オブライエン対決の意外な結末

8月20日の日曜日、アイルランドのカラー競馬場ではG戦が4鞍も組まれていました。その内3鞍は2歳戦で、そろそろ来年のクラシックに向けて有力候補たちが出揃ってきた印象です。

この日の馬場は yielding to soft と重く、スピード馬にとっては苦しいコース。最初のフューチュリティー・ステークス Futurity S (GⅡ、2歳、7ハロン)には6頭が登録していましたが、本命になる筈だったボルジャー厩舎のテオバルド Theobald が重馬場を理由に取り消してしまい、仕方なくという感じでオブライエン厩舎のロストロポーヴィチ Rostropovich が11対8の1番人気。
最低人気(11対1)スイス・コテージ Swiss Cottage の逃げを3番手で追走したロストロポーヴィチが先頭に立つと、同じオブライエン厩舎の4番人気(7対1)コート・オブ・アームズ Coat Of Arms が内から並び掛け、2頭の争い。最後はライアン・ムーアの一押しに応えたロストロポーヴィチが、短頭差コート・オブ・アームズを抑えて人気に応えました。最後方から伸びた3番人気(4対1)のバークレー・スクエア Berkeley Square が1馬身4分の3差の3着に入って、オブライエン厩舎のワン・ツー・スリー。

オブライエン師は、このレース11勝目。勝ったロストロポーヴィチは、7月のナース7ハロンでデビューして7着。2戦目のゴウラン7ハロンで初勝利を挙げ、前走ナースの7ハロン一般戦で1番人気になりながら、3頭立て3着と期待を裏切っていました。この時に勝ったキャメルバック Camelback という馬がこの日の2番人気(5対2)でしたが、ここでは4着に終わっています。
フランケル Frankel 産駒ロストロポーヴィチの2000ギニーへのオッズは、レース前の33対1から変わらず。ブックメーカーは今回の勝利を余り評価していないようです。次走に予定しているナショナル・ステークス(GⅠ)が試金石になるでしょう。

次は一昨年からGⅢに格上げされたカラー・ステークス Curragh S (GⅢ、2歳、5ハロン)。クラシックと言うより2歳スプリンターが参集するレースで、今年は馬場を嫌って2頭が取り消しての6頭立て。不思議なことに、出走馬中只1頭未勝利のグッドシングズテイクタイム Goodthingstaketime が9対4の1番人気。これが3戦目で、前走2着の内容が買われたのでしょうか。
2番人気(3対1)のトレジャリング Treasuring が逃げ、最後方で待機した本命馬が追い込みましたが、ゴールでは半馬身届かずトレジャリングの逃げ切り勝ち。2番手に付けた4番人気(9対2)のシリッチ Sirici が同じく半馬身差で3着に入りました。

ゲール・ライオンス厩舎、コーリン・キーン騎乗のトレジャリングは、カタール・レーシングが所有する牝馬で、これで6戦3勝。2戦目にネイヴァンの未勝利戦で初勝利。3走後の前走9日、前にティッペラリーのハンデ戦で勝ったのに続く連勝で、ここまで全てが5ハロン戦。この間にロイヤル・アスコットのクイーン・メアリー・ステークス(GⅡ)にも挑戦しましたが、8着でした。

この日最も見ものだったのが、2歳牝馬のデビュタント・ステークス Debutante S (GⅡ、2歳牝、7ハロン)でしょう。8頭が出走しましたが、その内3頭はオブライエン厩舎。中でもロイヤル・アスコットでチェシャム・ステークス(リステッド戦)に勝って2戦2勝のセプテンバー September は、ディープインパクト産駒ということもあって日本でも話題になっていました。
今回もセプテンバーが11対10の1番人気に支持されたのですが、主戦のライアン・ムーアは前走シルヴァー・フラッシュ・ステークス(GⅢ)に勝ったハッピリー Happily を選び(6対4の2番人気)、セプテンバーにはシーミー・ヘファーナンが騎乗することになったのです。このムーアの選択がどう出るか、何を意味するかにも注目が集まります。

先手を取って逃げたのは、チーム・オブライエンでは第3の馬たる3番人気(11対1)のマジカル Magical 、ハッピリーは2番手を、セプテンバーが3番手を追走します。ところがマジカルは単なるペースメーカーの存在ではなく、ムーアのハッピリーが懸命に追うも最後まで1馬身4分の1差を付けての逃げ切り勝ち。後方から追い込んだ4番人気(12対1)のメアリー・チューダー Mary Tudor が更に1馬身4分の1差の3着に入り、セプテンバーは4着敗退で初黒星となりました。ムーアの選択眼が勝っていたということか、それでもオブライエンのワン・ツー・フィニッシュです。
勝ったマジカルにはオブライエン兄弟の末っ子ドナック・オブライエンが騎乗。オブライエン師は、このレース12勝目となります。カラーのデビュー戦が2着、前走コークの1マイルで未勝利を脱したばかりで、3戦2勝。血統的には去年のこのレースを制したロードデンドロン Rhododendron の全妹に当たり、明らかに距離伸びて有利な同馬、オークスのオッズがレース前の20対1から8対1に上がりました。敗れたハッピリーとセプテンバーについては、重馬場が敗因と言う見方が有力なようです。

カラーの最後はロイヤル・ホイップ・ステークス Royal Whip S (GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン)。5頭立ての中にオブライエン厩舎の馬は無く、前走ヨークのGⅡ戦(ヨーク・ステークス)で4着したセントラル・スクエア Central Square が6対4の1番人気。
同じオーナー、別厩舎のペースメーカーで最低人気(33対1)のマシーフ・セントラル Massif Central が逃げ、セントラル・スクエアは3番手を進みましたが、勝ったのは2番手でマークしていた2番人気(11対4)のシャムリーン Shamreen 。粘る逃げ馬に3馬身4分の1差を付ける快勝で、セントラル・スクエアはペースメーカーをも1馬身4分の1差捉えることが出来ずに3着に終わりました。

勝ったシャムリーンは去年のブランドフォード・ステークス(GⅡ)を制しており、デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレンが騎乗したアガ・カーンの所有の4歳馬。今期は前走インターナショナル・ステークス(GⅢ)6着から始動し、これが2戦目でした。

 

 

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