と言う波乱になりました。タイムラインは5着に終わり、正に3歳牡馬戦線は勝馬が日替わりで入れ替わります。
ジョー・シャープ厩舎、ロビー・アルバラード騎乗のガーヴィンは、リズン・スター・ステークス(GⅡ)、ルイジアナ・ダービー(GⅡ)と連勝して臨んだダービーで13着大敗。立て直した前走オハイオ・ダービー(GⅢ)では2着だったものの、ここでの巻き返しとなりました。7戦4勝2着2回、着外はダービーだけと言う成績ですから、後半戦次第ではチャンピオン3歳牡馬の地位も狙える存在ではありましょう。

日曜日の最後は、デル・マー競馬場のクレメント・L・ヒルシュ・ステークス Clement L. Hirsch H (GⅠ、3歳上牝、8.5ハロン)。これもBC優先出走権の対象レースで、fast の馬場に1頭が取り消して5頭立て。ここは去年の覇者、古馬牝馬の頂点に立つ1頭のステラー・ウインド Stellar Wind が1対2の1番人気。
予想通り2番人気(2対1)で先行したら滅法強いヴェイル・ドーリ Vale Dori がハナに立つと、これを単騎で逃がしては手強いと見てステラー・ウインドは外からピタリと2番手でマーク。大本命が早目、第4コーナーで外から逃げ馬に並び掛けると、直線は人気2頭の叩き合い。終始僅かにリードを奪ったステラー・ウインドが、最後はヴェール・ドーリを首差捻じ伏せるようにして人気に応えました。4番手から伸びた3番人気(6対1)のフェイスフリー Faithfully が1馬身半差の3着。
ジョン・サドラー厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のステラー・ウインドについては改めて書くまでもないでしょう。これがGⅠ戦6勝目、クレメント・L・ヒルシュ・ステークスは2連覇で、出走権を得た(敢えて必要ではありませんが)BCディスタッフ、これまで2度挑戦して2着・4着に終わっている念願のBC制覇が最終目的になるでしょう。ここまで15戦して10勝、負けたのはデビュー戦の3着、ケンタッキー・オークスの4着、BCの2回、去年のシーズン初戦ヴァニティー・マイル(GⅠ)で宿敵ビホールダー Beholder に敗れた5回だけ。

 

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください