モンテヴェルディ生誕450年
7月最後のプロムスは、タイトルにもあるように、今年が生誕450年に当たるモンテヴェルディの最高傑作が取り上げられました。恐らく今年のプロムス最大のイヴェントでしょう。
7月31日 ≪Prom 22≫
モンテヴェルディ/聖母のための夕べの祈り
アンサンブル・ピグマリオン Ensemble Pygmalion
指揮/ラファエル・ピション Raphaël Pichon
ソプラノ/ジュゼッピーナ・ブリデリ Giuseppina Bridelli
メゾ・ソプラノ/エヴァ・ザイチク Eva Zaïcik
テノール/エミリアーノ・ゴンサセレス=トロ Emiliano Gonzalez‐Toro
テノール/マニュス・ステーヴランド Magnus Staveland
バス/ヴァージル・アンセリー Virgile Ancely
バス/ルノー・ブレ Renaud Bres
バス/ジェフロワ・ビュフィエール Geoffroy Buffière
モンテヴェルディは一般にはオペラ創設者の一人として知られていますが、どれか一つだけ選べ、と言われれば通称ヴェスプロと呼ばれるこの作品でしょう。クラシック音楽ファンなら一度はナマで体験したいもの。
幸いなことに私は未だ音楽会通いを始めたばかりの頃、N響定期でマタチッチがこの大作を指揮するのに接したことがあります。もちろん私の稀有な音楽体験の一つで、その時の感動は忘れられるものではありません。
しかし残念ながらナマ演奏を聴いたのはこの時だけで、その後は専ら録音による鑑賞。放送ながら、今回のプロムスで久し振りに大傑作を堪能した次第です。
N響定期で聴くに当たってユニヴァーサル社から出ていたスコアをゲットしたのですが、これは古いワルター・ゲールが編纂したエディションで、私には歴史的価値、資料的な優劣は判りません。しかし譜面は手元にこれしかないので、埃塗れになっていた大型スコアを引っ張り出してきての鑑賞です。
ザッと通して聴いた限りでは、もちろんオーケストレーションには若干の創意があるものの、全体の骨子はゲール版でも十分耐えられると聴きましたがどうでしょうか。
今回の演奏は全員がプロムス・デビューだそうで、アンサンブル・ピグマリオンはフランスの団体。指揮するピションという方は32歳だそうで、全体に若い音楽家の感性が見事にモンテヴェルディを蘇らせた名演だったと思います。
チケットは完売だったそうで、ロンドンのクラシック音楽ファンの関心の高さが感じられますね。
全曲は大変に長いものですが、休憩無しに通して演奏されました。12曲(楽章)の後にマニフィカトという長大な楽曲で締め括られるもので、マニフィカトだけを単独で取り上げるコンサートもあったやに記憶しています。
オーディオ的にも、もちろん音楽的にも面白いのが第9曲「Audi coelum」で、舞台上のテノールと、遠方で木魂の効果を出すテノールの掛け合いが聴き取れます。今回の演奏は木魂が左右に分かれているようで、もしかすると3人のソロが歌っていたのかもしれません。
ここはN響が上野の文化会館で演奏した時にも客席を使い、当方は何分にも初めてのことで、視覚的にも仰天したことを覚えています。
第11曲「Sonata sopra Sancta Maria ora pro nobis」では、ゲール版には無い前奏というか先立つ音楽があって、現在はこれが一般的に演奏されるスタイルだろうと想像します。
また、マニフィカトの後で最後に第1曲の後半がもう一度繰り返されるのも初体験で、モンテヴェルディに関しては自分の知識を更新しなければ、とも思いましたね。
とにかくモンテヴェルディの楽曲はルネサンスとかバロックの枠を超え、歌詞ファーストの姿勢が、大胆且つ華麗で衝撃的な作品に繋がっているのでしょう。ベートーヴェンもストラヴィンスキーも吃驚の世界をお楽しみください。
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